その頃のゴブリンパラディン
ゴブリンナイトたちはゴブリンパラディンに詰め寄っていた。
「俺のウマはどこに行ったんですか!?」
「馬の管理なら、部下のホブゴブリンに……」
「その番人がぶっ潰されてるでしょう!」
「さては団長……俺たちが戦っている間にウマをくすねたんじゃ!?」
「そんなことは断じてない!」
「じゃあ、どうして団長のウマは残っているのですか!?」
「狼族は裏切るし、戦争には勝てないし……本っっ当にあんたといてもいいことがない!」
ゴブリンナイトの1人は、パラディンから離れると言った。
「俺は好きにやらせてもらう!」
その言葉を聞いた別のゴブリンナイトたちもまた、パラディンの前から去った。
「お、お前たち……これからどうするつもりだ!?」
「俺は故郷に帰る! これ以上付き合ってられるか!!」
「俺様も人間の村でも襲ってくる」
「これ以上、アンタに付き合っていたら部下が離れちまうからな!」
数人のゴブリンナイトたちが立ち去ると、子供ゴブリンは心配そうに父親を見た。
「ち、ちちうえー」
「なんだ?」
「これから……どうしよう?」
「それを今、お父さんも考えているところだ」
誰もいなくなったゴブリン本陣にウマの足音が聞こえてきた。
「ご主人様」
「なんだ、アビスランナー?」
「もし、頼るところが無いのなら……先ほどのユニコーン殿の元に参られては如何でしょう?」
ゴブリンの子供は信じられないと言いたそうに立ち上がった。
「まて、こうなったのも……あのへんなウマのせいじゃないか!」
するとアビスランナーは不敵に笑った。
「ご主人様。このような話は御存じですか?」
「なんだ?」
「ある武将が、王の命令に従い敵対国に攻めたことがありました」
ゴブリンパラディンは頷いた。
「その武将は敵対国に多大な被害を出したため、敵対国はその武将に賞金をかけました」
「ふむ……」
「ところが、その武将の武勇を妬む者たちは、巧みに王に取り入って無実の罪を着せ、有能な武将を失脚させたのです」
「どこの国でもある話だな。して、その武将とやらはどうしたのだ?」
「敵対国に出頭して、自分から首を差し出したのです」
「ほう……」
「そうしたら敵対国は、自分から首を持ってきたのだからと、その武将にかけた賞金をそのまま与えたといいます」
そこまで言うと、馬アビスランナーは微笑を浮かべた。
「ご主人様もまた、難攻不落と言われる狼族の村に多大な被害を与えました。その首を自らユニコーン殿に差し出せば、悪いようにはしないかと」
「……なるほど。確かに、それしか手はなさそうだな」
彼は立ち上がると言った。
「アビスランナーにジュニアよ。供をせよ」
「う、うん!」
「ははっ」
アビスランナーは小声でつぶやいた。
「どのような結果になるかは、天のみぞ知る……か」
「何か言ったか?」
「いえ、霧が晴れてきたなと思いまして」
ゴブリンパラディンは不敵に笑った。
「そうか……」




