新しい友達が出来ました
「ここが……貴族学院」
私は広い教室を見渡しながら小さな声でそう呟いた。
流石に貴族学院というだけあって学園にいる多くの生徒がどこかの令嬢あるいは令息なのだろう。
私も貴族ではあるけど一番身分の低い男爵令嬢というだけあってその生徒が纏っているきらびやかな雰囲気に圧倒される。
私は緊張しながら予め指定された席へと座る。まだ授業が始まるまでには時間があり、その間に私は鞄の中にある書物を確認する。
書物には芸術関連の授業の本が沢山入っていた。
勿論語学の教科書もあるがやはりそのほとんどが絵画や音楽といった芸術に特化した本ばかりとなっている。
これは何も私が間違えてそういった本を持ってきたというわけではない。
そもそも貴族学院というのは普通の学校とは違い勉学を学ぶ場ではなかったりする。
貴族学院で学ぶのは勉学ではなく教養。そして教養とはテーブルマナーであったり、ダンスであったり、歌や絵画といった芸術なのだ。
なので貴族の多くは勉学は本や家庭教師によって学び、学院では主に芸術を学んだりする。
ちなみに生徒の年齢も様々。この学院には決められた歳に学院に通わなければならないといった決まりはなく教養を身に付けたいと思った時に自分の判断で通うことが出来る。
またそんな感じなので生徒が入学するタイミングも様々で私も今までは学院に入ってはいなかったがこうして何の問題もなく入学できた。
「あんたも……新入生?」
「え、えっと……」
授業の準備をしていると突然隣から声を掛けられる。
慌てて声の方を見るとそこには水色髪の少女が座っていた。
貴族の令嬢らしい整った顔立ちに髪と同じく綺麗な水色な瞳。
顔の表情は少し無愛想でどことなく無機質な印象を抱かせる。
そんな女の子に声を掛けられて私は慌てながら顔をぶんぶんと縦に振った。
「今日から学院に通うことになったの」
「そうなんだ……」
互いに弾まない会話。ただその少女は何か私に話したいのかずっとこちらに視線を移したり、かと思えば視線を下に移動したりしていた。
何となく私も人と会話するのが得意な方ではないので分かる。
きっと彼女は私と話したくてでも何を話していいのか分からず結果としてこういった感じになっているのだ。
「私はシア・グランデ。貴方は?」
「私はシオン・アドミスリア。そのありがとう……気ぃ遣ってくれて」
シオン・アドミスリアという名前は私も聞いたことがある。
確かその冷たい髪色と無機質な表情から氷の令嬢と恐れられている伯爵令嬢だったはず。
確かに綺麗な顔立ちは他人を寄せ付けない雰囲気がある。
でもそれはあくまで雰囲気だけ、先程までの彼女の行動を見るに氷の令嬢と怯えられるような人には見えなかった。
「これからよろしくね。私まだこの学院に入ったばかりだから友達とかいなくって……シオンちゃんが友達になってくれると嬉しいかも」
「全然いいよ! てかむしろ私の方が友達になりたいっていうか……」
シオンちゃんはそういうと申し訳なさそうな表情でこちらを見る。
「実は私は一ヶ月前にここに入学してきたんだけどこの見た目のせいかみんなに怖がられちゃってさ……友達出来なかったんだよ」
「そうなの? 私はシオンちゃんの見た目綺麗でかっこいいって思ったけど」
「ほ、本当に!? 私そんなこと言われたの初めて! シアはいい人だね!」
「そんな……大袈裟な」
私の手を握り嬉しそうにぶんぶんと振り回すシオンちゃん。
シオンちゃんは私と友達になれて嬉しいと喜んでくれたけど嬉しいのは私だって同じだ。
やっぱり私としても友達をちゃんと作れるか不安だったわけでこうしてシオンちゃんが友達になってくれたこと自体が凄く嬉しかった。




