第15話:フリーパスの暴走、そして「どこでもない場所」での邂逅
こんにちは、小橋零です。
メカ魔王を鉄パイプで秒殺し、いざミラ村へ戻ろうとフリーパスを使ったら、まさかの「マルチバースのバグ空間」に迷い込みました。そこにはすべての元凶であるシステム管理の神様がいて、俺は最後の交渉として「完全フリーダム・永住パス」を分捕ることに成功しました。これでようやく、勝手な召喚に怯える日々から解放される……のか!? 第15話、開幕です!
「今度こそ、ミラ村の座標にジャストフィットしろよ……!」
マルチバース・フリーパスの画面を睨みつけ、震える指で決定ボタンを強く押し込んだ零。
眩い光のトンネルが彼の体を包み込み、今度こそあののどかな田園風景へ戻る――はずだった。
「……ん? なんか、景色が真っ白すぎやしないか?」
光が収まり、零が足をついた場所は、ミラ村の泥田でも王都の石畳でもなかった。
そこは床も天井も壁も存在しない、どこまでも果てしない「完全なる無の空間」。足元にはただ、薄っすらと光る幾何学模様のグリッド線だけが広がっていた。
「……は? 座標ズレどころか、マルチバースのバグ空間に迷い込んだぞおい」
慌ててフリーパスを確認すると、画面は『致命的なエラー:ユーザーの勇者適性が強すぎてシステムがフリーズしました』という非情な文字を表示して真っ黒に沈黙していた。
「おい! 嘘だろ! 高かったんだぞこのパス!」
頭を抱えて絶叫する零の背後から、突如としてシュウッと蒸気が噴き出すような音が響いた。
振り返ると、そこには見覚えのある――いや、これまでのどの世界よりも胡散臭く、全身が七色に発光している巨大な「神様らしき存在」が、ポータブルデスクに向かってコーヒーをすすりながら座っていた。
「おや? 君は……噂の『11回も召喚された挙句、フリーパスでシステムを爆破した男』、小橋零くんじゃないか」
「あ? お前、誰だ……?」
零がジト目で詰め寄ると、その七色に光る存在は「いやあ、ボクはシステム管理担当の神様でね」と気まずそうに眼鏡を押し上げた。
「君の魂に刻まれた『勇者元』のせいで、うちの自動マッチングシステムが完全にバグを起こしてしまってね。何度送還しても君の磁場が強すぎて、別の世界の魔王をワンパンで引き寄せちゃうんだよ」
「人のせいにするな! こっちはな、おにぎり屋を開きたかっただけなのに、この数日間で魔王を何匹潰したと思ってやがる!」
零の怒りはもう限界値を超えていた。ステータス全カンストのプレッシャーに耐えかねたのか、神様の額から冷や汗が滝のように流れ落ちる。
「わ、分かった! 謝るから怒らないでくれ! その代わりと言ってはなんだけど、君をもう二度と強制召喚しない『完全フリーダム・永住パス』を進呈する! だから、どうか我が管理システムをこれ以上いじめないでくれ……!」
神様が半泣きで差し出したのは、先ほどのフリーパスとは比べ物にならないほど神々しく輝く黒曜石のカードだった。
零はそのカードをジッと見つめ、大きく息を吐き出した。
「……本当に、もう二度と勝手にどっかの世界に引きずり出されないんだな?」
「誓う! 神の名にかけて、もう絶対に勝手な召喚はしない!」
「よし、その言葉忘れんなよ」
黒曜石のカードをひったくるように奪い取り、零はふんと鼻を鳴らした。
「で、このカードを使えば、俺が一番最初にいた元の世界の、あのバイト先の近くだったり、あるいは自分で決めた好きな世界に行けるんだな?」
「あ、ああ、もちろんだとも!」
零はカードを掲げ、不敵に笑ってみせた。
「なら、決まりだ。次こそは、誰にも邪魔されない場所で、最高のおにぎり屋を開いてやる――!」
物語は、次元を超えた「おにぎり最強伝説(兼スローライフ)」の本当の始まりへと向けて、新たな一歩を踏み出すのだった。
第15話をお読みいただきありがとうございます!
次々と世界を救い(物理)、ついにシステム管理の神様と直接対決(?)して最強のパスを手に入れたプロ勇者・零。めまぐるしい異世界ロードの果てに、彼がたどり着く本当の「おにぎりライフ」の行方とは一体……?
ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございます! 零のおにぎり旅の未来に、ぜひ温かい応援をよろしくお願いします!




