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異世界転生、11回目です。〜プロ勇者は今日も神様の手違いにため息をつく〜  作者: 凪塩 未来


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第27話:神々の度肝を抜く一粒! 第一回戦、開帳

こんにちは、小橋零です。

神界の巨大競技場で行われている【神聖・究極のお米コンテスト】。第一回戦のお題は、ごまかしのきかない「究極のプレーン飯」です。神界のプライドを背負った料理神たちが高級な神聖香辛料や魔力オーブンで意気込む中、我が店はいつも通りの竈と、最高峰の米と塩だけで勝負に挑みます。神様たちの度肝を抜く瞬間、いよいよ開幕です! 第二章第27話、スタート!

「――制限時間、開始っ!」


神界の審判神が高らかに告げた瞬間、競技場は一斉に慌ただしい熱気に包まれた。

周囲の調理台に陣取る神界の料理神たちは、さすがに最高峰の腕前を誇るだけあり、次々と神業のような手際を見せている。


『見てみろ、あの主席料理神レグナスの手際を! 神界の幻の穀物「星屑キヌア」を、月の雫で蒸し上げ、天界のオーロラネクターで香りづけしているぞ!』

『なんて美しく、そして高貴なプレーン飯だ……! これぞ神々の食べるにふさわしい究極の飯だわ!』


観客席の神々から割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こる。

その一方で、零たちの調理台の周りは、ただひたすらに静かだった。


パチパチ、と薪が竈の中で心地よい音を立てる。

大釜の中では、『黄金こまち』と『宇宙神代米』のブレンドが、最高の水分量を保ちながらふっくらと、まるで生き物のように呼吸を始めていた。


「師匠……! 蒸らしの時間はあと三十秒です!」

リュシアンヌが額の汗を拭いながら、真剣なまなざしで砂時計を見つめている。

「おう、分かってる。ゼクシード、例の仕込みはいいな?」

「ふっ、いつでも完璧ですよ、主(あるじ)。この空間魔力で、炊き立ての香りを一滴たりとも逃がさず包み込んであります」


ゼクシードがフッと微笑み、指先を小さく弾いた。

瞬間、零たちの調理台の周囲だけ、まるで時が止まったかのようにピタリと空気が澄みわたり、米の持つ極上の甘い香りが純度100%のまま凝縮された。


「……よし。蓋を開ける」


零がずしりと重い大釜の蓋をスッと持ち上げた。

瞬間――!


プワァァァァッ!!!


それまで競技場を支配していた、ありとあらゆる高級香辛料やオーロラネクターの香りなど、まるで初めから存在していなかったかのように一瞬で吹き飛ぶほどの、圧倒的で圧倒的な「究極の白米の香り」が、巨大競技場全体を飲み込んだ。


「なっ……なんだ、この香りは……!?」

「ただの米を炊いた匂いだと……? なぜ、これほどまでに魂を揺さぶられる……っ!」


観客席の神々が、一斉にハッと息を呑んで立ち上がった。

審査員席で腕を組んでいた主席料理神レグナスも、目を見張り、ガタリと椅子から腰を浮かす。


零はまったく動じない。素早く両手を清らかな霊水で湿らせ、絶妙な塩を指先に纏わせる。

一回、二回、三回。

無駄な力が一切入っていない、まるで芸術の領域に達した手さばきで、炊き立ての輝くお米をふわりと包み込むように、完璧な「塩むすび」を一個だけ握り上げた。


カトン。

白い陶器の皿の上に置かれたその塩むすびは、神界の照明を浴びて、まるで星屑のようにキラキラとまばゆい光を放っていた。


「……お待たせ。うちの『プレーン飯』だ」


零が淡々と言い放つと、審判神が震える足取りでその皿を回収し、主席料理神レグナスの前へと運んだ。


レグナスは目の前に置かれたただ一つの塩むすびを凝視した。

ソースもない。飾り気もない。あるのは、完璧な三角形に結ばれた白飯と、うっすらと纏った塩の結晶だけ。


「ふ、ふん……! いくら香りがよかろうと、所詮は人間の食べる下等な炭水化物の塊にすぎん! 見せてもらおうか、その味とやらを……!」


レグナスは震える手で塩むすびを掴み、その一口を大きく口に運んだ――。


静寂。


競技場全体の音が、完全に消え去った。

レグナスの動きが、ピタリとピタッと糸の切れた人形のように硬直する。


「あ……あ……」


彼の目から、大粒の神の涙がポロポロとこぼれ落ちた。

次の瞬間、レグナスの全身からまばゆい光の奔流が噴き出し、彼は天に向かって叫んだ。


「う、うまぁぁぁぁーーっ!!! なんだこれわぁぁぁーーっ!? 米の一粒一粒が私の舌の上で歌い踊り、キリッとした塩気がその甘みを極限まで引き立てている……! 私がこれまで何万年もかけて研究してきた神界の美食の歴史が、この一握りの塩むすびの足元にも及ばないだと……!? うまーーいっ!! 美味すぎるぅぅぅーーっ!!!」


ドサッ。

主席料理神レグナスは、あまりの美味さに耐え切れず、そのまま白目を剥いて気絶してしまった。


観客席の神々が「あのレグナス様が秒速で陥落したぞ……!?」「馬鹿な、あんなシンプルな飯で……!」と、この日一番の絶叫と大パニックに包まれる。


零はポケットに手を突っ込み、冷ややかに、しかしどこか誇らしげにふっと笑ってみせた。


「言っただろ。料理ってのは、素材の声を一番聞いてやった奴が勝つんだよ」


第一回戦、人間界の『おにぎり処・零』の完全勝利――!

神界の度肝を抜いた伝説の塩むすびは、次なる第二回戦へと進むのだった!

第27話をお読みいただきありがとうございます!

神界の主席料理神レグナスを相手に、零の塩むすびが圧倒的な美味さで秒速撃破するスカッとした展開でした。神様たちの度肝を抜いたこの勝利、次回の第二回戦では一体どんな強敵や難題が待ち受けているのか? どうぞお楽しみに!

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