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小学二年生、8歳。家族を守るためにただいま奮闘中!!  作者: いなずま


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第12話 つむ、ありがとうを渡す

次の日。


朝から、つむはそわそわが止まらなかった。


「…………」


机の引き出しを開ける。


ちゃんとある。


お母さんの腕輪。


お姉ちゃんのお守り。


「……えへへ」


閉める。


でも、少しすると——。


「…………」


また開ける。


ちゃんとある。


「紬ー! 朝ご飯できてるよー!」


「はーい!」


お母さんの声に、つむは慌てて引き出しを閉めた。


今日は渡す。


絶対渡す。


そう決めてる。


でも——。


「…………」


なんて言って渡そう。


昨日は簡単だと思ってた。


「いつもありがとう」って言って、渡す。


それだけなのに、ほんとに渡すとなるとなんだか恥ずかしい。


「つむー?」


「いまいくー!」


とりあえず、ご飯!


———


学校から帰ってきても、まだ渡せなかった。


お母さんはお仕事。


お姉ちゃんはいる。


先にお姉ちゃんだけに渡すこともできる。


でも——。


「ふたりいっしょがいい」


三日間、二人のことを考えながら作った。


だから、一緒に渡したい。


つむはお姉ちゃんと宿題をして、テレビを見て、お母さんが帰るのを待った。


そして——。


がちゃっ。


玄関から音がした。


「ただいまー……」


「あっ!」


お母さん!


つむは立ち上がって玄関まで走る。


「おかえりー!」


「ただいま、紬」


お母さんが笑って、つむの頭を撫でる。


「今日も元気だった?」


「うん!」


お母さんは靴を脱ぐと、


「はぁー……今日も疲れたぁ」


肩をとんとん叩いた。


「…………」


つむは、その姿をじっと見る。


やっぱり作ってよかった。


「お母さん、ご飯どうする?」


リビングからお姉ちゃんの声。


「先に着替えてくるー」


「分かった」


お母さんがお部屋へ向かう。


つむはその後ろ姿を見て——。


「……よし」


今だ。


つむは自分たちの部屋へ走った。


「紬?」


お姉ちゃんの声が聞こえたけど、止まらない。


部屋へ走り、机の引き出しを開ける。


奥に隠していた二つのプレゼント。


ちゃんとある。


つむは大事に持った。


なんだか、どきどきする。


「だいじょうぶ」


ちゃんと言う。


ありがとうって。


———


お母さんが着替えてリビングへ戻ってきた。


「紬、さっき急に走っていったけど、どうしたの?」


「えっと……」


つむは背中に手を隠して、お母さんとお姉ちゃんの前に立つ。


「紬?」


二人がこっちを見る。


どきどきする。


二人に渡すだけなのに。


「どうしたの?」


お姉ちゃんが心配そうに聞く。


「えっとね……」


言わなきゃ。


道徳の時間に考えた。


つむは、いっぱい助けてもらってる。


お母さんにも。


お姉ちゃんにも。


毎日ずっと。


だから——。


「おかあさん、おねぇちゃん」


「うん?」


「なに?」


「いつも……」


声が小さくなっちゃう。


もう一回。


「いつも、ありがと!」


背中に隠していた手を前に出した。


「これ、ぷれぜんと!」


右手には腕輪。


左手にはお守り。


「…………」


「…………」


あれ?


二人とも何も言わない。


「……おかあさん?」


お母さんは腕輪を見たまま固まっていた。


お姉ちゃんも。


「……いらない?」


急に不安になる。


もっと上手に作ったほうがよかった?


お花、変だった?


「ち、違う!」


お母さんが慌てて首を横に振る。


「違うよ。そうじゃなくて……」


腕輪を受け取った。


「これ……紬が作ったの?」


「うん!」


「自分で?」


「うん! 三日かかった!」


「三日も……」


「ないしょで作ったの!」


お姉ちゃんが目を見開く。


「……もしかして、三日前に私が部屋に入った時」


「!」


ばれた!


