クラスメイトとタコと美人
─更衣室─
運動着に着替えるため3人で更衣室まで来た。先客も何人かいるが各々談笑しているため特に干渉は無さそうだ
贅沢な事にクラスごとに更衣室が設けられているため他のクラスの人間はいない、ロッカー自体は好きなところを使えるため各々選んで着替え始める
「ディルすごいな」
着替えながらディルの身体が目に入る
かなり鍛え上げられた肉体、魔法より近接戦が本当に得意なのだろう
制服の上からだとあまり目立たないが、背中の筋肉と上腕や前腕と言った上半身の筋肉の隆起が突出している、脚の筋肉も中々のものだ
胸元は少し薄めではあるが腹筋はかなりしっかり出ている。このことから推察するに両手剣で戦うスタイルだろうか、冒険者時代に他の人の裸体を見ることはなかったため貴重な経験になる
「あまりジロジロ見られると恥ずかしいんだが」
「おっと、失礼した」
そんなにジッと見つめていたつもりはなかったが少し見すぎていたようだ
「肉体でいったら神至もすごいじゃないか」
「そうかな?」
自分の身体を見ることはあまり好きではない
至るところに傷が残っているからトレーニングウェアで胴体部分は隠しているがノンスリーブタイプのため肩から先は露出している
見える範囲だけでも獣の爪痕や銃創、刀傷にやけど痕など学生と言うには些か歴戦感が強い
「多くの戦いを乗り越えてきた歴戦の猛者って感じだ」
「そうプゴね、強そうというか強かったプゴ」
俺を挟んでディルの反対側にいるフィークスを見る
・・・なんというかデーン、ドドーン、デーンと表現する他なかったどこを見てもぷにぷにしているからなんと言えばいいか分からない
「フィークスお前体重どのくらいなんだ今」
それ聞くのかディルすごいな
「今は160キロくらいあるプゴ、これでもだいぶ痩せたプゴ」
ひ、160かすごいな、そして律儀に答えるのか
身長こそかなり高いが、それ以上にお腹周りに目がいってしまう、ぷよぷよしていてさわり心地は良さそうだと思ってしまうが体重の割に脂肪の量は少ないように感じる、本当は結構筋肉質なのではないかと思うくらいだ
話もそこそこに着替えて実技棟に向かう
学年ごとに棟が別れているため他学年とは一緒になることはまずないが棟に向かうまでの道は1本のためゆっくり行くと混雑する
何せ全学年が午後は実技だ、人の波になる事は想像に難くない
同じように早めに実技棟に向かう生徒がちらほらといる、その中に見知った顔はいない
だが向こうは違うのだろう、こちらを見て挨拶してくれる下級生と思しい子達、遠巻きにこちらを見てヒソヒソと話す同級生の子達、厄介な物を見るような目で見てくる上級生らしき人達
なんともまぁ、有名になってしまったものだ
不躾な視線は無視しながら3人で実技棟へ向かっていると入口にアンリが立っていた
「お前またやらかしたな?」
「はて?なんの事だか」
「Bクラスの3人がお前に殺されそうになったと教官室で騒いでいたぞ」
私は巻き込まれる前に逃げてきたがなと得意そうに笑っていた。逃げるなよ担任とは思ったものの俺が原因なので何も言えない
しかしディルが釈明してくれた
「さっきの件ですね、神至は悪くないですよむしろ俺たちを庇ってくれたんです」
「ほぉ、何があった」
先程食堂であった出来事をアンリに説明する
腕を組んで少し難しそうな顔をした
「人種云々などくだらない事で差別発言した上に神至に喧嘩を売るとはな、それで?加減はしたんだろうな」
「そりゃもちろん、本気だったら今頃チリも残ってないよ」
「ならいいか、お前の問題だ自分で何とかしろ」
「うい」
そう気楽に返事をする
その雰囲気を見てなのかフィークスが疑問を投げかけてきた
「そういえばだけどアンリ教官と神至くんは知り合いなんだプゴ?」
「なんだ言ってなかったのか?私とコイツは同郷で冒険者時代の同じ仲間だぞ」
