第26話:神界の厨房へ! 異世界出張おにぎり作戦
こんにちは、小橋零です。
システム管理の神様に泣きつかれ、神界で開催される【神聖・究極のお米コンテスト】に参加することになってしまいました。負ければ店ごと神界へ強制移転というブラックな条件付きですが、勝てば「真・絶対不可侵の権利」と全次元の食材が永久無料。となれば、やることは一つです。神々の料理人どもに、究極の塩むすびを叩き込んでやりますよ! 第二章第26話、開幕です!
数日後の早朝。
『おにぎり処・零』の裏庭には、いつもと違う異様な緊張感が漂っていた。
竈の前で、零は気合十分の面持ちで『黄金こまち』と宇宙神代米のブレンド比率を最終調整している。その脇では、元・天才美食王のリュシアンヌが「師匠、霊水の温度は完璧に整えております!」と目を輝かせ、元・次元の魔神ゼクシードが空間魔力で特製のお盆を磨き上げている。そして看板娘のルルは、最高級の海苔が湿気ないように専用の魔導ケースを確認していた。
「おい、お前ら。気合が入ってるのはいいが、今回はただの出張営業じゃねえぞ。敵は神界の料理神だ。どんなくだらねえ嫌がらせや、意味不明な審査基準が飛んでくるか分かったもんじゃねえからな」
零がそう釘を刺すと、三人は「「「はいっ!」」」と力強く返事をした。
そこに、例の「システム管理の神様」が、ビクビクしながら空間の裂け目から顔を出した。
「あ、あの……零くん、そろそろ出発の時間なんだが……。神界のコンテスト会場、みんな君たちの到着を首を長くして待ってるよ(※主に審査員の料理神たちがボコボコにしてやろうと待ち構えてる)」
「ふん、首を長くして待ってろってなら、ちょうどいい。うちの最高のおにぎりを喉に詰まらせてや暇はないからな」
零は重い木箱を軽々と肩に担ぎ、従業員たちを引き連れて、神界へと通じる次元の扉へと堂々と足を踏み入れた。
一瞬の眩い光ののち、零たちの目の前に広がったのは――まるで純白大理石と星屑で造られたような、あまりにも荘厳で、あまりにも広大な神界の巨大競技場だった。
その中央には、黄金の調理台がずらりと並び、観客席には何千柱もの神々がザワザワと見物を決め込んでいる。
『おお……! あの人間が、神界の秘宝を冒涜したという噂の下等な塩むすび屋か!』
『ふん、所詮は炭水化物を丸めただけの素人が、我ら高尚な料理神に勝てるわけがないわ!』
神々の冷ややかなやじが飛び交う中、競技場の最前列の審査員席には、白銀のローブを纏った厳めしい顔つきの「主席料理神・レグナス」が腕を組んで座っていた。その背後には、世界中の高級食材を使った料理がズラリと並んでいる。
「ふん、よくぞ逃げ出さずに来たものだな、人間の店主よ。我が神界の料理神たちの前で、貴様のその泥臭いおにぎりとやらがどれほど無力か、思い知らせてやろう」
レグナスが鼻で笑ったのを合図に、コンテストのルールが上空のスクリーンに大々的に映し出された。
『第一回戦の課題は――【神々の胃袋を鷲掴みにする、究極のプレーン飯】!』
そのお題を見た瞬間、リュシアンヌが「なっ……! プレーン飯だと……!? 肉やソースをごまかせない、米の真価が丸裸になる最も過酷な課題じゃないか!」と青ざめた。
しかし、零はまったく動じなかった。むしろ、フッと余裕の笑みを浮かべる。
「プレーン飯ねえ……。米と塩だけで勝負しろってか。上等じゃねえか。それこそ、俺が毎日やってる基本中の基本だろ」
零は調理台の前に立ち、すっと息を吸い込んだ。
「ルル、竈の火を最大火力から中火へ。ゼクシード、霊水の追加を。リュシアンヌ、米粒の選別を急げ!」
「「「了解です!」」」
チームワークは完璧だった。
神界の料理神たちが、高級な魔力オーブンや神聖な香辛料を取り出してごそごそと準備を進める中、零はただ静かに、竈の前に腰を据えた。
『黄金こまち』と『宇宙神代米』の黄金ブレンド。一粒一粒に込められた大地の恵みと、全ステータスを注ぎ込んだ完璧な火入れ。
周囲の神々が「あいつ、ただの竈で何を……?」とざわめく中、零は両手を軽く水で湿らせた。
「見せてやるよ。神様が束になっても敵わない、人間界の『魂の塩むすび』の味をな!」
第二章第26話、神界の厨房を舞台にした究極の料理対決が、いよいよ火蓋を切った!
第26話をお読みいただきありがとうございます!
ついに神界に乗り込んだ零たち。第一回戦のお題は「究極のプレーン飯」という、おにぎり屋にとってはホームグラウンドのような無慈悲な(?)課題。神々の料理神を相手に、零の塩むすびはどんな衝撃をもたらすのか? 次回の展開にご期待ください!




