第7話:13回目の世界、ついに理想の物件と出会う
こんにちは、小橋零です。
13回目の世界に召喚された今回、神様からいただいたチートは「無敵の店舗経営権」と「神級農園パスポート」でした。最高じゃねえか! さっそく王都の一等地にレンガ造りの物件を手に入れ、裏庭に秒速で神田を作って極上の新米を炊き上げました。これで今度こそ理想のおにぎり屋が開業できる……と思った矢先、なぜか邪神の眷属が店に特攻してくるフラグが立ちました。おにぎりの具にするにはちょっとデカすぎる気がしますが、第7話、開幕です!
光の粒子が収まった瞬間、零が降り立ったのは、前回の荒涼とした神殿でも危険な魔王城の前でもなく、石畳が美しく整備された活気あふれる王都のメインストリートだった。
「……おや? 今回は街中スタートか」
戸惑う零の目の前で、通行人たちが「なんだあいつ?」「変な服を着ているぞ」と物珍しそうにヒソヒソと囁いている。
「ふむ、まずは今回のチート『無敵の店舗経営権』と『神級農園パスポート』を確認するか」
零がポケットを探ると、手ざわりの良い上質な羊皮紙の権利書と、黄金色に輝く小さなカードが転がり出てきた。
どちらも魔力が込められており、いかにも胡散臭いが効果は抜群らしかった。
「よし、これなら役所の面倒な許可証も、悪質な地上げ屋の絡みも全部スルーできるな」
さっそく王都の不動産屋へと足を運んだ零は、その圧倒的な金貨の山と「神級農園パスポート」を提示した。不動産屋の店主は、カードを見た瞬間に白目を剥いてひっくり返り、王都の一等地にある「かつて有名だったが曰く付きで長年空き家になっていた三階建てのレンガ造り店舗」を、驚異の破格で譲り渡してくれた。
「へえ、中は思ったより広いじゃねえか。一階はカウンターとテーブル席、二階は調理場、三階は住居スペース、か」
埃をかぶったフロアに、空間収納から取り出した掃除道具を放り投げ、零は鼻歌交じりに雑巾がけを始めた。
ステータスがカンストしているおかげで、城をも崩壊させる腕力での雑巾がけは音速を超え、わずか三秒で店内がピカピカに磨き上げられた。
「よし、次は『神級農園パスポート』の出番だな」
店鋪の裏庭にカードをかざして地面に突き立てると、ゴゴゴ……と大地が小さく震え、瞬く間に最高品質の稲作に最適な「神田」が出現した。さらに、どこからともなく清らかな霊水が湧き出し、黄金色の穂が風に揺られてみるみる育っていく。
「これなら米の仕入れに困ることは一生ねえな。あとは秘伝の塩をどうするかだが……まあ、前回の世界で回収した分がまだ山ほどあるか」
竈に火を入れ、神田から収穫したばかりの新米を極上の霊水で炊き上げる。フタを開けた瞬間、あたり一面に言葉を失うほど芳醇で甘い香りが立ち込めた。
「完璧だ。これぞプロの究極おにぎりだわ」
自分へのご褒美にと、さっそく一つ塩むすびを握って口に運ぶ。口の中で米粒がホロリとほどけ、極上の甘みと塩気が絶妙なハーモニーを奏でた。思わず零が「うまっ……」と感動に浸ったその時だった。
店の扉が勢いよくガタッと開き、慌てた様子の見知らぬ少女が転がり込んできた。
「た、大変です! すぐ裏の路地に、凶暴化した五柱の邪神の眷属が迷い込んできました! このままだと街が潰されちゃいます!」
おにぎりを片手に持ったまま、零はフリーズした。
「……は? 営業開始前のオープン準備中に、わざわざ向こうから具材が歩いてきたってことか?」
第7話をお読みいただきありがとうございます!
ついに念願の店舗を手に入れ、おにぎり屋としての第一歩を踏み出した零。しかし、平穏を許さないのがこのマルチバース異世界ライフの鉄則のようです。裏庭にやってきた「五柱の邪神の眷属」を相手に、おにぎりを片持ったプロ勇者はいったいどんな塩梅で撃退するのでしょうか。
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