敵が攻めてきたので雨乞い
2日後の夕方、ツーノッパコマドリのロビンが慌てた様子で飛んできた。
「ユニコーン様、大変だぜ」
「どうしたの?」
「奴らが……狼族の連中が武装して乗り込んで来やがった!」
小生は寄りにもよって狼族か……と思った。
まだ堀も完成していないし、狼族は機動力があるから大挙して押し寄せられると村に大きな被害が出る。
「……例によって西側からの侵入かい?」
「ああ、連中は奇襲攻撃をするからと息を潜めながら進んでたぞ!」
小生は目を細めると、風を体で感じ取った。
離れた位置に大きな雨雲があり、次に風の様子を注意深く観察する。
ふむ……この手で上手くいかなかったら仕方ない。
「これで……引き下がってくれると助かるんだけどね」
そう言いながら青い角を光らせると、ロビンは心配そうに言った。
「この空気が乾燥しているときに、霧が出るのか?」
「いいや違うよ。小生が行うのは雨乞いさ」
「あ、雨乞……い!?」
「そう。雨乞い」
ロビンは空を見上げた。
「でも雲……ほとんどないぜ?」
「まあ見てて」
小生はそう言うと翼を具現化して空を飛び、建ったばかりの教会の屋根上へと着地した。
そして、可能な限りの大声で嘶く。
「な、なんだ!?」
村人たちは作業を止めて、小生へと視線を向けた。
「カッツ様じゃねえか」
「長い角だな~」
「おいおい、何を始めようってんだ!?」
「雨乞いだってよ」
コマドリのロビンが言うと、村人たちは「雨乞い?」と聞き返した。
「そう、雨乞いの儀式で敵を退かせるとかなんとか……」
「て、敵が攻めてきているのか?」
「ああ、森の西側からな」
村人たちが動揺したまま小生を眺める間も、日はどんどん沈んで東側の空には星がきらめきはじめた。
《カッツ、カッツバルゲルー!》
《どうしたのグラディウス?》
《ハチたちが、狼族がいたって知らせてきたよ。だいぶ近づいてきているんじゃない?》
《そうだろうね。小生にも前衛部隊が見えるよ》
《……戦うように指示を出さなくていいの?》
《もうちょっとだけ待って。あと少しだから》
地上から小生を見守っていた騎士リチャードの側に、従者の1人が駆け寄った。
「……わかった。すぐに防衛戦の準備をする」
彼は敬礼すると長弓を手に取り、村の西側を睨んだ。狼獣人たちは弓の射程内まで近づいているらしい。
従者たちも長槍やショートボウを手に取ろうとしたとき、何かの塊が地面に落ちた。
「……な、なんだ?」
別の場所に、同じような塊が落ちた。
「な、なあ……これって……」
「……」
「ひょ、雹だ!」
どうやら、驚いているのは味方だけではないようだ。
侵入して村を攻撃しようとしていた狼族の戦士たちも、愕然とした様子で小生の姿や、降り注ぐ雹を見ていた。
小生はそんな彼らを見下ろす。
「…なんで、この天気なのに雹が降ってくるんだ?」
「それは……あの角馬が魔法でも使ったんじゃね」
「つーか、ユニコーンってこんなことできるの!?」
その直後に無数の雹が大雨のように降り注ぎはじめた。
「ひ、ひい……何だこりゃ!?」
「やべえよ、やべえよこれ!」
「あんなのに歯向かうと、何されるかわかんねーぞ!」
最初に数人が逃走すると、後続部隊の狼族もつられるように逃げ出し、狼部隊は瞬く間に崩壊していく。
隊長と思われる狼獣人も叫んだ。
「……退くぞ!」
「は、はい!」
狼部隊は残らず村の前から姿を消した。




