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【アレンジ版】夜の帳を護りし者達  作者: 苺姫 木苺


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3/4

常闇ノ庭へ



「僕が生まれる前の写真なのに、どうしてこんなに懐かしく感じるんだろう」

雪斗は本来の目的をハッと思い出し、写真を元の場所に戻す。

ウロウロと室内を散策するが八咫烏の隊員はいない。それどころか人がここで生活しているような形跡が無いように見える。

実はこのボロボロの屋敷は八咫烏の施設の玄関口なだけで、ここが八咫烏の施設というわけではないのだ。そのことを雪斗は知らない。

「どうしよう……獄堕の園(ごくだのその)を調べたいけど……時間が……仕方ない。今日はここまでにするしかない」

雪斗は近所の人に見つからないように駆け足で自宅に戻った。

カラスやハトが鳴いていて、昨日の夜と違い朝は賑やかで世界が起きていると感じれる。

夜は緩やかな風の音でさえ大きく聴こえる程の静寂さ。朝は人の声や鳥や猫の鳴き声で賑やかで明るい。

家に帰った雪斗はやっぱり両親は家に戻ってきてはいなくて落ち込んだ。

「晴斗になんて伝えたら……はあ、」

雪斗は朝ごはんを食べてから入院している弟の晴斗の所に面会をしに行こうとした。

冷蔵庫を開けた雪斗は「母さんの……」と呟く。冷蔵庫の中にはタッパーに煮物や野菜炒めといったものが入っている。

それを取り出し雪斗はご飯をかき込むように食べていく。

食べ終えた雪斗は眼帯を着け、つばの広い帽子を深く被り家を出た。



「母さんと父さんがいない今、晴斗の病院代どうすれば……はあ」

見慣れた病院を目にして雪斗は色々な問題に直面してこれからのことに悩む。

病院の自動ドアが開くとそこには点滴をしながら晴斗が椅子に座っていた。

病院の中は外とは違い少し薬の臭いがする。病院だから怪我や病気の人達が多い。その付き添いの人達も病人たちと同じ様に暗い顔をしていた。

「あ、兄さん!!あれ??今日母さんと一緒に来るはずじゃなかった?」

ただ、雪斗の弟晴斗だけは明るい笑顔で見舞いに来た雪斗に声を掛ける。

「あ、いや。母さん熱っぽくてさ寝てるんだ」

挙動のおかしい雪斗に晴斗は「ふーん……滅多に外に出ない兄さんが?一人で病院に来るのおかしい」と疑う。雪斗は少しみんなと違った見た目のせいでジロジロと見られるせいであまり外に出ない。そんな雪斗が一人で外出するのがおかしいと晴斗は思ったのだ。

「晴斗が知らないだけで僕だってちょいちょい出かけてるっつの」

雪斗は晴斗の額を人差し指で軽く押した。晴斗に両親のことを気づかせないように雪斗は「母さんと父さん仕事が忙しくて暫く見舞いに来れないんだ」と誤魔化す。

「……そっか。分かった!!あ、でも……兄さんはお見舞いに来てくれる?」

「当たり前だよ。晴斗の元気そうな顔も見れたから僕はもう行くな」

晴斗は雪斗がこれからも見舞いに来てくれると聞き暗い顔からニパッと笑った。そして「兄さんありがとう!」と椅子から立ち上がり雪斗に抱き着く。

「また三日後な」

雪斗は決意を固めたような表情をしながら病院を後にした。


家に戻ってきていた雪斗は両親が攫われた理由を知るため、入るなと言われていた書斎のドアガチャっと開け書斎に入る。

書斎の中は本の匂いと微かにコーヒーの匂いがした。雪斗はいつも父親が飲んでいたコーヒーの匂いを嗅ぎ今もここにいるんじゃないかと思ってしまう。

「何か……母さんと父さんが攫われた理由を見つけないと。晴斗の為にも」

雪斗と晴斗の父親の書斎にはたくさんの書物で溢れかえっていた。古い書物もあるせいか古本屋のような独特な臭いもする。

「父さんの書斎ってこんなに本があるの知らなかった。ここなら何かわかるかもしれない」

雪斗は片っ端から本を開き呼んでいく。中には外国の本もあり雪斗は辞典を使いながら読んでいる。でも辞典を読んでいても、日本語以外の言葉を読めない雪斗は外国の本はほぼ理解出来ない。

「フランス、イギリス、マチュピチュ……外国の本ありすぎでしょ。ん?本に何か挟まって……え?」

本に挟まっていたのは雪斗へと書かれた封筒だった。震える手で雪斗は封を開き手紙を読んでいく。

手紙に書かれていたのは短く「もし自分達に何があっても八咫烏には関わるな」と雪斗の父親の字で書かれていた。

「ここでも八咫烏……。父さんと母さんは八咫烏と関係ないはずなのになんで?」

雪斗は自分が何で八咫烏に関わってはいけないのか疑問でしょうがない。今まで雪斗は普通の生活を過ごしてきた。なのに、急に両親が謎の組織獄堕の園に攫われ八咫烏に出会った。180度も世界が変わり雪斗は今の状況を理解しようとするので精一杯である。

「……やっぱり八咫烏に入るのが父さんと母さんを見つけるのに最善か」


雪斗は本を見るのを止め、黒いパーカーに黒いズボンに着替えて外に出る。

外は太陽がオレンジ色に変化し夕方になって気温が少し下がり過ごし安い。

「まだ日の入り時間ではないからあの化け物もいないな」と雪斗は安堵する。昨日八咫烏がカッコよく夜喰を倒す所を雪斗は見た。でも、やはり殺されかけたのが記憶に繊細に残っており、夜喰は恐怖の対象である。