「アンリ教官そんなにすごい人だったんですか」
「どういう意味だ」
ディルの発言に少しイラついたのが見て取れる、ちょっとはは隠せよと思ってしまう
「立ち振る舞いからすごい人なのは何となく分かるプゴだけど教官いつも気だるそうにしてるプゴだから」
フィークスの発言にそういう事かと呟くと納得したように、けどしまったという感じで目を閉じ額に指を当てる
「学園長のせいだ何となく分かるだろう?」
3人同時に「あぁ」となったので皆面倒臭さが分かるのだろう
「で?そのジジイはどうした」
「アレは今日来客らしくてなその対応をしてる」
ジジイがちゃんと応接するなんて珍しいな
「ソレはともかくそろそろ人が集まる中に入れ」
アンリに促され4人で実技棟へ入りEクラスの集合場所へ向かった
─実技棟Ⅱ─
もう既に何人か集まっていたようで先にいたメンバーに迎えられる
「神至くんまた問題起こしたんだって?今度はBクラスのやつら相手に、やるなら俺も混ぜてよ」
「1日1回問題起こさないと気が済まないタチなの?」
「酷い言われようだ」
「悪いのはアイツらだけど、問題に発展したのは神至の行動だからなぁ」
「ボクらはただの被害者プゴ」
先に来ていてこちらと話しているふたりは宮本 剣静くんとジャスミン・テルクスさん。宮本くんは若干童顔のイケメンだ髪を後ろに束ねた無造作なポニーテールのような髪型で身長は俺と同じくらい、木刀を常に帯刀している事から刀剣を使用した近接戦が得意そうなのが分かる
テルクスさんは長い金髪を下ろした髪型でギャルっぽい雰囲気で宮本くんより少し背が小さくスタイルの良い子だ
2人に断りを入れてから魔眼で見てどちらも呪われている事も確認する
宮本くんは闘争の呪いこれはバトルジャンキーな性質を付与するというか身体が闘争を求めるようになる物、先程の発言もそれ故のものだろう
テルクスさんの方は魔縛の呪い、名前の通り魔法を使用できなくなる呪いだ。魔術操作や魔導具を使ったりはできる、もっと上位の呪いならそれら全てを縛る事も可能だ
確認が終わると宮本くんから今日の実技についての話を振られた
「今日の実技は昨日のグループベースで組むのかい?」
「今日は呪われている組とそうじゃない組に分けて状態見て解呪していこうかと思ってるよ」
クラスメイト15名のうち9名が呪われているその1人は那美さんなので残りの8人・・・いや、7人の解呪を行おうと思っていた
「そんなに呪われてる子いるの?」
「いるよ、2人もそうだけど、ディルと迦倉さんとあと4人かな」
「そんなにいるんだ、ねぇそれならウチは今解呪できない?」
「できるけど、どうして?」
「呪いとかなんか気持ち悪いじゃん、そんな事される覚えもないし。神至くんにブサイクとか言われたくないし」
「あはは、言わないよ。非常識だと学んだばっかりだからね」
頬を搔きながらテルクスさんに答える
本人的にはあまり気にしていないと言った感じの態度だったが、この学園で魔法が使えないのにこの華奢な体だかなり苦労してきただろう
テルクスさんに手をかざし『ディスペル・カース』をかける
本当は誰にかけられたのか分かれば、そいつを叩きのめして解呪するのが1番なのだが、コレでも一応解呪はできる
ただ反動と言えば良いのだろうか、元の呪いより酷い呪いになる事がたまにある、だから那美さんの時のように重すぎる呪いに対しては、本人に直接使用すると何が起こるか分からなかったので楔の方を叩いた。まぁ近いところにいたというのも理由の一つだが
実の所やろうと思えばその反動ごと呪いを破壊できるのだが、現状そこまでのリスクを俺が負う理由がなかった、冷たいと思う人もいるかもしれないが、まだ力を使うつもりはない。というか使う場面が来ない方がいい。ここは戦場ではないのだから・・・
