ワクワクを取り戻そう
月から帰還して、数日後。
ケイスケは自宅のリビングで、巨大なテレビの前に座ってゲームに勤しんでいた。
元々はゲームが好きだった。ただ、最近は仕事が忙しくて遊べていなかった。
そして、歳をとると、好奇心を失ってしまうものらしい。
少し時間ができても、あまり、ゲームにワクワクしなくなっていた。
(なんか、こう、どうせこんなもんだろう、って思っちまうんだよな)
そんなことを、何気なく、隣に座るルリに話してみた。
するとルリは、少し考えてからこう言った。
「では、経験による予想能力を一部、低下させますか?」
「……は?」
「何が起きるか分からないワクワク、好奇心と子供心を取り戻せるということです」
「そんなこと、できるのか。……それ、副作用とか、大丈夫なのか?」
「一時的な調整です。いつでも、元に戻せます」
ケイスケは、少し迷ってから、頷いた。
「じゃあ、頼む」
「かしこまりました」
ルリが、ケイスケの額にそっと指先を触れた。ほんの、一瞬。
それだけだった。
「……ん?」
特に、何も変わった気がしない。
そう思いながら、コントローラーを握り直し、ゲームを再開した、その瞬間だった。
画面が変わり、BGMが変わった。
ただそれだけで……
(な、何だこの感覚)
心臓が、どくんと鳴った。
(ワクワクだ、そう、確かにワクワクする)
ワクワクが、止まらない。
効果は、テキメンだった。
宝箱を開ける度に、レベルが上がるたびに、スキルポイントを得る度に、次はどうしよう? というワクワクが止まらない。
新しいキャラクターが出てくるたびに、次の展開が気になって仕方がない。
止め時が見当たらない。
学生の頃、オンラインゲームを徹夜で遊び倒した、あの時に近い。
ケイスケは、夢中になって、画面に食い入った。
気づけば、窓の外が、白み始めていた。
「……あなた。もう、朝ですよ」
ルリの声で、ようやく、我に返る。
「うそだろ。いつの間に」
ケイスケは、目を丸くして、時計を見た。




