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異世界転生、11回目です。〜プロ勇者は今日も神様の手違いにため息をつく〜  作者: 凪塩 未来


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第29話:神狼フェンリルを堕とした禁断の旨味――第二回戦、決着

こんにちは、小橋零です。

神界の第二回戦の相手は、万物を食らい尽くす黄金の神狼「フェンリル・ゴールド」です。神々の嫌がらせのような無理難題に対し、我が店が用意した「最強の具材」とは果たして何なのか? 神獣の本能を丸ごとキャッチする伝説のおにぎり作戦、いよいよ大詰めです! 第二章第29話、開幕です!

「さあ、どうする人間! 黄金の神狼フェンリル・ゴールドを満足させる具材など、この神界のどこを探しても存在せん!」


主席料理神レグナスが勝ち誇ったように叫ぶと、観客席の神々も「そうだそうだ! 神獣様の舌は天界のネクターと幻の魔獣肉以外受け付けないのだ!」「あんな下等な米屋にできるわけがない!」と口々にやじを飛ばした。


その中央で、フェンリル・ゴールドは巨大な前足を地面にドスリと突き立て、低く威嚇するようなうなり声を上げていた。金色の瞳が、獲物を狙うように零をじっと見据えている。


しかし、零は全く慌てる様子もなく、むしろ「ふーん、なるほどねぇ」と楽しそうに鼻を鳴らした。

「神聖なネクターだの高級魔獣肉だの、お高くとまったものばかり食わされてるから、そういう顔つきになるんだよ。動物ってのはな、本能で『本当に美味い脂と塩気』を求めてるのさ」


零はクーラーボックスから、いかにも怪しげで、かつ香ばしいオーラを放つ「あるもの」を取り出した。

それをみた元・天才美食王リュシアンヌが「ひっ……! ま、まさかあれは……!」と目を見開き、ゼクシードが「ふふ、これぞまさに反則スレスレの必殺技ですな」とクスリと笑った。


「よし、いくぞ!」


零は竈の火力を一気に調整し、炊き立ての『黄金こまち』をふんわりと大きめにすくい上げた。

その中心に、惜しげもなく、いや、暴力的なまでに詰め込んだのは――

直火で香ばしく炙られ、特製の甘辛いタレと脂がジュワッと染み出した、分厚い「特製・豚の角煮」の塊を細かく刻んだものだった。さらに隠し味として、ピリリとアクセントを利かせた「卵黄の醤油漬け」をトロリと忍ばせる。


「「「おおお……っ!」」」

ルルとリュシアンヌ、そしてゼクシードが、そのあまりにも背徳的で、あまりにも美味そうなビジュアルに思わず息を呑んだ。


零は一分の隙もない手際で、その爆弾のような具材を包み込み、巨大でずっしりとした「ガッツリ系・肉味噌卵黄おにぎり」を一つだけ握り上げた。仕上げに、パリッとした極上の岩塩をパラリと振る。


ドスン、と置かれたそのおにぎりは、神界の空気すらジューシーな香りで満たしてしまうほどの圧倒的な存在感を放っていた。


「おい、フェンリル。いくら神獣様だか知らねえが、これを食ってから文句を言えよ」


零がそのおにぎりを片手でひょいと持ち、フェンリル・ゴールドのほうへとゆっくり歩み寄った。

観客席の神々が「ば、馬鹿な! 神獣様にそんな泥臭い肉の塊を……噛み殺されるぞ!」と悲鳴を上げる。


フェンリル・ゴールドは、鼻をクンクンと激しく動かした。

その金色の瞳が、信じられないものを見るようにカッと見開かれる。神界のいかなる高級料理もスルーしてきたその鼻腔を、人間の作った豚の角煮と醤油、そして極上の米が織りなす「究極の野性的な旨味」が直撃したのだ。


ガウッ……!? とフェンリルが低く唸り声を漏らし、巨大な鼻先を零の手元にぐっと近づけた。


「ほらよ」


零がそのおにぎりを差し出した瞬間――。

パクリッ! と、神狼フェンリルは一飲みでその巨大なおにぎりを丸ごと口に放り込んだ。


競技場全体が、息を止めてその場を見守った。

一秒。二秒。三秒――。


瞬間!


ゴオオオオオッ!! と、フェンリルの全身から金色と紅蓮の闘気が爆発的に噴き上がった。

その巨大な身体がビクンと震え、神狼は天に向かって――「オオォォーーーンッ!!!」と、これまでにないほど歓喜に満ちた遠吠えを轟かせた!


『な……なんだと……!? あのフェンリル様が、あんな下等な(に見える)肉おにぎりにひれ伏している……!?』

『嘘だろ……! 神獣様の好みに完璧にマッチしただと……!?』


フェンリル・ゴールドは、嬉しさのあまり巨大なしっぽをブンブンとヘリコプターのように振り回し、零の足元にピタリとすり寄ってきた。まるで「もっとくれ! お代わりをくれ!」と言わんばかりの甘えた瞳で見上げてくる。


零はふっと笑い、その大きな頭を軽くポンポンと撫でた。

「おっ、分かるか。美味い飯の前じゃ、神も獣も関係ねえよな」


主席料理神レグナスは膝からガクッと崩れ落ち、「ば、馬鹿な……神獣フェンリルが人間に懐いただと……? そんなの反則だぁぁぁーーっ!」と絶叫して再び白目を剥いて気絶した。


観客席の神々が絶句し、静まり返る中、審判神の震える声が響き渡った。

「第二回戦……勝者、人間界代表『おにぎり処・零』……ッ!!」


神々の度肝を抜き、神獣すらも完全懐柔した伝説の肉おにぎり対決。

ついに勝利を収めた零たちの前に、いよいよ最終決戦の扉が開かれようとしていた――!

第29話をお読みいただきありがとうございます!

神狼フェンリルを相手に、零が繰り出したのはまさかのガッツリ系・豚の角煮&卵黄おにぎり! 神獣すらも秒速で堕としたこの最強の組み合わせ、次はいよいよ最終決戦へ。神界を巻き込んだおにぎりバトルの結末やいかに!? 次回もお楽しみに!

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