雪斗は八咫烏がいつ街に出てくるか分からないから全速力で走り幽霊屋敷に向かう。

走っている雪斗は風を受け髪の毛がファサファサと靡く。

「はあはあ、着いた」

夕日を浴びている幽霊屋敷は、月明かりを浴びている時とはまた違った怖さを醸し出していた。

雪斗は鍵も掛かっていないドアをそーっと開ける。音も鳴らないようにそーっと開けたが、ドアはギイイと音が鳴ってしまう。

「怖くない怖くない。幽霊なんかいない」とブツブツ呟きながら雪斗は幽霊屋敷の中へ。

屋敷の中に入った雪斗はピタリと足を止めた。

幽霊屋敷の中は夕日が差し込み夜とは違い少しだけ明るい。だが、外と同じで夕日のせいで雰囲気が夜とは違う。

「……怖がってる場合じゃない。今日は絶対に八咫烏がどこに消えたのか知らないと」

急に古い時計がボーンボーンと鳴った。その音に雪斗は驚き身体が反射的にビクッとなり周りを見る。幽霊屋敷に何も変化がなく雪斗は安心をした。

暫くするとどこからかだれかが喋っている声が風が運んでくる。

「夜さあ雨予報じゃん?誰か何時から雨降るか知ってるー?」

「確か二十一時頃だったはずだ」

「うっそ!マジで?!最悪ぅ」

雪斗は声がだんだん近づいてくるのを感じ急いで側にあった机の下に隠れる。今ここで見つかったら家に帰されると思ったから。

「お前らいい加減静かにしろ。後三十分もすれば日の入りなんだぞ」と低い咲間の声が幽霊屋敷に響き渡った。

咲間の声を聞き雪斗は「昨日のあいつの声」とボソッと呟く。そして昨日のことを思い出しまた雪斗は腹が立ってきた。

スーッと壁だった所が横にスライドされ黒い帽子に黒い布で顔を覆った袴を着た八咫烏が勢ぞろいで出て来る。

「咲間隊長、陣形は昨日と一緒でよろしいですか?」

「ああ。……もしかしたら子どもが外にいるかもしれないから注意深く周りを見るように」

咲間は昨日の雪斗の様子からして、夜の外で自分達を待ち構えているかもしれないと思った。その考えは当たりだった……でも、咲間の考えとは少し違い現在息を殺してこの幽霊屋敷に隠れているとは流石に咲間も思っていなかった。

雪斗は咲間達の自分が机の下に隠れているのがバレないかとひやひやしている。隠れている机の側に八咫烏達がいるから雪斗は移動することも出来ない。

「最近獄堕の園(ごくだのその)が活発に活動している。昨日も獄堕の園(ごくだのその)に二人誘拐される事件が発生した。何が起こるか分からない……気を引き締めて今日も任務に臨め」

怖い顔をした咲間が部下に指示をした。咲間の言葉を聞いた隊員達は先ほどの緩い顔から真剣な表情になる。

また古い時計がボーンボーンとなると八咫烏達の空気がガラッと変わった。隊員達がピリつき始めた理由はこれから夜喰と戦うから。

「よし、行くぞ」

咲間は号令を掛けドアの方に歩き始めた。

八咫烏達が外に向かっていくのに安心し気が抜けて雪斗は少し動いてしまいガタッと音を立ててしまう。

その音に気づいた咲間は後ろを振り返りジッと音が聴こえた方を見る。

「……気のせいか」

立ち去っていく咲間に雪斗は安心した。咲間はこの建物は古いから何かが崩れただけだろうと判断。

「気づかれたかと思った」

机の下から出てきた雪斗は先程まで普通の壁だった所の前に立つ。

「中真っ黒……これどうなってんだ?」と洞窟のような真っ黒の通り道を見ながら雪斗は疑問を口に出した。

洞窟のような真っ黒の通り道からヒュウと風が吹いてくる。すると壁がスーッと本来の位置に戻り始めた。それに雪斗は慌てて洞窟のような真っ黒の通り道へ。

壁が元に戻ると幽霊屋敷への入り口は消えてしまった。

「え、あ……勢いで入ったけどこれ大丈夫だったかな」

雪斗はだんだんと不安が募っていく。ここにずっといるわけにもいかないので雪斗は恐る恐る前に歩いて行く。

先ほどの幽霊屋敷と違いここはどこも見渡す限り黒く何も無い。黒いが暗いというわけではない不思議な空間でちゃんと前は見える。

恐る恐る雪斗が前に歩いて行くと段々と前が明るくなって来た。

「え?」

洞窟のような真っ黒の通り道を抜けた先には明治時代のような街並みが広がっていた。

ここは常闇ノ庭という異世界のようなものだが、雪斗はここが異世界のようなものとは知らない。

常闇ノ庭には馬や牛がウロウロとしている。

目の前の景色に呆然としていた雪斗に、車椅子に乗った眼鏡を掛けた男性が「ん?君はどこから入って来たんだい?」と話しかけた。

潜入した雪斗はまさか八咫烏の人にこんな早くに見つかるとは思わず言葉に詰まる。

「え、あ、いや」

「……君、八咫烏ではないね?」

まさか潜入はここまでで家に帰されると思い雪斗はギュッと目を瞑った。

車椅子に乗った男性田中アレンが「ついておいで」と驚くことを言う。

「え?」




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