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追い出された貧乏男爵令嬢、ぬいぐるみ職人として公爵家に拾われました 〜宝石の名を持つドレスは精霊と辺境を救います〜  作者: かも@ろん


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最終章 辺境の地に花を

第68話 大地は、迎え入れる


 辺境の地は、想像していたよりも――

 ずっと、広かった。


 荒れ地。

 風に削られた岩。

 痩せた土。


 それでも、

 空は高く、視界を遮るものがない。


「……ここが、私の新しい場所」


 馬車を降りた瞬間、

 足元から、確かな温もりが伝わってきた。


 ――歓迎している。


 理由は、わからない。

 けれど、そう感じた。


「無理は、しなくていい」


 隣で、辺境伯が言う。


「最初は、

 慣れるだけでいい」


 私は、首を振った。


「いいえ。

 まずは、作ります」


 それが、

 私のやり方だった。


第69話 守る服、暮らす服


 最初に作ったのは、

 兵士たちの普段着だった。


 軍服ほど堅くなく、

 けれど、動きやすく、丈夫なもの。


「……軽いな」


「擦れても、痛くない」


 そんな声が、少しずつ増えていく。


 次は、

 農作業用の上着。

 子ども用の外套。

 旅人向けのマント。


 華やかさはない。

 けれど、確かに役に立つ。


 ――すると。


 畑の土が、少しずつ柔らかくなった。

 水の巡りが、良くなった。

 風が、強すぎなくなった。


 精霊たちは、

 何も言わない。


 ただ、

 働いていた。


第70話 すべての加護が、揃うとき


 ある夜。


 四つの気配が、

 同時に工房を満たした。


 地。

 火。

 水。

 風。


「……全員、そろうのは初めてですね」


 私が言うと、

 火の精霊が笑った。


「主役が来たからな」


「主役……?」


 地の精霊が、静かに告げる。


「君だ」


 私は、首を振る。


「私は、仕立て屋です」


「だからだ」


 水の精霊が、やさしく言った。


「力を、

 “形”にしてくれた」


 風の精霊が、楽しそうに付け加える。


「信仰より、

 ずっと長く残るやつ」


 胸の奥が、

 あたたかく満ちる。


「……それなら」


 私は、微笑んだ。


「これからも、

 作り続けます」


 四人は、満足そうに頷いた。


 こうして――

 すべての精霊の加護は、

 私の“日常”に溶け込んだ。


第71話 あなたと、並ぶ場所


 工房の外。


 夕焼けに染まる辺境の地を、

 辺境伯と並んで眺める。


「後悔は?」


 彼が、静かに聞いた。


「……ありません」


 即答だった。


「大変ですけど、

 ちゃんと、生きてる感じがします」


 彼は、少しだけ笑った。


「なら、良かった」


 それだけで、

 十分だった。


 言葉は少ない。

 けれど、

 並ぶ場所は、同じ。

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