アシュリーはずっと王子様を待っていた
「アシュリーいつもごめんね。私の代わりに働かせちゃって」
「気にしないでよ! 私、服を仕立てるの好きだし」
とても裕福とは言えない質素な民家で私、アシュリーは服の仕立て作業を行う。
私達の家業は服屋さんで一人で服を仕立てて更に販売まで行っている。
昔はよくお母さんと一緒に服を仕立てて売りに行っていたけどお母さんが病気になってからは私が一人で全ての仕事を行っていた。
でもそれが決して辛いと思ったことはない。私自身服を作るのは好きだし、自分の服を可愛いと言ってくれるお客さんや服を着て喜んでいる人たちを見ると服を作って良かったなって嬉しくなる。
だから決して自分は不幸ではないとそう思っている。
思ってはいるが少しだけ不安になることがある。
それは病気のお母さんのこと。数年前から病気がちになり、今では仕事が出来ない状態になっている。
病院に見て貰えれば何とかなるとは思うけど残念ながらそんなお金は私達では払えない。
こうして私達二人で生活するのだって精一杯な有り様だった。
だからこそなのか、ふと願ってしまうのだ。それはお伽噺の物語、ただの夢の物語。
そう分かっていてもこう願ってしまう。この状況を救ってくれる白馬の王子様が現れないかと。
私は昔からそういった存在に憧れていた。昔、お母さんが読み聞かせをしてくれた絵本には必ず辛い時に助けてくれる王子様がいてその王子様によって主人公は結ばれて幸せに過ごすのだ。
勿論そんな存在はいないとは分かっている。でも分かっているのと願ってしまうのは別のことなわけで。
頭では私を救ってくれる存在など母を助けてくれる存在などいないと分かっていても。
やっぱり心の中ではそんな存在を求めてしまうのだ。
「それじゃこの服、売りに行ってくるね!」
私は沢山の衣装を籠に詰めてお母さんに声をかける。
それに対してお母さんは優しく頷いた。
「気を付けるのよ」
「分かってるって!」
私は沢山の服を持って服屋さんへと向かった。
ーーー
仕立て屋で仕立てた服は服屋さんに買い取って貰う。
そしてある程度の金額のお金を貰う。それは額にすれば多い金額だけど服なんて毎日出来るものではない。
それにその多い金額も服の材料費と生活費を引けば残るのは僅かだった。
「いつもありがとうございます!」
「いやいや、こちらこそいつも助かってるよ」
服屋のお爺さんに頭を下げて私は服屋さんを去ろうとする。
その時だった一人の男性客がつまらなさそうに服を見ていた。
私と同じ金色の髪、整った顔立ち、吸い込まれるような水色の瞳。
服装は青色の華美な服を身に纏っており、その立ち居振舞いや格好なのですぐに貴族の人だと分かる。
だからなのだろうか。本の少しだけ期待してしまった。
この人が私を見つけてくれることを愛してくれることを。
「どれも地味な服ばかりだ。俺に似合う鮮やかな服はないな」
その男の人は服を見回すと溜め息を吐いて店を出ようとする。
その時ーーその貴族の人と目があった。綺麗な目だと思った。
その綺麗な目で私を見てくれたことに少しだけ嬉しい。
青色の目は私を映したまま大きく見開くとそっと彼は呟いた。
「綺麗だ……」
「えっ……?」
「そこの姫よ。良ければ俺と付き合ってくれ。俺はアルティス・アルトワ。この地で暮らす民なら俺の名前は知っているな?」
アルティス・アルトワはこの町の領主様。その領主様がお辞儀をし、私なんかを姫と呼び付き合ってほしいと言ってくる。
それはずっと夢にまでみた憧れの光景で彼をみた時私はーーずっと望んでいた王子様に出会えたのだと思った。




