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23話「金曜日」

 この世界にも金曜日はやってくる。つまり土日が休みということだ。

 とはいえ、社畜時代は休日出勤なんのそのだったが……。


 今日は、火属性の授業である。

 魔法学校での一週間のスケジュールは、月曜日:総合的な学習、火曜日:土属性、水曜日:水属性、木曜日:風属性、金曜日:火属性でローテーションだ。


 火属性の魔法は種類が極端に少ない。基礎魔法に加えて魔法がもう1つで合計2つ。これで終わりだ。

 そして、火魔法の使用者も極端に少なく全魔道士の1%以下だ。

 それだけ、難易度が高いということを意味しているのだろう。


 クラスでも、俺以外は誰も火属性の基礎魔法を使うことはできない。



 アーデル先生が俺以外の生徒に火の基礎魔法である『灯火(バーン・ファイア)』を教え、俺はいつものように端の方で遊んでいる。


 しかし、俺としても火は基礎魔法しか使えないというのは少し味気ない。

 アーデル先生が手すきになったタイミングを見計らって、他の魔法を教えてもらうことにした。


「先生、火の魔法を見せてもらえませんか?」

「ええ。構いませんよ。ただ私もあまり得意ではないので、あまり期待はしないでくださいね」


「【火よ、焼き尽くし給え】」

「『炎弾(ファイア・ボール)』」


 スイカほどの大きさの火の玉が発生し、地面に向かって発射された。

 ドンという爆音を響かせ火球が地面に衝突する。そして、直径20センチほどのクレーターが出来上がった。


「まあ、こんなところでしょうか。エイトさんは見ただけで使えるようになるんですよね?」

「はい。ありがとうございます。これで多分使えるようになったと思います」

「火属性の魔法すら一度見ただけで使えるようになるとは本当に恐ろしいほどの才能ですね……。ただし、今見たように地面に穴を開ける威力を持っています。くれぐれも使い方には気をつけてくださいね」

「はい。重々承知してます」


 さてと、クラスメイトとは十分に距離を取った。周りに燃えそうなものもない。とりあえずは安全だろう。

 しかし、アーデル先生は地面に向かって魔法を放ったが、俺の場合は同じようにやってしまうと爆心地となりかねない。

 威力は確認できなくなるが、空に向かって放つしかないだろう。大きさを確認するだけでもある程度の目安になるはずだ。


 手を上に上げ、詠唱を始める。


「【火よ、焼き尽くし給え】」

「『炎弾(ファイア・ボール)』!」


 発生した火球はあまりにも大きい。2メートルはありそうだ。

 空に向かって放たれたそれは消えることなくどこまでも上がっていく。

 段々と小さくなっていき、最終的には見えなくなった。


 射程はほぼ無限と考えていいんだろうか。


 そして、いつものようにクラスメイトたちがわーきゃー騒いでいるのは言うまでもないことだ。



 これで一週間が終了した。


 寮に戻った後、ベックに話かけられる。


「よう。しかしほんとにすげーなエイトは。毎日驚かせられまくってるぜ」

「もう少し控えめにしてたほうがいいかもしれなかったな」

「いやいや隠しきれるようなもんじゃないっしょ。で、本題に入るんだけどさ。俺ら対抗戦勝てそうかな?」


 対抗戦。

 魔法学校のクラス間で魔法を競い合うイベントだ。


「うーん。どうと言われてもなあ……。そもそも対抗戦のルール知らないし……」

「なんだ、知らなかったのか? 種目は全部で5種類だ。魔法を披露して評価するコンテストが4属性分、あとは戦闘力を競い合うトーメナメントだな」

「勝敗はどうやって決まるんだ?」

「肝心の点数は、1位が5点、2位で4点、3位が3点、4位が2点、5位が1点、それ以下は0点って感じだな。トーナメントだけは3位までしかないけど」

「じゃあ俺が全部で1位を取れば勝てるんじゃないか?」

「あーそれは無理だ。言い忘れてたけど俺らFクラスは1人2種目しか出られねえよ。貴族クラスとは人数が違うから調整のためだ」


 なるほど。俺一人が無双して勝てるルールでもないのか。


「ちなみに、前回はFクラスは何点だったんだ?」

「1点だ……」


 1点……。まあみんな一部の基礎魔法しか使えないしそんなもんか。


「ちなみにその1点は誰が取ったんだ?」

「もう卒業しちまっていねーんだわ」


 対抗戦の1ヶ月後には卒業試験が行われる。そして、対抗戦で優秀な成績を残せるのなら卒業もたやすいということか。


「対抗戦だって半年に一度あるんだろ? なら別に今回急いで勝ちに行く必要もないんじゃないか?」

「いいやそんなことはねえ! だって、エイトお前は絶対すぐ卒業しちまうだろ? だから俺らには次しかねーんだよ……」


 確かに順調にいけば、俺は次の試験で卒業することになるだろうな。

 俺の力で対抗戦の勝利を目指すのもどうかと思うけど、ここまでやる気出してるしなあ……。


「ちょっと考えとくよ。ただし、お前らも頑張らないと勝利は無理だぞ?」

「わかってんよ。そのためにFクラスをビシビシ鍛えてくれよ!」


 正直なところ現時点で既に学校で学べることは学び尽くしてしまった感じがある。

 一般の生徒は魔法1つの習得に何ヶ月もかかる。だからこそ、毎週同じことをやるカリキュラムで十分だったのだ。


 しかし、俺はと言えば一度見ただけで大半の魔法が使えるようになってしまう。

 これからは、教える側に回ったほうがいいのかもしれないな。



 ただ、そろそろ実戦する機会が欲しい所だ。

 そして、それはすぐにやってくることになる。


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