第10話:13回目の強制送還、そして訪れる14回目の絶望
こんにちは、小橋零です。
13回目の世界でおにぎり屋を開店したその矢先、またしても神様の強制送還ビームを食らってしまいました。せっかく作ったレンガ造りの店舗も神田もパーです。怒り心頭のまま14回目の世界に召喚された俺ですが、今回の女神からはついに悲願のアイテム「マルチバース・フリーパス」を引き出すことに成功しました。これさえあれば、いつでもどこでもおにぎり屋に帰れる! というわけで、今回もサクッと魔王を秒殺して、今度こそ理想の商売を始めてやるぜ。第10話、開幕です!
王都の上空で轟音とともに渦巻く、神々しくも禍々しい光の柱。
ルルが「きゃあぁぁ!」と悲鳴を上げてその場にしゃがみ込み、近衛騎士団長は腰を抜かしたように青ざめながら剣を取り落とした。周囲の通行人たちもパニックを起こして逃げ惑い始めている。
「……いや、待て待て待て! せっかく一等地のレンガ造り物件を仕入れて、神田で米を育てて、看板まで綺麗に掲げたのに、まだ開店から一時間も経ってねえぞ!」
零は憤慨しながら空に向かって拳を突き上げたが、容赦のない神の光はそんな抗議をまるっと無視して彼の全身を包み込んだ。
「くそっ、今度の女神にはガチで慰謝料請求してやるからな……! おにぎり処・零、一時休業ぅぅぅ――!!」
絶叫と共に零の意識は強制的にブラックアウトし、眩い光の彼方へと弾き飛ばされていった。
――そして。
「――というわけで、小橋零くん! 君を再びこの世界に召喚した!」
目の前に広がる、見慣れすぎた真っ白な大理石の神殿。
窓の外にはファンタジー感あふれるお馴染みの浮遊大陸。そして頭上で眩しく、どこか気まずそうに光る、また別の新しい女神像。
零は床に突っ伏したまま、しばらくの間ジッと動かなかった。肩が小刻みに震えている。
「……なぁ」
「ひっ……!? な、なんだか殺気を感じるが……?」
「もう何も聞かなくていいわ。どうせ魔王がいて、俺が勇者適性で引っ張られて、ステータスがカンストしてて、そこらの枝か大理石を投げたら秒で終わるんだろ?」
女神は、手元の神聖タブレットを確認するまでもなく、目の前の青年から発せられる尋常ならざるベテランのオーラに気圧されていた。
「き、君は……もしかして、過去に何度も世界を救ってきた……?」
「13回だよ、バカヤロー!! こっちはな、やっと王都の一等地に自分のおにぎり屋を建てて、新米を炊き上げたとこだったんだよ! それを何だ、お前ら神様たちは結託して俺の商売を邪魔するのが趣味なのか!?」
零がガバッと起き上がり、女神の胸ぐらを掴まんばかりの勢いで詰め寄った。
神殿の天井がびりびりと震え、神々しいはずの神界の雰囲気が一瞬でブラック企業の怒号飛び交う会議室のような空気に変わる。
「ひ、ひえぇぇっ! す、すいません! 私たちも好きで呼んでるわけじゃなくて、魂に刻まれた『勇者の元』の引き寄せ磁場が強すぎて、自動マッチングシステムが誤作動を――」
「自動マッチングシステムじゃねえよ! アプリの不具合なら今すぐデバッグしろや!」
「む、無理です! 一度刻まれた勇者適性は神界のマスターでも消去できません! ですが、その代わりといってはなんだが……!」
女神が慌てて懐から取り出したのは、これまで見たこともないほど禍々しく、かつ眩い黄金色に輝く超豪華なトランクケースだった。
「こ、これは……? また胡散臭いチートか?」
「い、いや、これは我が神界の至宝『マルチバース・フリーパス』! これを持っていれば、次に別の世界へ不当に召喚されたとき、自分の意思で元の世界や好きな世界へ自由に行き来できるようになります! だから、どうか今回の世界もサクッと救ってやってください……!」
零は目を細め、そのトランクケースと女神の顔を交互に見た。
「……本当にいつでも元の世界に戻れるんだな? おにぎり屋の続きができるんだな?」
「はい! 誓います! 神の名において!」
ふう、と零は大きく息を吐き出し、乱れた髪を掻き上げた。
「……分かった。今回だけだぞ。今回の魔王はどんなクソ野郎だ? さっさと片付けて、今度こそ完璧なおにぎり屋を営んでやる」
「あ、ありがとうございます! 今回の魔王はですね、『次元を喰らう魔神・ゼクシード』といって――」
「はいはい、次元ごと適当な石ころでぶっ飛ばせばいいんだな。行ってくるわ!」
トランクケースを空間収納に放り込み、零は14回目の世界へと、やけくそ気味に足を踏み出したのだった。
第10話をお読みいただきありがとうございます!
怒涛の勢いで14回目に突入したプロ勇者・零ですが、ついに念願の「次元移動系チート(フリーパス)」を手に入れました。これで神様の自分勝手な召喚にも対抗できる……のか? 次回、14回目の世界での大暴れ(とおにぎり屋への執念)にご期待ください!
続きが気になる方は、ぜひブックマークや感想、評価をよろしくお願いします! 次回、第11話もお楽しみに!




