第10話 つむ、ありがとうを作りたい
つむは、目の前に出ている文字を見ながら考える。
お母さんには、げんきになれるうでわ。
お姉ちゃんには、からだをまもってくれるおまもり。
どっちも、きっといい。
「そうぞうさん」
《——》
「これ、ぽいんとで作ったら、ぽんってできる?」
ぴこんっ。
《可能です》
やっぱり。
昨日のピコピコハンマーとかお薬みたいにポイントを使えば、すぐに作れるみたい。
「…………」
つむは机に頬杖をついた。
それでいいのかな。
お母さんとお姉ちゃんに、ありがとうしたい。
だからプレゼントする。
でも、そうぞうさんにお願いして、ぽんって出てきたものを渡すだけ。
「……なんかちがう」
ぴこんっ。
《質問を確認しました》
「ちがうの」
つむは一生懸命考えながら話す。
「つむが、ありがとうってしたいの」
《——》
「でも、そうぞうさんがぜんぶ作ったら……」
なんて言えばいいんだろう。
「つむ、なにもしてない」
ぴこんっ。
《意図を確認しました》
《贈答品に製作者本人の労力を含めることを希望しますか?》
「どういうこと?」
「そうぞうさん、かんたんにして」
ぴこんっ。
《表現を簡略化します》
《つむが自分で作りたい?》
「うん!」
それなら分かる!
つむはすぐに頷いた。
「つむが作って、ありがとうしたい!」
《確認しました》
少しすると、新しい文字が現れた。
《提案があります》
「ていあん……」
読める。
でも、なんだっけ。
《おすすめがあります》
「おお!」
それなら分かる!
《生産ポイントを使用し、素材のみを《創造》します》
《その素材を使用し、贈答品本体を工藤紬の手で製作することが可能です》
「…………」
また難しい。
すぐ、そうぞうさんは難しい言葉を使うんだから。
つむはじーっと文字を見る。
読めるけど、よく分からない。
でも——。
「ざいりょうだけ……そうぞうさんが作る?」
《はい》
「それで、ぷれぜんとは、つむが作る?」
《はい》
「おおー!」
それならいい!
全部ぽんって作ってもらうんじゃない。
作るためのものだけ、そうぞうさんにお願いする。
そのあとは、つむが自分で作る。
「それにする!」
ぴこんっ。
《承認しました》
《製作対象を確認》
《対象①:げんきになれるうでわ》
《対象②:からだをまもるおまもり》
《専用素材を生成します》
「せんよう……?」
また知らない言葉。
でも、その下に出てきたものは知っていた。
《特殊紙粘土(紬専用)》
「かみねんど!」
知ってる!
図工でも使ったことがある。
こねこねして、いろんな形にできるやつ。
「これで作れるの?」
《可能です》
「やった!」
これならつむにもできる!
すると、また文字が増えた。
《特殊紙粘土(紬専用)》
《工藤紬が製作に使用した場合のみ、完成品へ《創造》による特殊効果を付与できます》
「…………」
読める。
読めるけど——。
「そうぞうさん」
《——》
「むずかしい」
《表現を簡略化します》
《つむがこれを使って作ると、ふしぎな力がつきます》
「おおー!」
分かった!
「じゃあ、げんきになれるうでわ作ったら、おかあさんげんきになる?」
《はい》
「おねぇちゃんのおまもり作ったら、まもってくれる?」
《はい》
「すごい!」
紙粘土なのに!
つむはまだ作ってもいない紙粘土を見つめて、わくわくする。
「これください!」
《必要生産ポイントを算出します》
少し待つ。
《特殊紙粘土(紬専用)》
《必要生産ポイント:20》
「にじゅう……」
今は五十二。
二十使ったら——。
「ごじゅうにから、にじゅう……」
つむは指を使いながら考える。
五十二から十を取ったら四十二。
もう十を取ったら——。
「さんじゅうに!」
まだいっぱいある!
「だいじょうぶ!」
《生産しますか?》
「する!」
《生産ポイントを20消費します》
《現在 : 32》
ぽんっ。
「わっ!」
机の上に、小さな袋が現れた。
中には真っ白な紙粘土が入っている。
つむは袋を持ち上げた。
触ってみる。
ふにふに。
「ほんとに、かみねんどだ……」
これで、お母さんの腕輪と、お姉ちゃんのお守りを作る。
「よーし!」
さっそく袋を開けようとした——その時。
ぱさっ。
「?」
何かが机の上に落ちた。
「なに?」
見ると、二枚の紙が置かれていた。
さっきまでなかったのに。
「……?」
つむは一枚を拾う。
上には大きな文字が書いてある。
《げんきになれるうでわ つくりかた》
「!」
もう一枚も急いで見る。
《からだをまもるおまもり つくりかた》
「おおー!」
作り方だ!
「そうぞうさん!」
《——》
「これもくれるの?」
返事はない。
でも、紙粘土と一緒に出てきたんだから、たぶんそう。
つむは一枚目の紙を見る。
どれくらい紙粘土を使うのか。
どうやって形を作るのか。
どこをくっつけるのか。
絵もいっぱい描いてある。
二枚目も同じ。
難しそうなところには、絵と一緒に説明までついている。
「おおー……」
これなら、つむにも作れそう!
「そうぞうさん、ありがと!」
《——》
お返事はない。
でも、作り方までくれたんだから、きっと聞こえてる。
たぶん!
つむは紙粘土と二枚の紙を机に並べた。
こっちがお母さんの腕輪。
こっちがお姉ちゃんのお守り。
どっちも、つむが作る。
「ぜったい、かわいくする!」
どんなのにしようかな。
お母さんのは、お花をつけたらかわいいかも。
お姉ちゃんのは——。
「おねぇちゃん、なにがすきだっけ……」
かわいいのがいい。
でも、お姉ちゃんが好きなのがいい。
それから、ちゃんと守ってくれるのがいい。
「むぅ……」
考えることがいっぱいだ。
でも、なんだか楽しい。
二人にはないしょ。
つむが作って、びっくりさせる。
それで渡す時に——。
「いつもありがとうって言う!」
うん。それがいい!
つむは紙粘土の袋を両手で持って、にこっと笑った。
「よーし、つくるぞー!」




