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悪役令嬢断罪請負人デルガ  作者: 南蛇井


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33/47

【幕2】完璧な断罪

断罪当日。


王都は静まり返っていた。


歓声はない。

怒号もない。


新設された円形舞台は、朝の光を反射し、冷たく輝いている。


魔導鏡にはすでに全証拠が映し出されていた。


・事前公開済み資料

・資金流動記録

・政策提言書とその影響分析

・支持率推移と議会圧力の相関図


すべて閲覧可能。

すべて記録済み。

すべて検証済み。


反論時間も保証。

弁論権も確保。

第三者監査機関が両側に座る。


観衆席の投票装置は段階評価制。


「有罪/無罪」ではない。


・危険度評価

・制度干渉度

・象徴影響度

・秩序安定性への寄与/脅威


感情は排除されたわけではない。


だが、数値化された。


怒りは数段階。

信頼も数段階。


熱は、測定される。


舞台中央に立つカイは、ゆっくりと群衆を見渡した。


「正義は冷静であっても美しい」


声はよく通る。


「激情がなくとも、正義は成立します」


静かな頷きが広がる。


誰も叫ばない。


誰も石を投げない。


理性的な熱。


洗練された演出。


完璧な制度。


レイアが中央へ歩み出る。


白でも黒でもない、簡素な衣装。


装飾はない。


象徴であることを否定するかのように。


しかし。


彼女が立った瞬間、空気がわずかに変わる。


それでも誰も騒がない。


静寂の中、彼女は語る。


「私は民の期待に応えようとしました」


声は澄んでいる。


揺れない。


「ですが、期待は力になります」


魔導鏡に数値が映る。


支持率の上昇曲線。


政策採択率の増加。


「力は、恐れを生みます」


議会内の反対派議員の発言記録が投影される。


“象徴の影響が強すぎる”


“政治均衡が崩れる”


彼女は否定しない。


逃げない。


「私は象徴になりました」


一瞬の沈黙。


「望んだわけではありません」


「ですが、なった以上、その影響は私の責任です」


群衆は静かに聞いている。


「国家が私を危険と判断するなら」


彼女はまっすぐ前を見る。


「それもまた、秩序でしょう」


涙はない。


激情もない。


抗議もない。


完璧。


言葉は理性的で、筋が通り、感情に訴えない。


自己弁護ではなく、自己分析。


彼女は自らを“事例”として扱っている。


まるで学術報告のように。


拍手は起きない。


だが、ざわめきもない。


処理されていく。


すべてが。


壇下。


デルガは立っている。


手が、わずかに震えていた。


(完璧すぎる)


証拠は揃っている。


議論も整理されている。


反論も成立している。


若さはある。


だが、未熟はない。


怒りはある。


だが、暴走はない。


断罪は、理性化された。


暴力ではない。


見世物でもない。


処刑でもない。


それは――手続き。


デルガの胸に重い感覚が広がる。


(何かが欠けている)


観衆は考えている。


冷静に。


評価し、入力し、判断している。


だが。


(物語が死んでいる)


断罪はかつて、炎だった。


危険だった。


人を焼いた。


だが、同時に照らしていた。


いま目の前にあるのは、炎ではない。


光でもない。


それは処理。


整然とした制度運用。


誰も傷つかない。


誰も叫ばない。


だが、誰も震えない。


レイアは中央で静かに立っている。


象徴でありながら、もはや象徴ではない。


完全に制度に収まった存在。


カイは満足げだ。


観衆も納得している。


国家は成熟した。


……はずだった。


デルガだけが、息を吸えない。


炎は制御された。


だが。


そこに、熱はあるのか。


幕2 終了。

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