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悪役令嬢断罪請負人デルガ  作者: 南蛇井


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第9話 最後の完璧な断罪【幕1】究極の設計

王都の夜は、静かではなかった。


石畳の大通りを、資材を運ぶ魔導車がゆっくりと進む。

高所に組まれた足場では、灯りに照らされながら職人たちが最後の調整を行っていた。


王城前広場。


そこに建設されているのは――

新たな断罪舞台。


円形。


可動式。


観客席は半円を幾重にも重ね、中央には透明な床。


その下には、魔導式の記録結晶が敷き詰められている。


空中には巨大な魔導鏡。

証拠は即時投影。

改竄不可能。

第三者監査機関の紋章が、鏡の縁に刻まれている。


観衆席には投票装置。


感情ではなく、条文に基づく選択肢。

理由も入力可能。

匿名だが、統計は公開。


演出と事実は明確に分離。


証拠は完全公開。


過程は透明。


――批判不可能な断罪。


その中央に立つ男。


カイ。


夜風に外套を揺らしながら、彼はゆっくりと舞台を見上げた。


「これが完成形です」


声は静かだったが、確信に満ちていた。


「感情は残す。

 だが、暴走させない。

 炎は燃やす。

 だが、都市は焼かない」


彼は手を広げる。


「制度はここまで進化できる」


王都の上空に、星が瞬いていた。


翌日。


発表が行われた。


王城大広間。


官僚、貴族、市民代表、報道記録者。


ざわめき。


壇上に立つのは、制度監査局長。


淡々と、読み上げる。


「改革後制度に基づく、第一回完全公開断罪対象者を発表する」


空気が凍る。


「対象名――」


一瞬の沈黙。


「レイア・クロウディア。成人」


広間が揺れた。


息を呑む音。


抑えきれないざわめき。


レイア。


五歳で断罪不能とされた少女。


聖女と呼ばれ、民衆の象徴となり。


世代対立の構図を崩し。


断罪制度そのものを問い直させた存在。


常に制度を揺らしてきた名。


罪状が続く。


「政治的影響力の過度な拡大」


「民衆支持を背景とした政策圧力」


「象徴的存在としての国家権力均衡への潜在的危険性」


法的には、違法ではない。


だが。


政治的には――重い。


象徴は、力になる。


力は、秩序を揺らす。


そして制度は、それを測らねばならない。


発表は終わる。


沈黙。


その沈黙の中に、恐れと期待が混じっていた。


究極の制度は。


究極の対象を選んだ。


デルガは、王城の一室で彼女と向き合っていた。


重厚な扉の向こう。

簡素な机と椅子。


窓から差し込む午後の光。


レイアは立っていた。


白い衣ではない。


王族でも聖女でもない。


ただの成人女性として。


落ち着いた瞳。


恐怖は、ない。


「私が対象なのですね」


静かな声。


責める色はない。


デルガは頷くしかなかった。


「これは制度の検証だ」


言い訳のように聞こえる。


レイアは微笑む。


「わかっています」


間。


「私が特別扱いされるなら、制度は完成しません」


彼女は窓の外を見る。


遠くで、新しい舞台が輝いている。


「役割なら、演じましょう」


さらりと言う。


あまりにも、軽く。


あまりにも、理解している。


デルガの胸が軋んだ。


(彼女は理解しすぎている)


彼女は知っている。


これは個人攻撃ではない。


これは復讐でもない。


国家構造の、最終実験。


制度が象徴を裁けるかどうか。


民衆が、自らの象徴を冷静に測れるかどうか。


断罪は炎。


そして今。


炎は、太陽に向けられようとしている。


レイアは椅子に腰掛ける。


「証拠は全て開示されるのでしょう?」


「ああ」


「第三者監査も?」


「ああ」


「観衆の投票は拘束力を持つ?」


「ああ」


彼女は満足そうに頷いた。


「それなら、受けます」


言葉に迷いはない。


「もし私が制度を歪める存在なら、

 私が裁かれるべきです」


デルガは目を伏せた。


理想が、刃になる瞬間。


窓の外で、鐘が鳴る。


新制度下、初の完全公開断罪。


対象――レイア・クロウディア。


王都は再び息を詰める。


炎は消えていない。


だが。


その炎は今、

国家そのものを照らそうとしていた。


幕1 終了。

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