雨乞いならぬ雹乞いの種明かし
教会の屋根から降りて軒下へと移動すると、騎士リチャード、従者たち、シスターのソフィアは跪いた。
「まさか雨ではなく雹を降らせるとは……このリチャード、恐れ入りました」
「ああ、あまり真に受けないでね。あれはたまたま雹が降ってくることがわかったから、雨乞いのまねごとをしただけなんだ」
リチャード一行は目を丸々と開いてお互いを見た。
「そ、そうなのですか?」
「うん、角を光らせて教会の屋根の上に立っていれば、雨乞いしているように見えるでしょ」
「た、確かに……神に何かを訴えているように見えまする」
「堀が不完全な状態だから、ハッタリでもなんでも使って敵の一手を遅らせようと思ってね」
「な、なるほど……」
本当に天候を変えるとしたら、ツーノッパ地方の温度や気流を変える必要がある。
そんな膨大なエネルギーを1頭のユニコーンが出すなんて、到底不可能だろう。
「今日は、小生が見張りに付くから、みんなは今のうちに十分な食事をとって早めに休んで」
「は、ははっ!」
敵の後続部隊の襲撃があるかもしれないから警戒したけど、敵は小生の雨乞いに驚いて、本当に逃げ帰ったようだ。
そして、翌朝……リチャードたちや村人は、小生の前に集まると一斉に跪いた。
「ユニコーン様、どうぞご命令を!」
「じゃあ、この村を守る堀を作って欲しいな」
「かしこまりました。この工事の責任者はグラディウス殿が適任かと……」
小生は頷いた。
「そうしよう。グラディウス……」
「うん、すぐに作業をはじめよー!」
リチャードは「ははっ!」と歯切れよく返事をすると、村人たちを見た。
「さあ、早く作業を始めるぞ!」
責任者に命じたグラディウスだけど、彼女は掘る専用の係になっていた。
その代わりに実質的な村人たち統率を行っていたのは、騎士のリチャードだ。
村人たちを出身地の村長に指揮させ、作業の進み具合を見ながら、子飼いの部下を応援に向かわせたりしている。
そして小生は、原っぱで昼寝。
だって昨晩は見張りで全然眠れなかったんだもん。こういう所で休んでおかないと体がもたないよ。
「あー、ユニコーンさまねてる~」
「じぶんだけずるいぞ~」
そして、ちびっ子たちが近寄ってきて、小生の体にイタズラをはじめた。
こうなったら、君たちを枕にしてやる~~
この日、作業は急ピッチで進み、村から見て北西部の堀が完成した。
翌日は村の西部を掘り進め、2日半かけて十分な長さまで掘り進め、作業開始から6日目の夕方には西南部の堀が完成した。
作業開始から7日目の朝には、幸運なことに雨が降り注ぎ、堀にはたっぷりと水が溜まった。
「これで、村の西側の備えも強固なものになったな」
リチャードが外の様子を眺めながら言うと、村長や村人たちも頷いた。
「東側は如何なさいますか?」
村長のトマムが聞くと、小生は頷いた。
「一応、作っておいた方がいいだろうね。狼族やゴブリンのことだから、崖をよじ登って侵入してこないとも限らない」
「かしこまりました」