どちらにせよ正式な手順を踏んで解呪するのが1番良い事に変わりない
「はい、解呪出来たよテルクスさん、コレで魔法が使える様になってると思うよ」
見た感じ反動は無さそうだったので解呪できた事をテルクスさんに伝える
「マジ?今まで何やっても使えなかったのに?」
「マジマジ、試しに的作るから撃ってみる?」
「やるやる!ちょーすごいの見せてあげる」
前作ったものと同様の的を生成する
やる気いっぱいという感じで手をかざすテルクスさん
魔眼のまま様子を見ていると那美さんの時にも思ったが魔法が使えない人達の方が魔術のレベルが高い
「サンダーボール」
詠唱と共に手元にスムーズに魔力が流れているのが良く見える
量がちょっと多いが制御自体はできている、呪われる前までは魔法を使ったことがあるのだろう
発射された魔法は速度は遅いものの魔法を形成する密度は申し分ない
そのままゆっくりと接触し的が爆散する
質の割に随分と威力が高いなと思ったが、黙っていよう良い事だし何より本人が嬉しそうなのでこれで良いだろう
「おぉ、ちゃんと使えるじゃん、やった。神至くんマジありがと」
「おめでとうテルクスさん」
「良かったなジャス、ずっと魔法が使えなくて困ってたもんな」
「こんなあっさり使えるならもっと魔法の勉強ちゃんとしとけばよかったわ」
宮本くんとテルクスさんが談笑している間に、他の人達も集まりそろそろ実技が始まる時間となっていた
「また1人解呪できたか、そろそろ集まれ実技を始める」
遠巻きに見ていたのかこちらにひと声掛けたあとアンリが全体に招集をかけクラスメイトが集められる
「本日より神至が復帰するから私とコイツの2人体制で実技の指導を行う、今日はどう言ったグループ分けにするつもりだ神至」
「今日は呪われている人とそうでない人にグループを分けて進めようと思います」
その話を元にアンリも誰が呪われているのか把握しているようで呪われている人とそうでない人でグループを作ってくれた
「呪われている人は俺が見ます、他の人はアンリ教官を中心に魔術範囲の練習してください。ある程度できる人は魔法の方を練習しましょう」
考えていた内容を伝え呪われているグループの方に向くそれと同時にもう人グループはアンリと一緒に離れていく
先程解呪したテルクスさんを除いた7人がこちらのグループにいる
まずは自己紹介からしてもらう、まだ全員の名前把握出来てないからね
「じゃーそこの3人名前教えて貰っていいかな」
デイル、迦倉さん、宮本くんを除いた3人に自己紹介の方をお願いする。残りのひとりはいいや知ってるし
「じゃあ俺から不知火 雷だ、よろしく頼む。それと朝は質問攻めして悪かった」
「うん、よろしくね」
金髪で刈り上げた髪型にたくさんのピアスかなりいかつい見た目だが雰囲気は意外なほど柔らかい男の子だ
身長は俺と変わらないくらいだが骨格はあちらの方がしっかりしている感じがする
「つ、次は、わたしが・・・あの、その、クリム・レヒトです、よ、よろしく、お願いします」
「よろしくねレヒトさん」
那美さんよりもオドオドした態度で小動物の様な雰囲気を持った女の子、身長もかなり低い、丸い耳を頭の上にもっていて分類的にはハムスターのイメージが浮かぶ
「次はアタシだな、リン・ドラゴ・ウェルズだよろしくな神至」
「よろしく、ウェルズさん」
俺よりも少し高い背に抜群のスタイル堂々とした態度から胸元の主張がかなり激しい
そして何より目立つのが背中の中辺りまで伸びたアンリよりも深い紅の髪、首元にちらっと見えるこれまた紅い鱗、その事から魔族、それも竜人だと分かる。種族としてかなり強いはずなのにこのクラスにいるということは余程の呪いで弱体化してるのかもしれない
初日に見た感じ那美さんより酷い人は残り1人を除いていなかったと思うんだが・・・まぁ確認すれば分かることか
