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24話「突然の来襲」

 土曜日の朝、その快眠を妨げるものは碌でもないものと相場が決まっている。

 それは休日出勤の呼び出しであったり、あるいは――


 ドンドン。

 俺の自室のドアが叩かれる。

 一向に収まる気配がない。


 やれやれと思いながら、けだるい身体を起こす。そしてドアを開ける。


「なんだルナか。どうしたんだ?」

「デートのお誘いに来ましたわ。本日のご予定はいかが?」

「あー、特にはないけど……」

「では、参りましょうか」

「いや待って。まだ起きたばっかりだから! せめてちょっと準備する時間を」

「仕方ありませんわね。そちらで座ってお待ちしていますから、準備ができたら呼んでくださるかしら?」

「ああ、わかった」


 ドアを閉じ、着替える。ルナはかなり着飾っている様子だった。

 かなり唐突とは言え、デートに誘われるなんて正直舞い上がる。

 しかし、当然ながら、俺にデートの経験なんてない。それに、相手は貴族のお嬢様だ。

 それを俺がエスコートなんてできるだろうか? 出来るはずがない。


 そうだ、むしろリードしてもらおう。そうしよう。

 ルナはかなり気が強いし、むしろそっちの方が良いかもしれないな。


 さて、身支度も終わったことだし、デートに行きますか。

 ドアを開けるとそこには〈竜の剣(ドラゴン・セイバー)〉の兵士が立っていた。


「エイト様ですね。私と同行していただけますでしょうか?」

「はあ。わかったよ」


 ルナとデートするはずだったんだが、なぜむさいおっさんが迎えに来てしまったんだ……。


「エイトさんをどこに連れて行くつもりですの!?」

「〈竜の剣(ドラゴン・セイバー)〉本部です」

「わたくしも付き添ってよろしいかしら?」

「いえ、しかし、私はエイト様のみを連れてくるよう申し付かっておりますので」

「いいじゃないか。それに本部に行くこと自体は何の問題もないだろう?」

「わかりました」

「それでは、行きましょうか」


「ちょっと待ってください! 私も一緒に連れて行ってください!」


 騒ぎを聞きつけたナギサも駆けつけてきた。


「はあ……。このお二方も同行するということでよろしいでしょうかエイト様?」

「ああ。ちなみに用件は?」

「それは本部についた後、ホムラ様から説明がありますので」


 〈竜の剣(ドラゴン・セイバー)〉の本部長であるホムラさん直々の指名。厄介事じゃなければいいが……。



 本部に到着し、俺、ナギサ、ルナの三人とも本部長室に通される。


「やあ。来たね。しかし、君一人を呼んだつもりだったのだけれど……」

「すみません。連れてきてしまって」

「まあいいさ。全ては君が決めれば良いことだ。早速本題に入ろうか。単刀直入に言うとね、君に竜を倒してもらいたい」

「大竜ですか?」

「当然だろう? 君に中竜程度の相手をさせて何の意味がある?」

「ホムラさんが自ら赴けばいいんじゃ? あなたも大竜殺しでしょう?」

「私は王都を離れるわけには行かないからね。周辺にどんな脅威があろうと王都の防衛が私の役目さ」


 俺を除けば、ホムラさんが最高戦力だし、王国の中心である王都を常に守るのは当然といえば当然か。


「竜はどこに? 遠いんですか?」

「遠いといえば遠いし、近いといえば近いかな?」

「? どういう意味ですか?」

「竜と人にとっての距離の概念は同じではないということだよ。なあに今日中には決着がつくはずだよ」

「はあ……」


 言ってることの意味はよくわからないが、そこまで時間がかからないならまあいいか。


「さてと、じゃあ詳しい話は、ウォーレンから聞いておくれ」


 その名前を聞きルナが反応する。


「まさか、風のウォーレン様ですの!?」

「ああ、そうだよ。よく知っているね」

「当然ですわ! 四賢者様の物語は昔から何度も目にしてきましたもの」


 四賢者? 初めて聞く言葉だな。


「もう十年以上表舞台には立っていないはずだけど……」

「それまでの記録は書物として残されていますわ」

「なるほどね。ただその手の物語は脚色されがちだから、あまり信じすぎのもどうかと私は思うよ」

「そうですわね。でも今日はご本人に会えるのでしょう? なら何が本当なのか聞かせていただきますわ」

「本人が語る言葉が全て事実とは限らないよ? 特に歳を取ってくると昔のことは忘れてしまうんだ」

「ずいぶんと疑いますわね……?」

「時間の経過によって、事実は伝説となりいずれは概念にすら昇華しうるのさ」

「よくわかりませんが、覚えておきますわ……」


「うん。それじゃあ行っておいで。エイトくん、彼女らを連れて行くのであればきちんと守ってあげるんだよ」

「ええ。わかってますよ」


 二人は守り抜くし、大竜も倒す。この一週間鍛えた魔法であればそれくらいこなせるはずだ。

 いざとなればブラストになんとかしてもらうという保険はあるものの、できれば今回は俺だけの力でやり抜きたい。


 本部長室の外では、老人が待っていた。


「おっ、来おったのう。儂がウォーレンじゃ。外に馬車を待たせておるから、詳しい話はそこでしようか」

「エイトです。今日はよろしくお願いします」

「ルナ・ヘクスターですわ。風のウォーレン様のお噂はかねがね」

「ナギサ・アリアキです」


「ええのう。ええのう。こんなべっぴんさんを二人も連れて羨ましい限りじゃ」


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