第4話:12回目の魔王城、そして秒速の「お疲れ様です」
こんにちは、小橋零です。
12回目の世界に強制送還された怒りをそのままぶつけるべく、魔王ガザルドの城へ突撃してきました。全身アダマンタイトの鎧で固めた最強の魔王様らしいですが、あいにくこちらはステータス全カンストのプロ勇者です。大理石の破片を軽く投げたら星になっていきました。これで今回のノルマも無事クリア……と思いきや、この後、またとんでもないトラブルが待ち受けている気がしてなりません。第4話、開幕です!
後書き
「――というわけで、魔界の絶対君主・狂王ガザルドの城へようこそ、虫けらども!」
漆黒の尖塔がそびえ立つ魔王城の謁見の間。
紫色の怪しげな魔力光が渦巻く中、全身を光り輝く伝説の金属・アダマンタイトの鎧で固めた巨漢の魔王ガザルドが、玉座から立ち上がり、お約束の大見得を切っていた。
その足元には、この世界の精鋭だったはずの聖騎士たちがピクリとも動かずに転がっている。
「ふはは! 我が絶対防御の鎧は、いかなる聖剣の斬撃も、神聖魔法の極みも一切受け付けない! 絶望に震え――」
「あ、すいません。話の途中で悪いんですけど、ちょっと急いでるんで」
「……は?」
ガザルドが気色ばんで顔を歪めた瞬間、目の前に現れたのは、神殿からひょいと持ち出してきた「そこそこの大理石の柱(の破片)」を右手に、なぜか片手でおにぎりをモグモグと食べている一人の黒髪の青年だった。
もちろん、小橋零である。
「き、貴様……どこから入ってきた!? なぜ私の結界が反応しない……!」
「いや、外の雑魚どもは秒で気絶させたし、結界とか正直よく分かんないんで。それより、このおにぎり美味いな。前回の世界でもらった塩加減が絶妙だわ」
「なっ……! 我を舐めるなァッ! 死ねい!」
ガザルドが激昂し、地割れを起こすほどの踏み込みから、すべてを粉砕する渾身の魔王拳を零の顔面へと叩き込んだ。
――ゴンッ!! と、凄まじい衝撃音が謁見の間に響き渡る。
ガザルドは「勝った!」と確信の笑みを浮かべた。しかし、次の瞬間、彼の表情は恐怖に染まった。
零の顔面にはかすり傷一つついていない。それどころか、零は眉間にしわを寄せ、「ん、なんか今、蚊に刺されたか?」と首を傾げただけだった。
「ば、馬K……! なぜだ! アダマンタイトの拳が痛まないどころか、私の腕の骨が……ぎゃあぁぁぁっ!?」
ガザルドの右腕が、自らの強靭な拳の反動によってグニャリと不自然な方向へ曲がり、悲鳴が城内にこだました。
「だから、最初から言ってるでしょ。ステータスがカンストしてるから、物理法則とかそういうの超越してんのよ。お前のそのガチガチの鎧も、俺の持ってる大理石の破片の前には豆腐みたいなもんだって」
零はため息をつきながら、右手で持っていた大理石の破片を、まるでピンボールの球でも弾くかのように、ごく軽いモーションでガザルドの胸元へと投げつけた。
シュッ――! と空気の引き裂かれる音がしたかと思うと、音速を超えた大理石の破片は、ガザルドの絶対防御の鎧をいとも簡単に見事に貫通し、背後の城壁ごと彼を遥か彼方の地平線へと吹き飛ばしていった。
「……あ、れ?」
魔王軍の幹部たちが、開いた口が塞がらないといった様子でその光景を呆然と眺めている。
魔王様が、星屑のように夜空へ消えていったのだが。戦闘開始から、まだ三十秒も経っていない。
「よし、これで今回のノルマクリアね。女神様との約束通り、この世界の復興は勝手にやってくれ。俺はさっそく次の街で物件探しだ」
零はパッと手を払い、何食わぬ顔で歩き出す。
背後では、魔王軍の幹部たちが「い、一体何者なんだあの人間は……」「もう降伏するしかないだろ……」とパニックに陥りながら崩れ落ちていた。
プロ勇者・小橋零の12回目の魔王討伐は、あまりにも事務的かつ秒速で幕を閉じたのだった。
第4話をお読みいただきありがとうございます!
秒速で魔王を宇宙の彼方へ飛ばしてしまった零ですが、強すぎる主人公の悲哀(?)はまだまだ続きます。サクサクと敵をなぎ倒していく爽快感と、本人の「早くおにぎり屋をやりたい」というシュールな目的のギャップを楽しんでいただければ幸いです。
果たして、零は無事に自分の店を持ってスローライフを満喫できるのか、それとも13回目の召喚の足音が聞こえてしまうのか。続きが気になる方は、ぜひブックマークや感想、評価をお願いします! 次回、第5話もお楽しみに!




