583話 竜牙
「おい、兄ちゃん。王都には王都のやり方がある。あんまり舐めた真似していると、ただじゃおかないぜ」
「そういうこった。ほれ、さっさと財布を出しな。そしたら見逃してやってもいいぜ」
「そうだぜ。俺たちは心が広いからな! ぎゃはははは!!」
「…………」
本当にこいつらはカスだな。
チンピラと見せかけて実は良い奴、というパターンでもなさそうである。
「……一応確認しておこう。お前ら、本当に冒険者か?」
「当たり前だ!」
「俺たちはCランク冒険者パーティ『竜牙』だ!」
Cランク。
つまり、そこそこの強さはあるということか。
だが、残念ながら、俺の敵ではない。
「なるほど。『竜』という割に、大したことはないな。せいぜいDランク下位といったところか。これからは『ゴブリンの牙』とでも名乗ったらどうだ?」
「な、なんだとぉ!?」
「ふざけた野郎め!」
「ぶっ殺せぇっ!!」
激昂する三人の男。
彼らは一斉に襲いかかってきた。
「ふん……」
俺は軽く手を振って、男たちを吹き飛ばす。
まるでゴミのように飛んでいった。
壁に激突して気絶してしまう。
「ぐえ……」
「うげ……」
「……」
一人、意識のある男がいたが、恐怖のあまりに動けなくなっているようだ。
「おい。まだやる気か?」
「あ、あわわ……」
男は震える手で剣を構える。
しかし、その切先は揺れていた。
「く、くそぉおおおっ!! もう許さんぞぉ!!」
ヤケクソになったのか、男が突進してくる。
「はぁ……。お前らじゃ相手にならないって」
俺は男の顎を掌底打ちした。
「ぶべらっ!?」
脳震盪を起こしたらしく、ふらりと倒れる。
「……」
「……」
「……終わったぞ」
「「「「「…………」」」」」
ギルド内が静寂に包まれる。
受付嬢はポカンとしていた。
他の冒険者たちも同様だ。
「うん。コウタはやっぱり強いね」
「さすがはコウタくんなのです」
「凄いぜ!」
「……かっこいい……」
「それでこそ、わたくしが見込んだ殿方ですわ」
……シルヴィたちは盛り上がっているが、俺としては微妙な気分だった。
寄ってくるハエを叩き落としただけだ。
達成感も優越感もない。
こんなことなら、もっと手加減すれば良かったかな?
「まぁいいか。受付嬢、手続きを進めてくれ」
「……あっ! は、はいっ! 少々お待ちくださいませ!」
受付嬢が慌てて動き出す。
冒険者ギルドの受付嬢が、この有様で大丈夫なのだろうか?
エルカの町で受付嬢を務めていたセリアの方が、よほど優秀だったように思えるが……。
俺はちょっと心配になってしまうのだった。




