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木漏れ日の下で婚約破棄を希う  作者: 天満月 六花


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願いと夢


 国王陛下が私の顔を見て厳かに口を開く。


「申してみよ」


 威厳ある声に背筋を伸ばし、私は願いを口にした。


「オズウェル様に会う機会をつくっていただきたいのです」


「フィア?」


 私の言葉にまず声を上げたのはディオンだった。そんなディオンに微笑む。


「私はオズウェル様から直接理由を聞きたいのです」


 国王陛下は一度目を伏せると鷹揚に頷く。


「その願い、聞き届けよう」


「ありがとうございます」


 頭を下げる私を複雑そうな顔で見るディオン。


「フィア……オズウェル様と直接会うのか?……あんな事が起きたのに……」


「ふふ、ディーも来てくれるでしょ?」


「それは……もちろん行くけど……でもフィアと直接会わせるのは……」


 渋るディオンにふっと笑う。


「ならディーだけで行く?……ディー、オズウェル様の動機が気にかかってるんでしょ?」


 ディオンの空色の目が丸くなる。それでもその奥に浮かぶ感情は戸惑い。


「ふふ、ディーが聞いてきてくれれば私は直接会わなくてもいいわ。ディーが教えてくれるもの」


 笑いながらそう言うと、ディオンは静かに目を伏せた。


「……わかった。なら俺が聞いてくる。国王陛下、フィーリアではなく俺にオズウェル様と会う機会をお願いします」


 頭を下げるディオンに私は目を細める。


 ――ディー、オズウェル様と話したいようだったもの。


 何か感じるものがあったのだろう。ディオンの仕草は雄弁だった。それでも言い出さなかったのは恐らく私を害そうとした方だから。私が不快になる可能性がある行動をディオンは取ろうとしない。

 そうしてディオンが遠慮をするのであれば、私がディオンの心配事を取り除けばいいのだ。支え合う、それがこれから先ディオンの傍にずっといる私の役目でもある。


「よかろう。元々君達の願いは聞くつもりだ。なんでも言うがよい」


 国王陛下の言葉に目を見開く。


 ――なんでもは……駄目ではないかしら?


 隣のディオンを見ると私と同じような驚き顔をしている。


「父上……良識あるお二人ですのでその言葉に驚いていらっしゃいますよ」


「良識があるからなんでも、と言ったのだ。誰彼構わずは言わぬ。それにディオンからの求めは王妃が聞いたが、フィーリア嬢からはまだだろう。ディオンが求めたこと以外に求めることはあるか、フィーリア嬢?」


 王太子殿下からの諌めを受け流した国王陛下は私へ問いかける。


 ディオンが夜会で王妃陛下に求めたのは、私とディオンの何にも脅かされない婚約と幸せに歩むこと。そしてそれが守られる国への忠誠。


 ――私は……。


 顔を上げ国王陛下の青と金が混じる瞳を見返す。


「私は……ディオンと同じことを願います。そしてもう一つ許されるのであれば……私が王宮魔道具師へ挑戦することをお許しください」


 静寂がその場を包む。


 息を漏らしたのはディオン。その声は笑っている。


「フィア、それは王宮魔導具師にして欲しいって言ってるも同然だよ?」


「え?あ……そうよね!なら聞かなかったことにして頂かなくちゃ……!?王宮魔導具師への試験はきちんと受けようと思っているのです。ただ魔術師ではなく魔導具師になりたいと意志を伝えておきたかったのです……」


 ディオンに指摘されて肩を落とす。

 確かに願いを聞かれて王宮魔導具師のことを口に出せば、無試験で王宮魔導具師にして欲しいと言っているようなものだ。


 ディオンは落ち込む私の背中を優しく叩いてから、タイピンを取り外して机の上に置く。私が贈ったタイピンである。


「フィーリアが作った魔導具はこちらです」


 そう言ってディオンは魔力を流す。


 途端、この部屋中に映し出される私とディオンの想い出。幼い私とディオンが目の前を走り回っている。

 そこでディオンは魔力を止めた。


「フィーリアはこの技術を論文に纏めています。発表はこれからですが……注目を集めるのは間違いないでしょう。フィーリアは引く手あまたになるでしょうね」


 にっこりと笑うディオンに目を瞬かせ、顔を緩ませる。


 ――ディー、私の論文しっかりと見てくれてたのね。


 あの頃上の空だったディオンだけれど、しっかりと論文を読んでいてくれたことが嬉しい。

 論文を書くのはとても苦労したのだ。ディオンに何度ダメ出しをされたかわからない。


「ふふ、陛下。これは先に約束しておいた方が良いと思いますよ。フィーリア嬢はとても才能ある者ですから」


 王妃陛下が銀の目を優しく細め、私を見る。


「この王宮内部は彼女の魔力に満たされていますもの」


 その言葉に肩を跳ねさせ、恐る恐る王妃陛下を覗く。


「フィーリア嬢もいるのであれば、今までの阻害魔法では太刀打ちできませんね。改良を考えなければ。できればフィーリア嬢、貴方にも手伝ってもらえればと思っているのです。阻害魔法の発動にも魔導具を使っています。王宮魔導具師を目指しているのでしたら勉強にもなると思うのですが、いかがですか?」


 微笑んで問われたことに目を輝かせる。


 ――それは……とっても興味があるわ!


 私の顔が、外の太陽に負けないほど煌めいた。


読んでいただきありがとうございます。

最近更新が遅くなっていてすみません。

これこらもよろしくお願いします。

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