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今日も魔王城は飯がうまい  作者: 昼の月
322/386

同じ火は使わない

街道は、

ゆるやかに曲がっていた。


舗装はある。

道標も立っている。


だが、

人の足取りは

少し重い。


ミナが

歩きながら言う。


「……ここ、

 前の町より

 進んどるな」


アリアは

すぐに否定しなかった。


「……進んでいます。

 だからこそ、

 別の詰まり方を

 しています」


ルナは

地面を見つめる。


「……走ってない……

 でも……

 休めてない……」



◆途中の宿場


道の途中に、

小さな宿場があった。


荷を下ろす者、

水を汲む者、

声は少ない。


だが、

目が忙しい。


アリアは

その違和感に

すぐ気づいた。


「……ここは、

 止める以前に

 “選びすぎている”」



◆選択疲れ


宿場の主は

疲れた顔で言った。


「……今は、

 自分で決めろ

 って言われるだろ」


「どこまで止めるか、

 どこまで戻すか」


「全部、

 自分らで、

 だ」


それは、

自由の負荷だった。



◆同じことはしない


ミナが

小さく舌打ちする。


「……整える、

 言うてもな」


アリアが

はっきり言った。


「……ここでは、

 料理は

 作りません」


ルナが

少し驚く。


「……火……

 使わない……?」


アリアは

頷いた。


「……火を入れると、

 “答え”を

 出してしまう」


ここでは、

それが

重すぎる。



◆別の整え方


代わりに、

アリアは

宿場の主に

一つだけ聞いた。


「……今日、

 決めなくていい

 ことは

 何ですか」


主は

しばらく考え、

答えた。


「……明日の

 荷の振り分け」


それだけで、

十分だった。



◆一つ減らす


その夜、

宿場では

明日の荷の話を

しなかった。


誰も

急かさない。


決めないことを

決めた。


ミナが

ぽつりと言う。


「……楽やな」


それは、

料理を

作らなくても

起きた変化だった。



◆風の違い


風は、

ここでは

少し高い。


地面ではなく、

人の頭の上を

流れている。


ルナが

小さく言う。


「……風……

 考えさせてる……」



◆役割の更新


夜、

まかない部は

焚き火を囲む。


調理ではない。

暖を取るだけ。


ミナが

火を見つめて言う。


「……うちら、

 火を

 持ち歩く

 んやないな」


アリアが

静かに答える。


「……火を

 使うかどうかを

 選ぶ」


それが、

次の段階だった。



◆次の町へ


翌朝、

宿場は

少し静かだった。


だが、

誰も困っていない。


一つ決めないだけで、

息が戻る場所もある。


アリアは

振り返らずに歩き出す。


(……同じ火は、

 同じ場所では

 使わない)


それが、

今回の学びだった。



道は、

まだ続く。


整える方法も、

一つではない。


まかない部は、

また少し

軽くなっていた。


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