番外編② 地は、選んだ
我は、地。
石に宿り、
土を抱き、
宝を眠らせるもの。
人は、我らを忘れた。
名を呼ばれず、
祈りも捧げられず、
ただ「昔話」として扱う。
それでも、
我は在る。
――ずっと、見ていた。
その娘は、
祈らなかった。
願いも、乞いもしなかった。
ただ、
布に触れ、
針を進め、
宝石を思い浮かべていた。
「これは……」
我は、思わず姿を現した。
人の目には映らぬはずの我を、
その娘は、
当然のように見上げた。
「こんにちは」
声が、震えない。
恐れも、欲も、ない。
――ああ。
この娘は、
我を“力”として見ていない。
我は、試すことにした。
地に眠る宝石の名を、
そっと、囁いた。
オパール。
光を抱く、
地の記憶。
娘は、
その名を、
服に与えた。
飾りではない。
誇示でもない。
布は、
宝石を尊び、
宝石は、布に応えた。
完成した衣を纏ったとき、
我は、思い出した。
――かつて、
女神と並び立った日々を。
力が、戻る。
格が、上がる。
それでも、
娘は、礼を言わない。
「よかったですね」
ただ、
そう、言った。
だから、
我は、決めた。
この娘を、守ると。
この手で育てた宝を、
惜しみなく、渡すと。
火も、水も、風も、
きっと、来るだろう。
我が最初だった。
それで、いい。
娘は、
世界を変える気など、ない。
ただ、
大切なものを、
大切にしているだけだ。
――それこそが。
我らが、
守りたかった世界だ。
地は、
今日も、
静かに笑っている。