「なんもしてないって言ってたじゃん」


「あ、あれは……」


どうしよう。


うそついちゃった。


「……ないしょだったから」


小さな声で言う。


怒られるかな。


でも、お姉ちゃんは怒らなかった。


「そっか……」


優しい声だった。


つむは、お姉ちゃんにもお守りを渡す。


「こっちは、おねぇちゃん」


「ありがとう」


お姉ちゃんが両手で受け取った。


「お母さんのはね、うでわ!」


「うん」


「お花もつむが作った!」


「……うん」


「おかあさん、いつもおしごとでつかれてるから」


つむはお母さんを見る。


「げんきでいてほしいの」


「…………」


「ずっとげんきでいてね」


お母さんの目から、ぽろっと何かが落ちた。


「……あれ?」


涙。


「おかあさん?」


「ごめんね。大丈夫」


お母さんが笑う。


でも、また涙が落ちる。


「かなしい?」


「違うよ」


「でも、ないてるよ?」


「嬉しいの」


「うれしいのに、なくの?」


「うん。大人はね、嬉しくても泣く時があるんだよ」


「……へんなの」


「ほんとだね」


泣きながら笑ってる。


やっぱり変なの。


「つけていい?」


「うん!」


お母さんが腕輪をつける。


「どう?」


「……すごく可愛い」


「ほんと!?」


「うん。お母さんの宝物にする」


「たからもの!」


つむの胸が、ぽかぽかする。


作ってよかった。


すっごく嬉しい。


「それでね!」


今度はお姉ちゃん。


「おねぇちゃんのは、おまもり!」


「うん」


「からだをまもってくれるの!」


「……身体を?」


「うん!」


お姉ちゃんがお守りを見る。


「なんでこれにしたの?」


「だって……」


つむは、この前のことを思い出した。


怖いのが出てきて。


お姉ちゃんが、つむの前に立って。


守ってくれて。


それで倒れた。


呼んでも起きなかった。


胸が、ぎゅってなる。


「紬?」


「このまえ……」


つむは、お姉ちゃんの服を掴んだ。


「おねぇちゃん、つむのことまもってくれたから」


「…………」


「だから、こんどはこれが、おねぇちゃんのことまもってくれるの」


お姉ちゃんの顔を見る。


「もう、いたいいたいしないでね」


「……紬」


「ずっといっしょにいてね」


お姉ちゃんの顔が、くしゃっとなった。


「……うん」


ぎゅっ。


「わっ」


急に抱きしめられた。


「おねぇちゃん?」


「うん……」


「どうしたの?」


「なんでもない」


なんでもないって言ってるけど、つむの肩がちょっとだけ濡れた。


「おねぇちゃんもないてる?」


「……泣いてない」


「ないてるよ?」


「泣いてない」


「でも——」


「泣いてないの!」


「むぅ」


絶対泣いてる。


でも、お姉ちゃんがぎゅっとしてくるから、つむもぎゅっとした。


すると——。


「……紬」


お母さんの声。


「なぁに?」


「お母さんも混ぜて」


「いいよ!」


お母さんも来た。


ぎゅっ。


三人でぎゅーってする。


「くるしい!」


「ごめんごめん」


そう言いながら、お母さんは離してくれない。


お姉ちゃんも。


「ふたりとも、ぎゅーしすぎ!」


「今日くらいいいじゃん」


「えぇー!」


でも。


「…………えへへ」


嫌じゃない。


むしろ、嬉しい。


つむも二人に手を回した。


「だいすき!」


お母さんの腕には、つむが作った腕輪。


お姉ちゃんの手には、つむが作ったお守り。


三日間頑張って作った。


ちゃんと、ありがとうも言えた。


二人とも喜んでくれた。


それだけで、胸の中がいっぱいになった。


———


「……あれ?」


しばらくして、お母さんが声を上げた。


「どうしたの?」


「なんか……さっきまでより身体が楽な気がして」


「ほんと!?」


つむはぱっと顔を上げる。


「うん。気のせいかな……」


「きのせいじゃないよ!」


「え?」


「だって、それ、ほんとにげんきになれるうでわだもん!」


「…………」


お母さんが止まった。


お姉ちゃんも。


「……本当に?」


「うん!」


つむは大きく頷く。


だって、そうぞうさんと一緒に作った。


ちゃんと、お母さんが元気になれるように。


「つむがね、おかあさんがずっとげんきでいられますようにって作ったの!」


「…………」


お母さんが、自分の腕についた腕輪を見る。


さっきまでとは違う顔。


「紬」


「なぁに?」


「これ……ただの腕輪じゃないの?」


「ただのじゃないよ?」


「……どういうこと?」


「げんきになれるの!」


つむには、それ以上うまく説明できない。


だって、元気になれる腕輪は、元気になれる腕輪だから。


「…………」


お母さんは、今度はお姉ちゃんを見る。


「結衣?」


「…………」


お姉ちゃんも、お母さんを見る。


それから、つむを見る。


なんだろう。


二人とも急に難しい顔してる。


「おねぇちゃん?」


「……うん」


お姉ちゃんが小さく息を吐いた。


「お母さん」


「なに?」


「……実は、話してなかったことがあるの」


「話してなかったこと?」


「うん」


さっきまで笑っていたお母さんの顔が、少しだけ真面目になる。


つむは二人を交互に見る。


「?」


なんのお話だろう。


お姉ちゃんは、つむの方を一度だけ見てから——。


「この前、私たちがモンスターに襲われた時のことなんだけど」


そこで言葉を止めた。


つむは、お母さんの腕輪を見る。


ちゃんとつけてくれてる。


お姉ちゃんのお守りも、ちゃんと持ってくれてる。


二人とも喜んでくれた。


それだけで、つむは嬉しい。


でも、なんだかこれから、大事なお話が始まるみたいだった。


「お母さん、実は——」


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