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悪役令嬢断罪請負人デルガ  作者: 南蛇井


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第11話 罪状:物語の乱用【幕1】告発

王都・中央広場。


石畳は乾いていた。

数週間前、制度検証の公開討議が行われたその場所は、今は静かだった。


断罪制度は一時停止。

再設計委員会が発足し、王都は「次の形」を模索している――はずだった。


だが、その朝。


掲示板に新たな告示が貼られた。


白い紙。

余白は広く、文字は黒く、迷いがない。


公開検証

罪状:物語の乱用


ざわ、と空気が揺れる。


誰だ。

何の話だ。

また誰かを裁くのか。


人々が集まり、読み、顔を上げる。


続きの一文。


対象:断罪制度運営陣

及び

物語設計責任者


視線が、ゆっくりと動く。


一つの方向へ。


デルガ。


彼はその場に立っていたわけではない。

だが、名はすでに広場にある。


人々の頭の中で。


「物語設計責任者」


それは彼の肩書きではなかった。

だが、事実だった。


断罪は、制度であると同時に、演出だった。

構図。対立。象徴。

若者。怒り。救済。


誰が設計したのか。


――デルガ。



公開検証の日。


広場は再び埋まる。


だが、以前と違うのは、

怒号ではなく、戸惑いだった。


断罪は停止中。

それでも人は集まる。


なぜならこれは――


制度ではなく、構造への告発だからだ。


壇上に立ったのは、若い議員だった。


再設計委員会の最年少。

まだ理想を失っていない目をしている。


彼は声を張り上げない。

淡々と、だがはっきりと告げた。


「本日の検証対象は、断罪制度そのものではありません」


ざわめき。


「国家が“物語”を乱用した可能性について、検証します」


空気が、冷える。


彼は続ける。


「断罪は、人を“役”に押し込めました」


レイアの名を出さずとも、誰もが思い浮かべる。


悪役令嬢。

象徴。

舞台の中心。


「善悪の構図を強制しました」


王子。

カイ。

観衆。


「若者を象徴として消費しました」


沈黙。


「政治的緊張を、物語化して単純化しました」


それは、痛いほど正確だった。


複雑な問題を、

“悪”という一点に集約する。


怒りを集め、放出する。


浄化。


拍手。


次へ。


彼は最後に言った。


「国家は、物語を乱用した」


広場が、息を止める。


それは制度批判ではない。


文化構造への告発だった。



カイは、壇上の端に立っていた。


彼の目が揺れる。


怒りか。

否定か。

それとも、裏切られたという感情か。


若手議員の言葉が終わると同時に、

彼は前へ出た。


「乱用?」


その声は、いつもの滑らかな調子ではない。


荒い。


「物語がなければ国は動かない!」


広場がざわめく。


彼は続ける。


「人は理屈では団結しない!」


「制度だけでは感情は動かない!」


「物語は国家の血流だ!」


その言葉は、計算ではない。


本音だった。


「あなたたちは、何を望む?」


「冷たい報告書か? 数字の羅列か?」


「怒りを、どう処理する?」


「喪失を、どう共有する?」


彼の声は震えていた。


「物語があったから、人は立ち上がった」


「物語があったから、国家は崩れなかった」


彼にとって物語は武器ではない。


信念だった。


国家を動かすための、最後の橋。


「それを“乱用”と言うのか?」


沈黙。


誰もすぐには答えない。


若手議員も、言葉を選んでいる。


だが、広場の空気は変わっていた。


怒りではない。


疑問。


物語は必要か。


必要なら、どこまで許されるのか。


そのとき。


群衆の後方から、ゆっくりと歩いてくる影があった。


デルガ。


彼はまだ何も言わない。


だが、彼が前に出るという事実だけで、

空気は張りつめる。


物語を設計した者。


制度を構築した者。


彼は、逃げない。


広場は静まり返る。


物語が、物語そのものを裁こうとしている。


幕が上がったばかりだ。


【幕1 告発 終】

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