第16話:ついに開店!『おにぎり処・零』、永遠のグランドオープン
こんにちは、小橋零です。
システム管理の神様から「完全フリーダム・永住パス」を分捕り、ついに舞い戻ってきたのは、あの因縁のレンガ造り店舗でした。神様の嫌がらせも魔王の襲撃ももうおしまい! これからはただただ美味しいおにぎりを握り続ける、本当のスローライフが始まります。記念すべき第16話、そして完結編――、開幕です!
「――よし、今度こそ座標エラーなし、強制送還なし、神様の嫌がらせも一切なし、と!」
黒曜石の『完全フリーダム・永住パス』をかざし、零が新しい扉を開いた瞬間、鼻腔をくすぐってきたのは、あの懐かしくも最高に落ち着く「炊きたての新米と、ほんのり香る磯の香り」だった。
光がスッと収まると、そこにあったのは――かつて13回目の世界で手に入れ、神様のせいで一時間足らずで強制休業に追い込まれた、あの「王都の一等地に佇むレンガ造りの三階建て店舗」だった。
「おお……! まるで当時そのままじゃねえか!」
感嘆の声を上げながら店内に駆け込むと、裏庭の神田からは黄金色の稲穂が風に揺られてサラサラと音を立て、竈には最初から最高の霊水と薪がセットされていた。すべてが完璧な状態で、零の帰りを待っていたのだ。
ガタッ、と裏口のドアが軽い音を立てて開いた。
「あ、あの……! もしかして、お店を始めるんですか……?」
おそるおそる顔を出したのは、あのとき一緒に店を手伝うはずだった少女・ルルだった。彼女は目を丸くし、信じられないものを見るような顔で零を見つめている。
零は満面の笑みを浮かべ、トレードマークの白いタオルを頭にきゅっと締め直した。
「おう、ルル。待たせたな。今日からここ、『おにぎり処・零』を正式にグランドオープンするぞ!」
「えっ……でも、また突然空から光の柱が落ちてきたり、魔王がやってきたりしないんですか……?」
「安心しろ。もう二度とそういう面倒くさいイベントは発生しねえ。この黒曜石のパスがある限り、俺のライフは完全にスローライフに固定されたからな」
零は自信満々に胸を叩き、さっそく竈に火をくべた。
カンストしたステータスをほんのちょっぴり(米粒が一番美味しくなる絶妙な力加減だけに)調整し、手際よく最高級の塩むすびを握っていく。フワッ、ホロッと完璧な形にまとまったおにぎりを、真新しい木の皿にポンと置いた。
「さあ、初客だ。まずはルル、お前から食ってみろ」
「い、いいんですか……?」
ルルはおそるおそる塩むすびを両手で包み込み、大きな瞳を輝かせながら一口にかぶりついた。
瞬間――ルルの全身がビクッと跳ね、その表情が一気にパラダイスへと飛んだかのようにとろけた。
「んんーーっ!? お、美味しい……! お米が甘くて、塩の旨味がじわっと広がって……こんなの食べたことありません……!」
「だろ? うちの看板メニュー『特製・世界救済塩むすび』だ。お代は気持ちらでいいぜ」
零がふっと笑ったその時、店の外からガヤガヤと賑やかな足音が聞こえてきた。
先日助けたミラ村の農民たちや、王都の住民たち、さらにはあの近衛騎士団長までが「おい、噂の新店舗がオープンしたらしいぞ!」「おにぎり屋だってよ!」と次々に押し寄せてきたのだ。
「おっ、さっそくお客さんのご到着か」
零は包丁を置き、ニヤリと笑って表の看板をひっくり返した。
『営業中:おにぎり処・零』
戦いの日々は終わり、数々の世界を救ってきたプロ勇者・小橋零の、最高に美味くて最強に平和な「おにぎりライフ」が、今度こそ本当の意味で幕を開けたのだった。
――おしまい!
「おにぎり処・零」の物語を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
ステータス全カンストの最強主人公が、なぜか「おにぎり屋の経営」だけに執念を燃やし、世界を救いながら(ついでに秒殺しながら)ひたすらマイペースを貫くドタバタ異世界ロード、いかがでしたでしょうか。
無事に店を開けた零の作るおにぎりは、きっと今日もどこかで誰かの心と腹を満たしているはずです。またいつか、どこかの世界でお会いしましょう! 温かい応援を本当にありがとうございました!




