第11話:14回目の世界、次元の魔神も「おにぎり」の前では無力?
こんにちは、小橋零です。
14回目の世界で待ち構えていたのは、「次元を喰らう魔神・ゼクシード」という何やらすごくカッコいい名前のボスでした。
前回の女神から分捕った「マルチバース・フリーパス」を手に入れた俺のモチベーションは天井知らずです。邪魔をするなら、そこらのクリスタル片で秒速で宇宙の彼方に飛ばすのみ。さっさと仕事を片付けて、今度こそ13回目の世界でおにぎり屋の続きをやるぜ! 第11話、開幕です!
「――というわけで、次元を喰らう魔神・ゼクシードを倒すため、我が世界へようこそ!」
光の粒子が収まった瞬間、零の視界に飛び込んできたのは、星々が崩壊し、暗黒の虚空が広がる絶望的な空間――ではなく、なぜか高級ホテルのスイートルームのように洗練された、クリスタル製の異空間会議室だった。
中央の豪華なソファには、シルクのスーツを纏ったインテリ風の悪魔――いや、次元の魔神ゼクシードが優雅にティーカップを傾けて座っている。
「おや? 噂の異世界勇者くんかね。君を召喚するのに我が部下たちが随分と苦労したようだが――」
「あ、どうも。小橋零です。急ぎなんで、さっさと終わらせてもらっていいですか?」
零はマルチバース・フリーパスの入ったトランクケースを片手に、ソファの脇にズカズカと歩み寄り、面倒くさそうにため息をついた。
ゼクシードはティーカップをソーサーに置き、優雅な笑みをピクリと引きつらせた。
「……はて? 初対面にしては随分と余裕だな。私はこの次元そのものを胃袋に収める『次元を喰らう魔神・ゼクシード』だぞ。君のようなちっぽけな人間など、指先一つで――」
「はいはい、次元とか魔神とかもうお腹いっぱいなんすよ。こっちはさっきまで13回目の世界で、やっと手に入れたおにぎり屋を神様どものせいで強制休業させられたばかりでね。イライラゲージがマックスなんだわ」
零の殺気とも愚痴ともつかないただならぬプレッシャーに、ゼクシードの背筋に冷たいものが走った。長年の勘が「この人間に関わってはいけない」と激しく警鐘を鳴らしている。
「ま、待て。君は何者だ……? その魂の密度は、まるで百戦錬磨の……」
「プロの異世界転生者だよ。文句あるなら、そこらへんのクリスタル片でも投げるけど、どうする?」
ゼクシードが青ざめながら立ち上がろうとしたその瞬間、零は足元に転がっていたインテリア用のクリスタルオブジェを、ほんの軽いスナップで放り投げた。
シュンッ――! と空間そのものがねじ切れるような音が響き、クリスタルはゼクシードの胸元をいとも簡単に貫通した。
「……な、馬鹿な……私の絶対次元結界が……一撃で……?」
「だから最初から言ってるでしょ。ステータスがカンストしてるのよ。お前のそのオシャレな空間も、俺の前では段ボールみたいなもんだっての」
ゼクシードはガクガクと震え、次の瞬間、まるでガラス細工のように粉々に砕け散り、綺麗な光の粒子となって消滅していった。
戦闘時間、わずか五秒。次元を喰らうはずの魔神は、プロ勇者の前ではただの「邪魔な障害物」にすぎなかった。
「ふう……これで今回のノルマもクリア、っと」
零はマルチバース・フリーパスを取り出し、ボタンをポチッと押した。
「お、ちゃんと起動するじゃねえか。それじゃあ、さっそく13回目の世界へ戻って、おにぎり屋の営業を再開するとするか!」
光の渦に包まれ、零の姿は消えていった。今度こそ、彼の悲願である「おにぎり屋のスローライフ」が始まるはずだった――そう、あの時は本気で信じていたのだ。
第11話をお読みいただきありがとうございます!
圧倒的な力で次元の魔神を秒殺し、ついに手に入れた「マルチバース・フリーパス」を使って自由な移動手段を手に入れた零。これで心置きなくおにぎり屋に戻れる……と思いきや、物語はそう素直に進まないのがお約束ですね。果たして、彼は無事に元の店へと帰れるのでしょうか?
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