第17話:第二章開幕、そして平和を脅かす「謎の巨大グルメ隕石」
こんにちは、小橋零です。
かつての神々の嫌がらせも、次元の魔神ゼクシードのアルバイト雇用も乗り越え、王都の『おにぎり処・零』は相変わらず大繁盛……といきたいところですが、平和な日常というのは往々にして、とんでもない方向からぶち壊されるものらしいです。本編第一章が完結し、いよいよ新たな騒動の幕が上がる第二章が始まります。第17話、開幕です!
雲ひとつない王都の青空の下、テラス席まで満席となった『おにぎり処・零』は、今日も朝から絶好調の活気に包まれていた。
竈からは『黄金こまち』の芳醇で甘い香りが立ち込め、カウンターの向こうでは看板娘のルルと、元・次元の魔神であるアルバイトのゼクシードが、息ぴったりのコンビネーションで次々と注文をこなしている。
「特製塩むすび三つ、豚汁のおかわり一つ入りまーす!」
「かしこまりました! ゼクシードさん、熱いのでお気をつけください!」
「はっ、任せてくれたまえルル君。この程度の配膳、かつて数多の次元を支配した私にかかれば朝飯前……おっと、本当にお盆の上に朝飯が乗っているのだから洒落にならんね」
スマートなスーツ姿で華麗に皿を運ぶゼクシードの姿は、今や王都の主婦層や貴族マダムたちの間で「あのイケメン紳士はどこの貴族?」と噂されるほどの人気スポットと化していた。
その様子を、店主である零は少し離れたカウンターの端から、温かい麦茶をすすりながら眺めていた。
「ふう……我ながら、完璧な布陣だな。これなら俺が一日くらいサボっても店は回るか」
「旦那、サボる気満々の発言はオーナーとしていかがなものかと」
皿を拭きながらゼクシードがツッコミを入れたその時だった。
突如として、王都の上空の空気がピキリと凍りついたような異様な静けさに包まれた。
「……ん?」
零が眉をひそめて空を見上げると、快晴だったはずの真昼の空の一部が、まるでガラスが割れるようにバリバリと音を立てて裂けたのだ。
「な、なんだあれ……!?」
ルルが恐怖に声を詰まらせ、テラス席で食事をしていた客たちが一斉にスプーンや箸を落とした。
空の裂け目から顔を覗かせたのは、暗黒の魔力に包まれた、尋常ならざるサイズの「巨大な隕石」だった。いや、よく見るとそれはただの岩石ではなく、あらゆる食材の匂いを吸い込みながら禍々しく輝く「超巨大な未知のグルメ隕石」だった。
『フハハハハ……! 我こそは、全宇宙の美食とグルメの理を喰らい尽くす美食魔王グラトニス! 貴様らの作る下等な米粒ごと、この星を丸ごと平らげてくれるわ!』
轟音のような魔王の咆哮が王都全体に響き渡り、人々の顔から血の気が引いていく。
「魔王……? またかよ……」
零は深々と大きな溜息をつき、頭をガリガリと掻きむしった。
せっかく『完全フリーダム・永住パス』を手に入れて、第二章はのんびりスローライフの続きをやろうと決めていた矢先である。しかも、よりによって「美食」を語る魔王が相手だというのだから、零のなかの料理人としてのプライド(と面倒くささ)が最高潮に刺激された。
「おい、ゼクシード」
「はっ、なんでしょう、旦那」
「お前、さっき『全宇宙の美食』とか聞こえたが、あれ知ってるか?」
「いえ、私の知る限り、あのような下品に巨大な隕石をグルメと称する変質者は、マルチバースのどのデータベースにも登録されていません。おそらく、新種の乱入者かと……」
「そうか。せっかくのランチタイムを邪魔してくれた上に、うちの神田の真上に落ちてきそうな勢いだな、あれ」
零はカウンターの下から、いつもの「そこそこの鉄パイプ(予備)」を取り出し、肩に担いだ。全ステータスがカンストしている彼の体内で、神級の魔力がメラメラと闘志の炎に変わっていく。
「ルル、店を頼む。ちょっと裏庭に落ちてくる不法投棄のゴミを片付けてくるからさ」
「えっ、あ、はい……! 気をつけてください、零さん!」
言うが早いか、零は店の床を軽く蹴り飛ばした。
轟ッ――! と音速を突破した衝撃波で店舗の屋根瓦がわずかに浮き上がり、零の姿は一瞬にして王都のはるか上空へと消え去った。
「あ、相変わらずの人外っぷりですね……」
ゼクシードが冷や汗を拭いながら呟く横で、ルルはぎゅっと拳を握りしめ、空の向こうを見守るのだった。
第二章の幕開けは、まさかの「宇宙規模の美食魔王」との激突。
果たして零は、この巨大グルメ隕石をどのように料理(物理)するのか――!?
第17話をお読みいただきありがとうございます!
平和な日常に突如として現れた「美食魔王グラトニス」と巨大グルメ隕石。第二章の幕開けも相変わらずマイペースすぎるプロ勇者・零の無双っぷりが全開です。次回、空の彼方で繰り広げられる「おにぎり屋の店主 vs 宇宙の美食魔王」の行方にご期待ください!




