18話「基礎魔法すら圧倒的」
2日目の授業が始まった。
「えー、昨日は色々ありましたが、授業を進めていきます。今日は基礎魔法についてです。基礎魔法は4属性それぞれに1つずつあり、『粘土』、『放水』、『疾風』、『灯火』の4つですね。卒業までに基本的には全て習得してもらうことになります」
ちなみに、俺は既に全部使える。
「基礎魔法は土の形を変える、水を流れさせる、風を吹かせる、火を生み出す、とそれぞれの属性の最も基本的な性質を操る魔法ですので、基礎が疎かであれば当然それ以上の魔法も上手くいきませんよ。では、ここでチャーリーさん。『粘土』の呪文は?」
「はい。【土よ、変わり給え】です」
「ええ。そうですね。それでは残り3つも言ってください」
「『放水』が【水よ、流れ給え】、
『疾風』が【風よ、吹き給え】、
『灯火』が【火よ、燃え給え】です」
「はい。その通りです。ありがとうございます」
「さて、そもそもこの4つの魔法が基礎魔法として制定された歴史としては……
いつの間にか意識が遠のいていた。魔法の理論の話はよくわからない。俺は呪文さえわかれば魔法が使えるんだし、それでいいじゃないかという気持ちが勝ってしまう。
そして、昼を知らせる鐘の音で目を覚ます。
午後からは実技だ。
アデール先生の手に子供の拳ほどの石が握られている。
「それでは、『粘土』でこの石の形を変えましょう」
「【土よ、変わり給え】」
「『粘土』」
魔法が発動し、丸い石が鋭くとがる。
「もちろん一方向にとがらせるだけでなく、様々な形に変えることが出来ます。たとえばこのように」
その後も魔法を発動する度に四角。三角、円と何度も形が大きく変化してく。
「それでは、みなさんもやってみてください」
そう言って、俺たちに石が小さな石が手渡される。
それを受け取り一斉に詠唱を始めた。
「「「「「【土よ、変わり給え!】」」」」」
「「「「「『粘土』!!!」」」」」
ざっと見た限りだとクラスの30人中20人程度が成功しているようだ。
「何度も何度も繰り返し練習してくださいね」
さてと、じゃあ俺もそろそろやりますか。
「【土よ、変われ】」
周りがえっ、と驚く声が聞こえ、注目が俺に集まる
「『粘土』」
石を単に伸ばしたりするだけでは芸がないと思い、とりあえずS字に曲げてみた。
今の光景を見ていたクラスメイトがざわつく。
「なあ今のってまさか……」
「ああ、間違いねえよ……」
「「「「「詠唱短縮!!!???」」」」」
ああ、そうか。そうだったな。通常の詠唱がなんとなく長ったらしく感じて、しっくりくる言い方に変えていた。
正直、昨日の『暴食の竜巻』に比べたら大したことないと思っていたが、これでも十分すぎるほど衝撃的なようだ。
「なあ、呪文を短縮するってそんなに騒ぐほどかな?」
「何言ってんだよエイト! すげーなんてもんじゃねえよ! 呪文は一字一句同じように詠唱するのが当たり前なんだぜ!? だって、何年も魔法の研究を続けてその魔法を発動するのに最適な呪文になってるんだからな!」
「しかも基礎魔法なんて特に呪文が短いからこそ、変えられるもほとんどないんだ」
やり取りを聞いていたアデール先生が会話に入ってくる。
「ええ、ですが、あくまでその最適とは大多数の人にとってです。もしも平均を遥かに越えた才能があるのであればまた違った最適がありえます」
「かー!やっぱエイトほどになると基礎魔法からして違うんだな!」
「俺もエイトの呪文でやってみるぜ!」
「私も!」
その後何度か試していたが、誰も詠唱を短縮しての発動には成功しなかった。
「ちぇー。やっぱできねえか」
「当然ですね。呪文の詠唱はとても高等な技術です。それを基礎がまだ固まっていない段階のあなたたちではまず無理でしょう。それでは授業を続けますよ」
「へーい」
みな元の呪文での魔法発動に取り組み始めた。
それをアーデル先生が見て回り指導をしている。
さて俺は、どうしようか……。正直、もう『粘土』の魔法が使えることはわかりきってるしなあ……。
手持ち無沙汰になった俺は隣にいた女の子に話しかける。
「ちなみにこの石の形どう思う? 俺としては結構上手くできたんじゃないかと思うんだけど……」
「う、うん、すごいと思うよ」
俺としては石の形の芸術性なんかも評価してもらいたかったのだが、そっちにはあまり興味が無いらしかった。
あ、そうだ。どれくらいの大きさを変えられるのか試してみるか。
皆の邪魔にならないよう校庭のすみに移動する。そして地面に両手を付けた。
「【土よ、変われ】」
「『粘土』!」
目の前の地面を隆起させる。とりあえずどこまで高くできるか試してみることにした。
地面がぐんぐん伸びていく。伸びていく様を目で追っているが、収まる気配がない。
校舎の高さを越えた。だが、まだ止まらない。そして、ようやく魔法が停止したときには校舎の数倍の高さになっていた。ここまでくるともはや何メートルかなんて予想もつかない。
これを見てクラスメイトは大騒ぎしている。アーセル先生がこちらに走ってきた。
「はあ……。エイトさん。あなたという人はどこまで……。もはや実技の面では教えられることがないのでこれからは好きにしてていいですよ。ただし、講義はきちんと聞いていてくださいね。テストに受からないと卒業できませんから」
地面はすぐの元の平らな状態に戻した。




