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異世界転生、11回目です。〜プロ勇者は今日も神様の手違いにため息をつく〜  作者: 凪塩 未来


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外伝第4話:迷子の魔神、おにぎり処のアルバイトになる

こんにちは、小橋零です。

王都の騎士団長や宰相までが毎朝行列を作る我が『おにぎり処・零』ですが、平穏な日常とは裏腹に、時と場合によっては予想外のトラブル(あるいは珍客)が舞い込むものです。今回は、本編の14回目の世界で秒殺されたはずの「あの次元の魔神」が、なぜか我が店の前で途方に暮れていたという、驚愕のアルバイト面接のお話です。外伝第4話、開幕です!

午後のティータイムが過ぎ、店内の客足が少し落ち着いた頃のことだった。

裏庭から戻ってきた零がカウンターに腰を下ろし、「ふう、今日の米の消費量もすごいな」と麦茶をあおっていると、店のガラス戸がコンコンと控えめに叩かれた。


「ん? 営業時間外の看板は出しておいたはずだが……」

首をかしげながら扉を開けると、そこに立っていたのは、見覚えのある――しかし、以前の威厳ある姿からは想像もつかないほどやつれ果てた、シルクのスーツを着た男だった。

整えられていたはずのオールバックの髪はボサボサで、両目の下には見事なクマができている。


「あ……あの……小橋零様、でいらっしゃいますでしょうか……?」

消え入りそうな声でそう尋ねてきたのは、かつて「次元を喰らう魔神」と恐れられたゼクシードその人だった。


零は思わず持っていた湯飲みを取り落としそうになり、ジト目で目の前の男を上から下まで観察した。

「……は? お前、たしか14回目の世界で、俺がそこらのクリスタル片で宇宙の彼方に飛ばした……いや、粉々に砕いたはずのゼクシードだな? なんでこんなところにいるんだよ」


ゼクシードはガクガクと全身を震わせ、店の前でその場に土下座せんばかりの勢いで頭を下げた。

「お、おっしゃる通りでございます! あの後、貴様に一撃で消滅させられた余波で、私の存在確率がマルチバースの狭間に弾き飛ばされまして……! 気がついたら、なぜかあの忌々しい『完全フリーダム・永住パス』の座標エラーのせいで、この王都の路地裏に叩き落とされていたのです……!」


「あ、俺のパスのせいか。すまんね」

「謝罪が軽っ!? い、いや、それはいいのです! 問題なのは、私にはもう行く当ても、魔王軍としてのシマも、次元を喰らうための胃袋のキャパシティすらも残されていないということでして……!」


ゼクシードはハンカチで目頭を押さえながら、ポロポロと涙をこぼした。かつての絶対的な魔神の面影は微塵もなく、完全に職を失った中年の悲壮感が漂っている。

「人間界で生きていくためには、まず戸籍と、なにより『労働』が必要だと教えられました。どうか、どうか私をこのお店で働かせていただけないでしょうか……ッ!」


「は? うちでアルバイト?」

零が呆れた声を上げると、裏からルルがひょっこり顔を出し、「えっ、新しい従業員ですか?」と興味津々な顔でゼクシードを覗き込んだ。


「待て待て、ルル。こいつは一応、次元を喰らうとか言ってた危険な魔神だぞ。おにぎりの具にされる側じゃなくて、こっちが食われるかもしれないだろ」

「ち、違います! 私はもう二度と暴虐の限りを尽くしません! 誓います! 実際、今の私には皿洗いくらいしか魔力を使えません!」


ゼクシード必死の訴えを聞きながら、零は腕を組んで深く考え込んだ。

確かに、連日の大繁盛でルルも零も仕込みと接客で手が回らなくなってきていたのは事実である。近衛騎士団の大量注文が入る日など、分身でもしたくなるほどの忙しさなのだ。


「……ちなみに、お前、シフトの希望は?」

「はいっ! 24時間いつでも、次元の隙間からでも馳せ参じます!」

「ブラックすぎるだろ。まあいい、試用期間の一週間、皿洗いと神田の雑草抜きからだ。時給は銀貨二枚。文句ないな?」

「か、神様仏様小橋様……! ありがとうございます……!」


こうして、かつての最強の敵・次元の魔神ゼクシードは、まさかの『おにぎり処・零』の住み込みアルバイトとして、人生の再スタートを切ることになったのである。


翌日から、ゼクシードの働きぶりは凄まじかった。

元・次元を喰らう魔神の超絶的な空間魔力コントロールにより、店の食器は一秒間に千枚のペースでピカピカに洗い上げられ、裏庭の神田の雑草はレーザー級の精密魔法で根こそぎ消し去られた。さらには、その洗練されたシルクのスーツ姿で接客を行うため、王都の貴族マダムたちの間で「あの物腰の柔らかいイケメン店員は誰?」と謎の評判を呼ぶことになったのだ。


「おや、ゼクシードくん。今日の皿洗いも完璧だな」

「はっ! 零様、本日のディナー用の霊水もすでに汲み上げておきました!」


カウンターの奥で、元魔神がキリッとした顔でテキパキと働いている姿を見ながら、零は満足そうに塩むすびを一つ頬張った。

「……まあ、人手不足が解消されたし、結果オーライってやつか」


世界を揺るがした者たちをも虜にしていく『おにぎり処・零』の伝説は、今日も今日とてシュールに、そして平和に続いていくのだった。

外伝第4話をお読みいただきありがとうございます!

かつての敵である次元の魔神が、まさかのおにぎり屋でバイトとして更生(?)していくというコミカルなエピソードを描いてみました。最強主人公の周りでは、どんな大悪党も最終的には労働の尊さに目覚めてしまうようです。外伝もいよいよ次でラスト! 次回もお楽しみに!

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