第13話:ミラ村の米騒動、そして伝説のおにぎりフェス
こんにちは、小橋零です。
フリーパスの誤作動で飛ばされたミラ村で、魔王軍を泥団子で秒殺し、極上の「黄金こまち」を使ったおにぎりフェスを開催しました。村人たちにも大好評で、「これぞスローライフの完成形だ!」と感動していた矢先、フリーパスが勝手にエラーを起こしてまたしても強制送還のカウントダウンが始まりました。神様、マジでいい加減にしてください! 第13話、開幕です!
「――というわけで、魔王軍の拠点ごと吹き飛ばしてきたから、今夜の米の収穫は安心してくれていいよ」
手についた泥をパパッと払いながらサラリと言ってのける零に、ミラ村の農民たちは腰を抜かしたまま固まっていた。
たった今、丘の向こうで起きた大爆発は、村の誰もが恐れていた魔王軍の駐屯地だったはずだ。
通りすがりの青年が「そこそこの泥団子」をポイッと投げただけで、跡形もなく消し飛んだのである。
「あ、あの……! あなた、一体何者なんですか……!?」
村長のおじいさんが、ガクガクと杖を震わせながら尋ねる。
零は「あ、自己紹介がまだだったな」と頭をかいた。
「プロの異世界転生者で、兼おにぎり職人の小橋零だ。よろしく」
「ぷろのいせかい……?」
誰も意味を理解できなかったが、とりあえずこの青年が恩人であることだけは全員の共通認識となった。村長は感極まった様子で零の手をガシッと掴み、涙を流した。
「お、おにいさん……! いや、勇者様! 我が村の『黄金こまち』は、あなたのおかげで今年も無事に守られました! 好きなだけ米を持っていってください!」
それを聞いた零の顔が、この旅で初めてと言っていいほどの輝きを放った。
「マジか。じゃあ遠慮なく、村の一番デカい大釜を借りる。あと、最高の塩と海苔も調達してくれ」
そこからの零の動きは、魔王討伐のときよりもはるかに素早く、そして精密だった。
神級のステータスから繰り出される超音速の米研ぎ。魔力を完璧にコントロールした絶妙な火加減による炊飯。そして、炊き立ての「黄金こまち」を、ふっくらと、しかし崩れない絶妙な力加減で三角へと握り上げていく。
瞬く間に、村の広場には幾重もの黄金色のおにぎりの山が築き上げられた。
「ふう……完璧だ。これぞ、ミラ村の米と俺の技術が奇跡の融合を果たした『究極の黄金塩むすび』だ」
一つを手に取り、ガブリとかじる。
口いっぱいに広がる芳醇な甘み、絶妙な塩気、そして米本来の力強い旨味。零は思わず「うまっ……!」と天を仰いだ。
その様子を見ていた村の子供たちや農民たちも、おそるおそるおにぎりを手に取り、口プクプクに膨らませて頬張った。
「「「……おいしーーーーっ!!!」」」
ミラ村中に歓声が響き渡る。
泥臭い農作業で疲れ果てていた農民たちの顔に、次々と満面の笑みが広がっていく。戦いや略奪に怯えていた村が、たった一つの温かいおにぎりによって、本当の平和と活気を取り戻した瞬間だった。
「どうだ、美味いだろ?」
零が満足そうに腕を組んでいると、背後から急に空間がビリビリと嫌な音を立てて歪み始めた。
「……ん?」
嫌な予感がして振り返ると、そこにはマルチバース・フリーパスの画面が勝手に浮かび上がり、エラーメッセージが点滅していた。
『警告:システム異常を検知しました。強制送還まであと5秒』
「は? ちょっと待て! まだミラ村でおにぎり配り終わってねえぞ!」
『4、3、2……』
「ふざけんなぁぁぁ! 俺のおにぎりフェスを邪魔するな――!」
ミラ村の人々が「勇者様!?」と手を伸ばす中、無情にも光の柱が零を包み込み、15回目の世界へと強制的に放り出してしまうのだった。
第13話をお読みいただきありがとうございます!
ミラ村で心温まるおにぎり交流を繰り広げた零ですが、相変わらずの強制送還体質により、再び別の世界へと連れ去られてしまいました。今度はいったいどんな世界が彼を待っているのか、そしていつになったら満足におにぎりを売り続けられるのか。
続きが気になる方は、ぜひブックマークや感想、評価をよろしくお願いします! 次回、第14話もお楽しみに!




