私の力
唇を軽く噛む。
ディオンの方に少しだけ視線を向けると軽く首を振られた。ディオンにもオズウェル第二王子殿下の目的がわかったはずだ。いつもより少しだけ顔が固い。
周囲には分からないよう、静かに深呼吸をして姿勢を保つ。動揺を表に出すのは得策ではない。
――それに私はもう、ここに来た時点で……決めていたもの。
ディオンを見る。私の顔を見て目を見開いた。
――ディーは……怒るわね。
笑みを湛えて銀の目を強く見返す。
「私の価値、ですね。では……恐れながらオズウェル第二王子殿下にお願いがございます」
「ほう?自身の価値を示すために願いがあると?」
殿下は口端を上げ面白そうに笑う。
「はい」
それにただ頷くだけで答える。笑みは崩さない。
「……願いを言ってみるがいい」
銀の目が続きを促す。それに頭を下げ、息を吐いた。
「聞き入れてくださり、ありがとうございます。私の願いは……私が自身の価値をオズウェル第二王子殿下に示すためにする行動を咎めないで頂きたいのです」
「それは咎めるような行動をするという宣言か?」
殿下の言葉に護衛の方達がピリつく。ディオンが苦々しい顔で首を振る。今にも私と殿下の間に割って入りそうにしているが、そうした時点で私に隠すべき何かがあると言っているようなものだ。
「決して誰にも危害は加えませんわ。ただ見ようによっては危害を加えるように捉えられる可能性がございますので……先に許しを頂きたいのです。誰かに危害を加えた場合は厳しく罰していただいて構いませんわ」
「フィア!」
耐えきれなかったように叫んだディオンに私は微笑みを返した。
オズウェル第二王子殿下が私に目を留めたあと、ディオンの方に目を向けて手を振る。夜会の警備に当たる近衛騎士がディオンの周囲に付く。捕らえるまではしていないがあれでは捕らえられる直前のような状態だ。
今にも騎士を振り切りそうなディオンに眉を下げて首を振った。
――ディー、ごめんね。
ディオンは顔を歪める。私はディオンが安心できるように笑う。
――ディー、もう大丈夫なの。私は私で……ディーを守りたいの。
ディオンを守りたいから……私は自分の全てを賭けるの。
そんな一幕を眺めていたオズウェル第二王子殿下の銀の目は相変わらず冷たかった。
「……そこまで言うのなら許そう。全員、フィーリア嬢の行為を咎めるな」
オズウェル第二王子殿下の言葉に警備に当たっている護衛と近衛騎士が戸惑いの顔を浮かべ、会場もざわめく。
「ありがとうございます」
許してくれた王子殿下に深く頭を下げる。
そして顔を上げ、不敵に見えるように笑う。
「では、遠慮なく私の力を示しましょう。驚かれると思いますがオズウェル第二王子殿下に誓ったとおり、危害を加えるつもりはありませんのでそのままでいてくださいませ」
会場の隅々まで聞こえるよう、魔法で拡声する。
許しを得たのだからもう、遠慮する事はない。
オズウェル第二王子殿下の銀の目に、驚きが宿った。




