―騒動の終わり―
俺が安堵の息を吐くと同時に王妃陛下が動く。
「皆様、夜会の最中にお騒がせ致しました。この騒動の結末の証人となっていただいたこと、感謝します」
王妃陛下が笑みを浮かべ礼を言う。それに会場の貴族たちは礼をして返す。
壇上のフェリクス様と目が合った。少し呆れたような顔は俺の言葉の意味を正確に読み取ったからだろう。
――宰相閣下もわかっていらっしゃるだろうな……。
それに他の優秀な貴族の方も俺が本当に求めた内容はわかっているだろう。
しかしそれでも何も言われなかったのはこの騒動の対価としては許容範囲なのだ。いや、むしろ俺の求めたものは対価としては少ないと思われているのかもしれない。そうであればわざわざ要求を多くさせる訳もなく、何も口を挟まない方が賢い。しかもこの大勢の人の前で和解をしている。あとで求めを変えることもできない。
でも俺はこれでいい。
フィーリアと俺。二人が一緒に幸せでいることが第一だ。
きっとフィーリアも俺と同じようなものを望むだろう。
――俺とフィアは、そういうところは似ているからな。
フィーリアを救いたい。
きっとフィーリアも同じように俺を救いたいと思ってくれたのだろう。
そのフィーリアの想いに胸が熱くなる。
「さあ、ディオン、ダートン、アイリス。フィーリア嬢も疲れているでしょう。もう下がっても構いません。あとのことは私に任せなさい」
それはオズウェル第二王子殿下への罰の事だろう。
「はい。ありがとうございます、王妃陛下。下がらせていただきます」
王妃陛下へと頭を垂れ、フィーリアへと向き直る。
俺がフィーリアを抱えようとしている間にダートン様と母も王妃陛下へ退席する挨拶をしていた。
フィーリアを抱え終わった後、壇上を見る。
白金の髪を靡かせるオズウェル第二王子殿下の顔は満足気だ。ずっと静謐だった銀の瞳に何かしらの感情が宿っているように見えた。
――俺は……オズウェル第二王子殿下を許すことはできない。
フィーリアを危険に晒したことは許せない。
けれど……。
いつかきっとフィーリアの力は表に出た。それを王家や王宮に良いように使われるのではなく、フィーリアの意志が尊重される結果に収めることができた……。
――その結果だけには……感謝をしてしまうんだよな……。
息を吐く。
オズウェル第二王子殿下がこの騒動を起こした理由など分からない。殿下は聡明な方だ。
こうなる事まで織り込んで、騒動を起こしたのだろう。
俺はオズウェル第二王子殿下を見据える。すると殿下も気づいたのか俺を見た。
俺は軽く会釈だけをした。
オズウェル第二王子殿下は少し目を見開いたあと、深く目を瞑った。まるで頭を下げているように見えた。
夜会の会場から覗く夜空には、明るい星々が煌めく。
流れた星が一瞬で消えていくのが見えた。
明るい夜空は一つの星が消えても、綺麗なままだった。




