結末
「まず、この度はすまなかった」
国王陛下が開口一番に言い頭を下げ、王妃陛下や王太子殿下もそれに続く。
「え、ええ!?ど、ど……!そ、そのような……こと……!」
王家からの謝罪という出来事に衝撃を受け慌ててしまう。ディオンも目を見開いて驚いた様子だ。
「……国王陛下、王妃陛下、王太子殿下も頭を上げてください。フィーリアが混乱していますので」
ディオンが冷静そうに告げるので、バッと顔を上げる。私に優しく微笑むディオンは王家からの謝罪で私のようには動揺してなさそうにしているのが悔しい。
――ディーってば……やっぱり怒っているのかしら……?
ディオンは婚約破棄を言い出したことを後悔している。原因となったオズウェル第二王子殿下の行動も許していないだろう。特に私が……息を止めてしまったから余計に責任と怒りを感じていそうだ。
ちらりと周囲を見るとルディウス様、アイリス様に父まで平然としている。どうやらこれは予定されていた動きのようだ。
――……ルディウス様もアイリス様も……お父様も……きっと私達の為に、王家相手といえど怒ってくれているのね……。
ディオンの言葉に頭を上げた国王陛下達に背筋を伸ばして相対する。
父達が頑張ってくれたのであれば、私もそれに応えなければならない。
「非公式な場でしか頭を下げられないことを詫びよう。オズウェルが大変な失礼をした」
オズウェル第二王子殿下の名前の所でディオンは空色の目を少し揺らした。
「いえ。王妃陛下にあの場を収めて頂いたこと、感謝しております」
国王陛下の詫びる言葉にディオンはそう返す。
ディオンは私を国や王家に取られなくてよかった、と言っていた。
私もあれだけディオンや父に外で見せないように言い含められていた魔法の力を表に出すにあたって、この先何かしらの制約がかかるだろうことは覚悟していた。
魔術師団に入れと言われれば入る覚悟をしてあの場で魔法を使ったのだ。しかし終わってみればそのような事にはならなかった。
それはあの場で収めてくださった王妃陛下のお陰だ。
「私はオズウェルがやった事の後始末をしたまでです。貴方達に迷惑をかけた事実は覆りません」
王妃陛下が目を伏せながら言う。それに国王陛下が頷くと、私達の方へと向き直る。
「君達二人には今回の結末を知る権利がある。王家を代表する者として、私から説明させてもらおう」
国王陛下の真剣な声に私はディオンと目を合わせてから頷く。
「はい、わかりました」
国王陛下は一つ息を吐いてから話し始めた。
「第二王子だったオズウェルは王籍剥奪となった」
その言葉の重みに息を呑む。
「それでも元王子で王家の血が流れていることには変わりない。その立場を利用されないよう、王都近くにある離宮で蟄居となる。二度と出てくることはないだろう」
私は目を伏せた。
家の中だけの自由。それは私にも覚えがある。私はディオンが病を治してくれると約束してくれた。だからきっとこれから家の中から外に出ることができるようになる。
けれどオズウェル殿下……いや、オズウェル様はこの先はもう二度と自由を得ることはないのだろう。
国王陛下への叛逆に等しい行為をしたのだ。その命があるだけでも温情がある。
「フィーリア、オズウェル様はそれだけのことをしたんだ。これは仕方のないことなんだよ」
父が私の頭を撫でる。それに首を縦に振った。ディオンを見ると、空色の目を痛ましげに伏せていた。
「オズウェルに協力したアデラインは三ヶ月の謹慎と再教育となっておる。ディオン・ユーフィリウム、フィーリア・トルメリア。被害者である二人は、オズウェルとアデラインの処罰に異存ないか?」
国王陛下の嘘を許さぬ鋭い目に私は頭を下げる。
「私は異存ありません」
「……私も異存ありません」
一拍遅れてディオンが同意する。
私はディオンを見る。空色の瞳が迷うように揺れていた。
「オズウェルがあの騒動を起こした理由は……王子という立場から降りたかったからだと言っている。それを実現させるのに君達二人を利用するのが都合がよかったらしい。王妃の病はオズウェルには伏せていたが知っていたようでな。同じ病であるフィーリア嬢を狙えば、王妃が出てくると思ったと言っていた。……私と王太子がいる時に行わなかったのは、内々に処理されてしまうのを恐れたそうだ。息子であるオズウェルを止められず、迷惑をかけた」
「……弟の気持ちを汲んでやれなかった私も同じです、父上。私がもっと……優秀であれば……」
国王陛下と王太子殿下は悔しげに眉を寄せる。
「二人共、もう起きた事です。オズウェルは自分で選択をし、行動を起こしました。悔やんでも何にもなりません」
王妃陛下は背を伸ばし、前を向いている。オズウェル様と同じ銀の目は揺るぎない決意を宿している。
「……そうだな。どうしようもないことを言った」
国王陛下の声を聞きながら私は考える。
どうしてオズウェル様は王子から降りたかったのだろう。優秀な王子で、しっかり王太子の補佐をしていると聞いていた。
それに……夜会の時に相対したオズウェル様は王子という立場を疎んでいるようにも見えなかった。
――知りたいわ。
「恐れながらお願いがございます」
私の声に、ディオンが顔を上げた。




