表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日も魔王城は飯がうまい  作者: 昼の月
323/387

境界線の町

町は、

川をまたぐ形で広がっていた。


橋のこちら側は静か。

向こう側は、人が多い。


音も、

匂いも、

歩調も違う。


ミナが

橋の中央で立ち止まる。


「……分かれとるな」


アリアは

うなずいた。


「……ここは、

 一つの町で

 二つの呼吸を

 しています」


ルナは

川面を見て言う。


「……水……

 迷ってる……」



◆選ばない側


橋のこちら側では、

露店が少なく、

品数も絞られている。


だが、

人の顔は穏やかだ。


店主が

笑って言う。


「今日は、

 これだけ」


理由はない。

言い訳もない。


選択肢が

最初から少ない。


それで、

回っている。



◆選び続ける側


橋の向こうでは、

声が重なっている。


「どれにする?」

「今、決めて!」

「早く!」


選択肢は多い。

だが、

誰も落ち着いていない。


宿の主が

こぼす。


「……選ばせすぎて、

 皆、

 疲れとる」



◆どちらが正しいかではない


ミナが

腕を組む。


「……どっちが

 正解や?」


アリアは

首を振った。


「……正解は、

 ありません」


「……壊れる速度が

 違うだけです」


選ばない側は、

伸びにくいが

折れにくい。


選び続ける側は、

伸びるが

摩耗が早い。



◆介入の線


ルナが

小さく言う。


「……ここ……

 火……

 入れたら……

 割れる……」


アリアは

即座に理解した。


「……ええ。

 料理を出すと、

 “どれを食べるか”

 が増えます」


ここでは、

料理は

負荷になる。



◆やらない選択


まかない部は、

調理場を

借りなかった。


代わりに、

橋の中央に

腰を下ろす。


ただ、

水を飲む。


誰かが

それを見て

足を止める。


「……何してる?」


ミナが

答える。


「休んどる」


それ以上、

言わない。



◆休みが伝染する


しばらくすると、

橋の上に

座る人が増えた。


荷を下ろす者、

考え込む者。


橋は、

一時的な

何もしない場所に

なった。


選択を、

一度

棚に上げられる場所。



◆境界線の役割


アリアは

その様子を見て思う。


(……ここは、

 整える場所じゃない)


(……切り替える場所だ)


町全体を

変えようとしない。


ただ、

境目に

余白を置く。



◆風の扱い


風は、

橋の上で

弱まった。


両岸では

違う向きに吹いている。


だが、

橋では

渦にならない。


ルナが

小さく言う。


「……ここ……

 ちょうど……」



◆介入の限界


夕方、

宿の主が

聞いてきた。


「……何か

 してくれんのか?」


アリアは

正直に答えた。


「……今日は、

 ここまでです」


それ以上は、

踏み込まない。


ここで踏み込めば、

どちらかの岸を

選ぶことになる。



◆次へ進む判断


夜、

橋を渡らずに

町を離れる。


ミナが

少し意外そうに言う。


「……渡らへんのか」


アリアは

うなずいた。


「……境界線は、

 渡ると

 役目を失います」



◆戻れる感覚


背後で、

橋の上に

人影が残っている。


座って、

話して、

何も決めていない。


だが、

それでいい。


ルナが

小さく言った。


「……戻れる……

 人……

 増えた……」



整えるとは、

中に入ることだけではない。


境目を壊さない

という仕事もある。


まかない部は、

また一つ、

やらない選択を

覚えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