↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
木漏れ日の下で婚約破棄を希う  作者: 天満月 六花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/75

―俺の願い―


 その中で声を上げたのは、アデライン王女殿下だった。

 

「お、お母様……!オズウェル兄様は……!」


 幼い声。まだ14歳のアデライン王女殿下には目の前の断罪が受け入れ難いのだろう。


「アデライン。王族として皆の上に立つ以上、守るべきものがあります。貴方はまだ年若いとはいえ王女。今回はオズウェルに巻き込まれたのでしょうが、この騒動に加担した以上貴方も謹慎となります。罰を受けることも覚悟しておきなさい」


 鋭い銀の目が戸惑う三色が混じる目を貫く。アデライン王女殿下は惑うようにしながらも、覚悟を宿した目で王妃陛下を見上げ口を開いた。


「お母様……いえ、王妃陛下。私は私の判断で兄に……」


「王妃陛下。私はアデラインに慕われています。アデラインは慕う私の言う事を聞いたまで。私もアデラインにいい婚約者を宛てがおうと思ったのです」


「オズウェル兄様……!」


 アデライン王女殿下の言葉を遮ったのはオズウェル第二王子殿下。

 王妃陛下の前に跪《ひざまず》き、頭《こうべ》を垂《た》れる。


「私は19歳、アデラインは14歳です。どちらに責任があるなど自明《じめい》でしょう。私も妹であるアデラインは可愛いと思っているのです。どうかアデラインにはあまり重い罰を与えないでください」


 その言葉には確かに優しさが含まれていた。


 エルヴィス第三王子殿下が二人は仲がいいと言っていた。きっと最初からオズウェル第二王子殿下はアデライン王女殿下に責任を取らせるつもりはなかったんだろう。


「……わかっています。アデラインは王女と言えど年若い。厳しい再教育が課されることにはなりましょう」


 王妃陛下の判断に安堵のような息を吐いたのは会場だったか、それともオズウェル第二王子殿下か。

 会場にはまだ若いアデライン王女殿下を擁護《ようご》する声の方が多かったのだろう。それにアデライン王女殿下はオズウェル第二王子殿下と違ってほとんど喋っていなかった。

 オズウェル第二王子殿下に良いように使われたという印象が強い。それも殿下の策略だったのだろうか。


 アデライン王女殿下は目を伏せた。オズウェル第二王子殿下よりも金色が強い白金の髪が顔を隠す。自分がこれ以上発言しても王妃陛下の判断が変わることがないと悟ったのだろう。聡《さと》いことは幸か不幸か。


「さて、ディオン・ユーフィリウム。王家に属する者が起こした騒動の被害者である貴方に問いましょう。彼等に望むものはありますか?」


 俺に王妃陛下の目が向けられる。その覚悟を宿した銀の目に俺は息を呑んだ。


「貴方とフィーリア嬢は被害者です。望むものがあるのならば叶えましょう。フィーリア嬢は目覚めた後でまた問います。この会場の皆が証人です。王家が違《たが》えることはありません」


 それは破格の待遇だ。


 大勢の目の前で王家の者が起こした騒動。それを収める為に、騒動の被害者である俺達に王家へ求めるものを問う。そうすれば全てがこの夜会で解決したこととなり、王家の疵《きず》は最小限となる。


 息を吸って健やかな寝息を立てているフィーリアを見る。そしてダートン様と母を見た。

 二人共頷いてくれたので俺が何を言ったとしても支持してくれるのだろう。


 フィーリアの色づいている頬をそっと撫でる。


 ――俺の一番大切な、愛しいフィア。俺は君がいれば良くて、君が幸せであることが俺の幸せだ。


 だから、言う事は決まっている。


「王妃陛下、私が願うのはフィーリア・トルメリアとの婚約が何にも脅《おびや》かされず、私と共に幸せに歩んでくれることです」


 心から溢れる程の想いを乗せて願う。


「願うのはそれだけです」


 会場は歓声に包まれる。

 欲がなさそうに見える俺の言葉は、一見フィーリアへの愛に溢れて見えたからだろう。


 もちろんフィーリアへの愛は溢れんばかりだが、欲がないのは違う。

 王妃陛下は俺を見据える。王妃陛下なら俺の言葉の意味に当然気づいているだろう。


「わかりました。貴方とフィーリア嬢の婚約が何(・)に(・)も(・)脅かされないように尽力致しましょう。そして……ディオン・ユーフィリウムとフィーリア・トルメリア、両人の幸せを応援致します」


 その王妃陛下の言葉に微笑む。


「有難き幸せ。約束を守ってくださる王家に、私は忠誠を誓いましょう」


 そう言って、フィーリアの頭を優しくソファーに横たえてから立ち上がり跪く。


 それは忠誠の証だ。


「貴方の忠誠に感謝します」


 そうして湧く会場に俺は口端を上げた。


 俺が願ったのは、何事からも守る婚約。それはフィーリアの病気の事も含まれる。

 王妃陛下は俺の研究に支援してくださるだろう。もちろんフィーリアの病の研究は王妃陛下にも当てはまる。悪い話ではないからこちらはそこまで問題なかっただろう。

 しかし、俺とフィーリアの幸せを応援する方は王家としては苦渋《くじゅう》の決断だろう。この夜会で散々示したフィーリアの力。フィーリアがどう言うかはわからないが、フィーリアが『幸せ』でないと判断すればその力は王家へと捧げないと言ったのだ。


 しかし王妃陛下はこの大勢の証人の前で約束を違えることはないと言ってくださった。

 俺としては最高の結果だ。


 ――それに約束を守ってくれる限りは忠誠を誓うって言ったし、問題ないだろう。


 俺もフィーリアの病の研究が進んでいるこの国を捨てる訳にはいかない。

 うまく付き合っていくしかないのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。