ゴブリンパラディンの次の一手
これは、少しだけ時間を巻き戻し、小生たちがまだ西側の堀を作っているときのことだ。
ツーノッパコマドリのロビンは、木陰から敵陣の様子を窺っていた。
そこにはゴブリンパラディンが切り株の上でふんぞり返り、子供と思われるゴブリンと話をしている。
「ねえ、ちちうえー どうしてあんなモリなんかをせめるの?」
「あそこをたんけんに行かせた家来が、何人も帰ってこないからだ」
「な、なるほど……どうしてかえってこないんだろう?」
「それがわからないから困ってる」
伝令役のゴブリンナイトが駆け寄っていた。
「も、もうしあげまス! 例の森に向かった狼族ですが……戦わずに逃げ帰りました!」
「な、なんだと!?」
ゴブリンパラディンは、切り株から立ち上がった。
「一体、どういうことだ!」
「何でも、ウマが自分たちの目の前で雹を降らせたとか、わけのわからないことを言っています!」
「はぁァ!? 約束が違うぞ!!」
ゴブリンパラディンは、目を真っ赤に光らせると持っていたウチワを投げ捨てた。
「奴ら、俺たちを小鬼だと思ってバカにしているのか!?」
「いかがいたしましょう?」
「決まってるだろう。すぐに狼族の巣を攻めるぞ! ひとり残らずぶっつぶせ!!」
「は、はは~~~~~!」
ゴブリンの子供は首を傾げた。
「ちちうえー、どうしてウマがヒョーをふらせると、オオカミのひとたちがにげるの?」
「我々のために戦うのが面倒くさいから、てきとうな言い訳をしてごまかしているだけだ」
ゴブリンパラディンは、近くに生えていた木をへし折った。
「我々を甘く見るとどうなるか、たっぷりと思い知らせてやる!」
そして数日後。
ヒト族の村では、堀を巡らせる作業も着々と進んでいた。
「これで、村の西側の備えも強固なものになったな」
リチャードが外の様子を眺めながら言うと、村長や村人たちも頷いた。
「東側は如何なさいますか?」
村長のトマムが聞くと、小生は頷いた。
「一応、作っておいた方がいいだろうね。狼族やゴブリンのことだから、崖をよじ登って侵入してこないとも限らない」
「かしこまりました」
村人たちが動こうとしたとき、ロビンが飛んできた。
「ビックニュース、ビックニュースだ!」
「どうしたの?」
ロビンは木に止まると勢いよく言った。
「ゴブリンパラディンが軍勢を率いて、狼族の里に攻撃を仕掛けたぜ!」
村人たちは驚きの声をあげた。
「奴ら、同盟関係だったはずじゃ……」
小生は、やはりかと思いながら言った。
「彼らは小生が雹を降らせたと思って戦わずに逃げたからね。ゴブリンパラディンは、約束を違えられたと思って敵対した……いや、ここでガツンと狼族を倒さないとゴブリンパラディンの求心力が失われるんだろう」
「どっちが勝つのかな~?」
グラディウスが西側の空を見ながら言うと、小生は目を細めた。
「ロビン」
「なんだ?」
「確か、狼族の村の人口は4~500人くらいという話だったね」
「あ、ああ……おまけに住んでる場所は森だから、ゴブリンパラディンも簡単には落とせないぜ」
「漁夫の利を得るチャンス……かな」
小生が笑うと、リチャードやロビンも不敵に笑みを浮かべながら頷いた。




