堀づくり
この村には、更に近隣の村人たちが逃げ込み、その数は350人ほどになっていた。
普通なら、食料をどうするのかという問題が起こるものだが、この村には大地魔法の使い手グラディウスがいる。
「いつもありがとうございます。ニンフ様!」
「役に立てて、僕も嬉しいよ」
実は村人のほとんどが、小生やグラディウスが一角獣だということを知っているけれど、あくまで小生たちは角を見せびらかせたりはしない方針を貫いている。
だからグラディウスはニンフの姿で彼らと話すし、小生もウマの姿のままというワケだ。
それにしても……レベルアップボーナスが相変わらず美味しい。
小生の前を、他の地域からやってきた若者たち5人がランニングしていくと、その中の1人のレベルが上がった。
最初のうちに指南をしていたアレンたち4人は、ランニングや筋トレくらいじゃ、もうレベルアップしなくなったからね。
ふとグラディウスを見ると、彼女の目の前でハチが静止しており、まるで喋るように口を動かしていた。
「なるほどね……」
彼女は頷くと、小生を見た。
「ねえ、カッツ」
「何だい?」
「向こうの川幅が狭くなっているから、ゴブリンたちが侵入して来るんじゃないかってハチたちが心配しているんだ」
その言葉を聞いて、小生はなるほどと思った。
今、ゴブリンたちが侵入してきているのは、村から見て南側にある森の入り口からだけだ。
なぜ、他の場所から侵入してこないのかといえば、東側は切り立った崖になっていてよじ登るのが難しく、西側には大きな川が流れており沼や湿地も多い。
しかし、川幅が狭くなるということは、ゴブリンたちが侵入してくる危険性はある。
「確かにそうだね。何か対策を練っておいた方がいいかな?」
守りを固めるのなら、アザミやイヌバラの柵の外側に空堀でもいいから巡らせることだろう。今なら村人の人数も多いから協力を呼びかければ何とかなりそうな気がする。
「村人たちに協力してもらって、空堀を作ろう」
「ううん、村人たちは農作業や訓練とか、家を建てることで忙しいでしょう?」
彼女はそう言うと村の外へ向かった。
ついていくとユニコーンの姿へと戻り、緑色の角を地面へと近づけていく。
「大地魔法の練習だと思えばいいよね」
「う、うん……まあ、そうだね」
彼女が大地魔法を使うと脚元の土が持ち上がり、十数メートル離れた場所へと落下した。
「凄いな……これだけの土を投げつけられるなんて、なかなかの魔法力だよ!」
「この調子ですね」
グラディウスが5回くらい繰り返すと脚元の穴は大きくなり、牛や馬でさえもすっぽりと体を隠せるほどの穴ができた。
「あとは、この穴を広げていくだけだねー」
どうやら22~3回くらい魔法を撃つとグラディウスは一休みしなければならなくなるようだ。
彼女の表情に疲れがはっきりと見て取れるようになった時には、父コンドコソトレルも作業の様子を眺めていた。
「たった1頭でここまで堀を広げるとは大したものだ」
「思った以上に……大変なものですね」
レベルアップボーナスポイントにありつけたおかげだろうか。父さんは上機嫌に言った。
「どれ、では私もひとつ……」
彼が脚を地面に付けると数メートル先まで土が飛び出し、グラディウスの3倍以上の土が20メートル以上先まで投げ出された。
ちょっと待って欲しい。確か、父さんの専門分野って小生と同じ水のはずだったような……。
一体レベル幾つになったら、第2系統の能力をこんな威力にできるのだろう?