「それじゃ皆自己紹介終わったね魔眼で呪いの状態を確認するから少し近づいて貰ってもいいかな」
「あ、あの、まだ1人自己紹介してない子が、い、いると思うんだけど」
「あー、クルトはいいや知り合いだし」
レヒトさんがオドオドと声を上げてくれたが生憎とソレは元々知り合いなのだ
「クトゥ!、クトゥ!!」
抗議のつもりだろうか少し怒ったように一頭身の緑色のタコが声を掛けてくる
クルト・ルルイアス
ソレがコレの名前だ、何故ここにいるのかは知らないが学園生をやっている魔族、それもかなりの化け物だ
お前はそんなに歳じゃないだろうと言いたいところだがここにいると言うことはジジイのせいなのだろう
「お前の呪いは解くつもりないぞまた暴れられたら面倒だからな」
「クトゥ!?」
「神至コイツと知り合いだったんだな」
ディルからの言葉に知り合いも何も本気で殺し合いをした仲だ、とはさすがに言えなかった
「冒険者やってた時にちょっとね、コレに呪いかけたの俺だし」
「へぇ、面白い話じゃない、参考までにどんな呪いかけたの?」
「弱体化と一部魔法の封印と見た目の変質かな」
「3つも呪いをかけるなんて相当闇魔法が使えるのね」
闇魔法は得意な方ではあるが一番得意なのは重力魔法だ、魔法に詳しい仲間からこれは黙っといた方がいいと教わったからそういう事にしておこう
「まぁ結構得意な方だよ、ほら皆集まって、どのみちそいつ自分で解呪出来るだろから」
「クトゥ・・・」
少ししおらしそうな声を出したクルト、解呪は出来るがめんどうでやらないのだろう。まぁコレは放っておいてほかのみんなの呪いを見る
ディルは自縛の呪い
迦倉さんは反転の呪い
宮本くんは闘争の呪い
この3人は見た事があるためまだ見ていない他3人を注視する
不知火くんは弱体化の呪い
レヒトさんは萎縮の呪い
ウェルズさんは魔阻の呪い
ディル以外は全員解呪できるな、ディルもおそらく今日中に解呪出来るだろう
「それじゃ解呪していこう、解呪の前に気になる事とかある?」
「自分がどんな呪いにかかってるかは聞いておきてぇ」
「そうね確かにどんな呪いにかかってるかは知っておきたいわ、また掛けられるかもしれないし」
「それは私も気になるね〜」
真っ先に答えたのは不知火くんだ、それに同意したのはウェルズさん
先程魔眼を通して見た呪いの内容を皆に伝える
自覚がある人も今回は多かった
「呪いについて聞いた上で気になる事があるんだけどいいかな」
一通りの説明をした後に気になることがあるのか宮本くんから声がかかる
「うん、何が気になる?」
「他人の性格に影響する様な呪いって解呪した後どうなるんだ?」
「いい質問だね、基本的には呪いにかかる前の性格に戻るよ、長い期間呪いにかかってた場合はすぐには戻らないだろうけど次第に元に戻る感じだね」
「基本的にってことは例外があるのか?」
「鋭いねディル、例外もあるその呪いと元の性格との波長が合う場合は解呪しても性格は変わらない、だから急に思考が変化するって事は珍しいと思うよ」
「なるほど解呪しても性格が変わるかどうかは本人次第ってところか」
「そういう事、それじゃやってみようか」
全体まとめて『ディスペル・カース』を掛ける
この時広範囲で展開したことをすぐ後悔した
一人一人対象指定すれば面倒な奴が復活しなかったのにと
「さて、これでディル以外は解呪できたと思うんだけどどうかな」
「実感はあまりないかな」
「なんか魔力が溢れてくるわ」
「な、何か変わったんでしょうか」
「力が溢れてくる感じ俺もあるな」
「私もあんまり実感ないね〜」
「俺は解呪出来てないのか・・・」
各々反応は様々だ変化が分かりやすいのは不知火くんとウェルズさん、それからレヒトさんだろう
