第12話:フリーパスの誤作動、そして「おにぎり」を巡る新たな地平
こんにちは、小橋零です。
「マルチバース・フリーパス」を使って13回目の世界へ戻るはずが、まさかのシステムエラーで「米どころミラ村」という田んぼの真ん中に放り出されました。ふざけんな! そこが「極上の米が取れる場所」だと知った瞬間、俺のなかの料理人魂(と怒り)に火がつきました。米を狙う魔王軍なんて、泥団子を投げて秒速で消滅させてやるぜ。米と平和は、俺が守る! 第12話、開幕です!
「よし、このフリーパスの座標入力を『13回目の世界・王都の店舗前』に合せてっと……これで完璧だ!」
マルチバース・フリーパスの画面を軽快にタップし、零は自信満々に決定ボタンを押した。
眩い光のトンネルを抜け、今度こそあのレンガ造りの店舗の前に降り立つ――はずだった。
「……ん? なんか空気が美味いというか、泥臭いというか……?」
目の前に広がっていたのは、王都のおしゃれな石畳でも、レンガ造りの店舗でもなかった。
どこまでも続く広大な泥田、そしてクワを持った農民たちがぽかんと口を開けてこちらを見つめている、見渡す限りの田んぼの真ん中だった。
「……は? 座標ズレた?」
焦ってフリーパスの画面を確認すると、エラーコード「404:おにぎりの具が不足しています」というふざけた文字が表示されている。
「ふざけんな! フリーパスにバグがあるじゃねえか! あの女神、後で覚えてろよ!」
ガクッと膝をつく零の背後から、泥まみれのおじさんがおそるおそる声をかけてきた。
「あ、あの……旅の人かい? ここは王国でも有数の稲作地帯、通称『米どころミラ村』だが……アンタ、どこから湧いて出たんだ?」
「米どころ……?」
零の目がピクリと動いた。
「米どころってことは、そこら中に美味い米があるのか?」
「そりゃあ、うちの村の『黄金こまち』は王都の貴族も絶賛する極上品さ。だけどよ、最近隣国の魔王軍がこの米を狙って略奪にきやがるもんで、農民たちは毎日怯えて暮らしてるのさ……」
おじさんが深々とため息をついた瞬間、零の背中にメラメラと闘志の炎が燃え上がった。
「……なるほど。米を狙うだと?」
「お、おう。だから今年はもう収穫どころじゃ――」
「米を脅かす不逞の輩は、魔王だろうが邪神だろうが、俺が許さない」
プロ勇者のスイッチが、最悪の形で入ってしまった。
おにぎりの原料である米を脅かす存在など、零にとってはこの宇宙で最も許されない「絶対に許してはいけない悪党」である。
「おじさん、その魔王軍ってのは今どこにいる?」
「え? いや、すぐそこの丘の向こうに陣取ってるが……」
「よし、ちょっと米の買い付けついでに、その軍勢を根絶やしにしてくる。場所貸してくれ」
言うが早いか、零は足元にあった「そこそこの泥団子」を手に取り、稲作地帯の空に向かって振りかぶった。
「待て若者! それただの泥団子じゃ――」
シュンッ――!
音速を軽く突破した泥団子は、丘の向こうに陣取っていた魔王軍の拠点へと直撃し、大爆発とともに軍勢ごと綺麗に消し去った。
「よし、これで米の安全は確保されたな。おじさん、この村で一番デカい釜を貸してくれ。さっそく最高のおにぎりを握ってやる」
フリーパスの誤作動により、なぜか米農家支援モードに突入したプロ勇者・零の新たな伝説(とおにぎり作り)が、泥まみれの中で幕を開けたのだった。
第12話をお読みいただきありがとうございます!
フリーパスの誤作動でまさかの稲作地帯に飛ばされた零ですが、米を守るためなら魔王軍相手でも容赦なしの最強ムーブをかましていきます。果たして、このミラ村でおにぎり屋の夢はリベンジできるのか? 次回もお楽しみに!
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