―オズウェル第二王子殿下の目的―
オズウェル第二王子殿下は王妃陛下と同じ銀の目を一度伏せ、またすぐに開いて王妃陛下へと向けた。
その目に映っているものは何なのか。
「王妃陛下、私はディオン・ユーフィリウムとフィーリア・トルメリアの婚約破棄を提案し、ディオンの新たな婚約者にアデラインを薦めました。その方が未来ある研究者であるディオンにとって有用であると考えたのです」
オズウェル第二王子殿下はスラスラと説明する。
「オズウェル、私は理由が聞きたいのではないわ。貴方ならわかっているでしょう。何故、国王陛下もディオンの父であるユーフィリウム侯爵もいない今、それを提案したのですか?婚約破棄も婚約も、国王陛下の承認が必要であると知っているでしょう」
鋭く低い声。
糾弾するその様子を皆が見ているこの場でやるのは、王家への不信感を少なくする為だろう。オズウェル第二王子殿下は王家への不信を抱かせることをしてしまったのだ。
「……ですが、国王陛下はお認めにならないでしょう。何の瑕疵もないトルメリア家へと婚約破棄を支持するとは思いません」
「それは陛下が反対すると理解していた、ということですね。その言動が何を意味するのかわかっていますか、オズウェル」
厳しい王妃陛下の銀の目。
その目を受けても、オズウェル第二王子殿下は変わらない。
「ええ、王妃陛下。私は国王陛下の意志と反する行いをしようとしました。しかしそれは国の為です。ディオンの有用性を考え、後ろ盾として王女であるアデラインを付かせることで何の憂いもなく研究に専念できる環境を作ろうと思ったのです」
まるで取ってつけたような理由だ。
殿下は俺にも同じようなことを言っていた。あの時は言われる言葉にもこの先の話にも興味が持てなかったから流していたが、今聞くとあれは誰が聞いても違和感を覚える理由だと思う。
その違和感は、第二王子殿下の考え方への不信。王族として相応しいかの不信感だ。
「しかし、婚約破棄は早計でした。フィーリア嬢は実に素晴らしい力をお持ちです。病弱で動けない婚約者などディオンの足枷になると思っていましたが、そのようなことは」
「もう黙りなさい」
話すオズウェル第二王子殿下を王妃陛下の声が遮る。
殿下は言われるとすぐに口を閉じた。何を考えているのかはわからない。
「オズウェル、貴方は情がないのですか?長年の婚約者を国に勝手な理由で奪われた者が、国に尽くすと本当に思うのですか?」
「……それが貴族の責務です」
王妃陛下の血を吐くような問いにオズウェル第二王子殿下が静かに答えた。
その答えに会場がざわめく。信じられない、殿下は王族の器ではない、そんな声ばかりだ。
この声達は大きなざわめきとなって壇上にも聞こえているだろう。
そこでオズウェル第二王子殿下の表情が少し動いた。口端が少し上がった表情に俺が見たのは安堵の感情。
――ああ……オズウェル第二王子殿下は……。
ざわついている会場。
厳しく見る王妃陛下の目には悲しみも含んでいるように見えた。
「貴方の答えが情も理解しないその答えであり、国王陛下を裏切った……その事実がある以上、私は断じなければなりません。オズウェル、貴方は王族を名乗る資格はありません」
眉を寄せるオズウェル第二王子殿下。けれどその口元は変わっていない。
「貴方には厳罰を与え、王子として公に出ることを禁じます」
王妃陛下のオズウェル第二王子殿下への断罪に皆が口を噤んだ。
――……この厳罰こそが……目的だったのか……。
王子という身分の剥奪。今は王妃陛下が国王陛下の代理として公に出ることを禁じたが、きっと国王陛下が帰国すればそういう話になるだろう。
国王陛下への叛逆を起こしたも同然なのだから。




