↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生、11回目です。〜プロ勇者は今日も神様の手違いにため息をつく〜  作者: 凪塩 未来


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/38

第30話:最終決戦、神々の王座と「究極の塩むすび」

こんにちは、小橋零です。

神界の第二回戦、黄金の神狼フェンリル・ゴールドを我が店の「豚の角煮&卵黄おにぎり」で完全に懐柔し、連勝を飾りました。神界の料理神たちは今やすっかり青息吐息ですが、いよいよ迎えるのは最終第三回戦。相手はなんと神界の最高神自らが指名した「最強の刺客」らしいです。第二章第30話、開幕です!

「第二回戦までの勝負、人間界代表『おにぎり処・零』の連勝! これより、全神界の運命を賭けた最終第三回戦を開始する――ッ!」


審判神の震え声が、静まり返った巨大競技場にこだました。

観客席の神々は、もはや最初の傲慢さを完全に失い、ゴクッと唾を飲み込みながら零たちの調理台を凝視している。神獣フェンリルさえも一撃で堕とした人間のおにぎりに対し、神界が最後に用意した切り札とは一体何なのか。


レグナスを支えながら、最高神の使いである別の神官神が厳かに一歩前へ出た。

『最終第三回戦のお題は――【神をも超越する「創世の塩むすび」】だ!』


そのお題が告げられた瞬間、元・天才美食王のリュシアンヌが「創世の……塩むすび……っ!?」と絶句した。

「そんな馬鹿な……! プレーン飯でもなく、具材でごまかすわけでもなく、再び『塩むすび』で勝負しろというのか!? しかも『創世の』って……一体どんな米と塩を使えばいいんだ……!」


ゼクシードも、険しい表情で腕を組みながら分析した。

「ふむ……神界の歴史において、世界を創ったとされる『始源の神代米』と、天界の果てに眠る『星屑の岩塩』を使うつもりですな。人間が扱えば、その膨大な次元魔力で肉体が耐えきれず消滅しかねない危険な素材です」


神々の側は、すでに最終兵器としてその「始源の神代米」と「星屑の岩塩」を黄金の盆に載せて準備していた。それを扱うのは、神界で最も古い歴史を持つ「創世の料理神・アポロン」である。彼は冷徹な瞳で零を見据え、ふっと鼻で笑った。


『人間よ、貴様の塩むすびがまぐれでないなら、この神界の起源そのものを内包する米と塩で受けてみよ。この素材を扱えるのは神の領域の者だけだ。一歩間違えば、貴様の存在そのものが消え去るぞ』


アポロンの言葉に、ルルは「そんな……危険すぎます、零さん!」と青ざめて零の裾を引っ張った。

しかし、零は相変わらずポケットに片手を突っ込んだまま、大あくびを一つかみ込んだ。


「危険、ねえ……」

零はゆっくりと竈の前に歩み寄り、じっとその「始源の神代米」とやらを見下ろした。

「神界の起源だの、世界を創っただの、大層な名前がついてるがよ……結局のところ、米は米、塩は塩だろ」


零はふっと不敵な笑みを浮かべると、背筋をスッと伸ばした。

その瞬間、彼の全ステータス・カンストの魔力が一気に解放され、周囲の空間がぐにゃりと歪むほどの圧倒的なプレッシャーが競技場全体を包み込んだ。


「ルル、竈の薪を最大に。ゼクシード、空間の歪みを完璧に抑え込め。リュシアンヌ、俺の手元に一分の狂いも生じさせるな」

「「「了解です、師匠(主)!」」」


零は、神界が用意した「始源の神代米」と、我が店が誇る『黄金こまち』、そして先日のバクバク魔獣の件で手に入った原種を、鮮やかな手際で完璧な黄金比率へとブレンドした。

そして、竈の火入れ。

パチパチと音を立てて燃え盛る炎の中で、米はまるで宇宙の誕生のようにまばゆい光を放ちながら、最高潮の炊き上がりを迎えた。


プワァァァァッ!!!


競技場全体が、これまでのどの瞬間よりも神聖で、かつ温かい、無限の旨味を含んだアロマに包まれた。

観客席の神々が、その香りを嗅いだだけで次々と膝をつき、圧倒的な感動に震え始める。


零は両手を水で清め、その神代米をふわりとすくい取った。

手のひらの上で、米粒一つ一つが零の全愛情と料理人としてのプライドに応えるように呼吸する。最後に、天界の岩塩ではなく、零が王都の裏庭でひたむきに育て上げた「特製の自家製岩塩」をパラリと指先で散らした。


一回、二回、三回。

完璧な重心、完璧な空気の含有量。

コトン。

白磁の皿の上に置かれたその「創世の塩むすび」は、もはや一つの小宇宙を宿しているかのように、静かに、しかし力強く輝いていた。


「お待たせ。これが、俺の『塩むすび』だ」


審判神が震える手でそれを持ち上げ、創世の料理神アポロンの前に運んだ。

アポロンは、目の前にある塩むすびを見た瞬間、なぜか全身の力が抜け落ちるのを覚えた。彼は震える手でそれを持ち上げ、ゆっくりと口に運んだ――。


瞬間。


アポロンの瞳に、宇宙が生まれた日の光と、何億年もの間、泥臭く生き続ける人間たちの温かい食卓の風景が走馬灯のように駆け巡った。


「あ……あぁ……」


アポロンは膝から崩れ落ち、その美しい顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしながら、天を仰いで叫んだ。


「私の……私の負けだ……! 私たちは『神界の起源』などという大層な肩書に囚われ、本当に大切な『食べる者の心を満たす温もり』を忘れていた……! この塩むすびの前には、どんな神の奇跡も色褪せる……!!」


ドサッ。

アポロンが完全に気絶したのを確認し、審判神は震える声を振り絞って叫んだ。


「た、第三回戦……勝者、人間界代表『おにぎり処・零』……ッ!! これにて、全勝による人間界側の完全勝利を宣言する――っ!!」


割れんばかりの歓声……ではなく、あまりの圧倒的な敗北感に、神々の誰もが言葉を失い、ただ静かにひれ伏していた。


こうして、神界を巻き込んだ前代未聞の料理バトルは、おにぎり屋の店主・小橋零の圧倒的な勝利によって幕を閉じたのだった。


第二章、完結――!

そして、平穏を手に入れた『おにぎり処・零』は、今日も最高の笑顔とおにぎり客で、最高に美味しく繁盛していく。

第30話、そして第二章最後までお読みいただきありがとうございました!

神界の起源をも凌駕する「創世の塩むすび」で見事に全勝を飾り、平穏と最強の権利を手に入れた零たち。最強主人公ののんびりスローライフ(とおにぎり作り)は、これからも続いていきます。温かい応援を本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。