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小学二年生、8歳。家族を守るためにただいま奮闘中!!  作者: いなずま


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第5話 つむ、謎の探索者になる

探索者ギルド 東京本部


「——それで、現場に到着した時には、すでにワーウルフが倒されていた、と」


「ああ」


探索者ギルドの受付で、俺は受付嬢の確認に頷いた。


「間違いない。ゲートから出てきたのはDランクモンスターのワーウルフ、一体。俺たちが着いた時には、もう倒されていた」


「討伐した人物は?」


「分からない」


「目撃者はいなかったんですか?」


「一応、襲われた姉妹がいた」


俺は現場でのことを思い出す。


高校生くらいの姉と、小学校低学年くらいの妹。


俺たちが駆けつけた時には、二人とも無事だった。


「姉の方から話は聞いた。工藤結衣。妹を庇ってワーウルフに襲われたらしい」


「工藤結衣さん……」


受付嬢がパソコンを操作する。


「ありました。今回のゲート発生に巻き込まれた方ですね」


「ああ。その子の話じゃ、襲われたところを探索者らしき人物に助けられたらしい」


「探索者らしき人物?」


「突然のことでよく見えなかったそうだ。ワーウルフを倒した後、すぐにいなくなったって話だった」


「なるほど……」


受付嬢の指が動く。


カタカタとキーボードを叩く音が続いた。


「ちなみに、妹さんは何か?」


「何か言いかけてたな」


確か——。


『つむが——』


そう言いかけたところで、姉が手を握っていた。


その後は何も言わなかった。


「ただ、小学二年生くらいの子供だ。突然ゲートが現れて、目の前にワーウルフまで出てきたんだぞ。混乱しててもおかしくない」


「そうですね」


俺も、あの子が何を言おうとしていたのかまでは気にしなかった。


まさか、


『つむが倒した』


なんて続くとは、夢にも思わなかったからだ。


「それで、討伐した探索者の確認を頼みたい」


「分かりました」


受付嬢が再びパソコンを操作する。


しばらく待つ。


「…………」


「どうだ?」


「少々お待ちください」


さらに調べる。


だが——。


「……いませんね」


「いない?」


「はい。当該時間帯、この近辺へ正式に出動した探索者は、『希望の夜明け』の皆様のみです」


「だよな」


「また、付近で活動していた登録探索者についても確認していますが……該当する人物はいません」


受付嬢が首をかしげる。


「少なくとも、ワーウルフを討伐したという報告は一件もありません」


「じゃあ、勝手に動いてた探索者か?」


「可能性としてはありますが……」


それでも妙だ。


探索者として活動する人間は、ほぼ全員が探索者ギルドへ登録している。


というより、登録しない理由がほとんどない。


ダンジョンへの入場。


素材の売却。


依頼の受注。


探索者ランクの認定。


ギルドに登録しておけば、探索者として活動するために必要なものはほとんど揃う。


逆に——。


「未登録で探索者やってる奴なんて、後ろめたい事情がある奴くらいだろ?」


「基本的には、そうですね」


受付嬢も否定しなかった。


身元を知られたくない。


法律を守る気がない。


ギルドに活動記録を残したくない。


そういった事情を抱えている者が、ギルドを通さず活動することはある。


当然、まともな探索者から歓迎される存在ではない。


「でも、今回は一般人を助けてる」


「そうなんですよね……」


そこが引っかかる。


俺は受付台に置かれた報告書を見る。


「しかも、ワーウルフは一撃だった」


「一撃……」


受付嬢の表情が少し変わった。


「ああ。何度も戦ったような痕跡がない。少なくとも俺たちが確認した限りじゃ、一発だ」


Dランクモンスター、ワーウルフ。


Dランク探索者が一人で相手をするなら、決して油断できるモンスターじゃない。


それを一撃。


「Cランク以上でしょうか」


「普通に考えればな」


だが、Cランク以上ともなれば人数は一気に少なくなる。


誰がどこを拠点にしているのか、ギルド側もある程度把握している。


そんな探索者が偶然居合わせて、人を助けて、名乗りもせずに消えた。


「……分からんな」


「ですね……」


受付嬢も困ったように画面を見る。


「ひとまず、未確認の探索者による討伐として記録しておきます。該当する探索者が判明した場合は、改めて確認を」


「頼む」


「それと、ワーウルフの素材については?」


「手つかずだ」


「……討伐したのに?」


「ああ」


これも妙だった。


Dランクモンスターの素材なら、捨てていくようなものじゃない。


なのに何一つ持っていかず、姿を消した。


「人助けだけして帰った……?」


受付嬢が呟く。


「随分変わった野良探索者ですね」


「だな」


結局、その日はそれ以上何も分からなかった。


ただ一つ。


正体不明の探索者が、偶然ゲートの近くに居合わせた姉妹を助け、Dランクモンスターのワーウルフを一撃で討伐した。


ギルドには、そう記録されることになった。


——もちろん。


そんな探索者は、最初から存在していない。


ワーウルフを倒した本人は、その頃にはもう、姉と手を繋いで家へ帰っていた。


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