【幕2】家庭問題化する断罪
① 対立を作ろうとするデルガ
デルガは設計図を引き直した。
恋愛が燃えぬなら、世代を燃やせ。
若さと老成。
未来と過去。
進歩と伝統。
「世代間対立を強調せよ」
側近に命じる。
「政策提案の違いを整理しろ。言葉尻を拾え。衝突点を作れ」
さらに。
王子を板挟みにする構図。
若き婚約者。
年長のヒロイン。
「どちらを選ぶのか」
そう迫れば、空気は揺れるはずだった。
だが。
現実は、紙の上ほど単純ではなかった。
② 対話が理性的すぎる
庭園での会談。
デルガは少し離れて控える。
レイアが頭を下げる。
「リリアナ様の経験は、尊敬しております」
真っ直ぐな声。
打算がない。
リリアナは微笑む。
「若い方の未来を応援したいの」
柔らかい目。
王子が苦笑する。
「二人とも落ち着いて。私は逃げ場がない」
笑いが起きる。
軽い。
刺がない。
対立の芽は、芽吹く前に摘まれる。
これは恋愛ではない。
嫉妬ではない。
奪い合いでもない。
保護者と、後輩。
世代を超えた穏やかな関係。
デルガは眉を動かさない。
だが内心で理解する。
(火種が、湿っている)
③ 公開討論(失敗)
予定された断罪式は、名称を変えられた。
「公開討論」
その時点で、炎は半分消えていた。
壇上。
罪状が読み上げられる。
・礼節の不足
・政治姿勢の相違
・世代間価値観の差
言葉は整っている。
だが重くない。
レイアは静かに答える。
「配慮が足りなかった点は、学びといたします」
リリアナも頷く。
「私も若い方の柔軟さを見習います」
王子がまとめる。
「互いに理解し合えれば、それで良い」
拍手。
だが熱はない。
観衆の声がぽつりと落ちる。
「家族会議か?」
「昼ドラにもならん」
小さな笑い。
怒号は出ない。
石も飛ばない。
ため息だけが、広場に広がる。
断罪は成立しない。
代わりに、和解が成立する。
それは美しい。
だが。
物語ではない。
④ デルガの観察
壇上から群衆を見る。
顔は真顔。
期待していた激情はない。
若者同士ならどうだ。
衝動。
誤解。
言葉の行き違い。
涙。
怒り。
「あなたを許せない」
「それでも好きだ」
そうした未熟さが、物語を動かす。
だが今回は。
理性。
譲歩。
話し合い。
成熟した着地。
正しい。
だが燃えない。
デルガは静かに理解する。
断罪が、家庭問題に堕ちた。
世代の衝突ではなく、
ただの調整。
ただの合意形成。
それは政治だ。
娯楽ではない。
彼の胸に、冷たい感覚が広がる。
(若さが、ない)
若さがぶつからなければ、
火花は散らない。
火花がなければ、
炎は生まれない。
断罪は、炎の儀式だったはずだ。
だが今、壇上にあるのは、
穏やかな和解だけだった。
静かな拍手が、ゆっくりと消えていく。
デルガは初めて、
断罪が“家庭問題”に変質する瞬間を、
目の当たりにした。