前者の2人は先程よりも明らかに魔力量が増えているレヒトさんは初めよりもどもりが減っていたため思ったよりも効果が現れるのが早いと思った
一方で迦倉さんと宮本くんはあまり実感が湧いていなそうだった
宮本くんの呪いは精神性に関わってくるもののため見てわかる程の変化がない、迦倉さんの方は元々何に対して反転していたのか不明なためこちらもよく分からないと言った所だ
とりあえずこのメンバーは解呪ができているのでディルには説明をしておくべきだろう
「ディルは自縛の呪いだから一瞬解呪出来てもすぐに自分で呪いを掛けてしまっているんだと思うよ」
「そんな事があるのか」
「うん、自分の中でも何か引っかかっている事があるんじゃないかな」
十中八九ティリファの事で自分を呪っていたのだろうがそれは俺でもどうにもできない『ディスペル・カース』で解呪可能なのは外部からの呪いのみ内から溢れ出てくるタイプの呪いは解呪できないのだ
俺の問いかけに思い当たるところはある様で今はいいかと納得はしていた
そのまま他のみんなに次の話をしようとすると死角から渋い声がかけられる
「広範囲でディスペル・カースを使うとはお前もかなり腑抜けた様だな」
その声に驚き全員が声の方へ向く
視線の先にいるのは短い緑色の髪に一部触手の様なものが生えた身長の高い細身でやたら顔立ちの整った女性がいる
「・・・やっちまった」
「誰?」
レヒトさんの発言も最もだいきなり知らない人が現れたら驚きもする
「クルト・ルルイアスだ。お前のお陰で復活だな」
「脳がバグる喋んなクソが」
「おやおや、酷いなこれでも私はお前の事を気に入っているのだがね」
「気にいられたかねぇんだが」
魔眼を使って見た限り戻ったのは見た目だけ、と言ってもコイツの見た目なんて自由に変えられるんだ、さして気にするほどでもないだろう
弱体化の方が解けてたら少し問題になったかもしれないが
「あの可愛いタコがこの美人で激渋ボイスなの!?」
ウェルズさんが少しショックを受けてる様子だ
勝気な性格の割に可愛いものでも好きなのだろうか?しかしあのタコ可愛かったか?
「クルクル随分と美人さんなんだね〜でも声すごいね〜」
「迦倉少女よ素直な感想ありがとう、私は見た目が自由に変えられるのでね、あのタコの姿にされるまではこの姿で活動していたのだよ」
声は変えられないのだがねと続けひとりで笑っていた
「神至の言った通りこれは脳がバグるな」
ディルの呟きにそうだろうと言いたくなるが、それよりもこのタコだ、今は落ち着いているようだがいつ暴れるか分かったもんじゃないと、警戒の目を向けているとクルトがこちらに向けて一言だけ言葉を発した
「安心したまえ、私は変わったよ」
真っ直ぐとそして確かにこちらを見る目に嘘は無さそうだった
その言葉と態度、本人の雰囲気から見てひとまず警戒を解く
呪いに掛かっている間に何かあったのだろうか
気になるところではあるがこいつとはあまり会話をしたくないので視線を切る
俺が視線を切った事でクルトはレヒトさんの方へ向かう
「クリム少女驚かせてすまなかった、君とはちゃんと話をしたくてね。タコの姿でいた私と仲良くしてくれてありがとう」
「えっ、あ、はい」
驚いた人畜無害ではあるがタコにした上で仲良くしてくれた相手がいたのか
クルトの変化に驚きつつあまり会話を聞くのも野暮だと思い、少し2人から距離を取る。あの狂気と暴力の塊が随分と大人しくなっているのだ、最も酷い時期を知っているためあの様子なら本当に大丈夫なのだろう
他のメンバーの様子を見ようと振り返ると視界の隅に実技棟に入ってきた子を見つける
もうすぐ5限が終わる時間だ遠巻きに見覚えのある青髪と黒髪から深於さんと那美さんだと分かる
午後から来るとは聞いていたがこの分なら今日は休んでしまった方が良かったのではないかと思う
先にこの後の話をしておきたいため2人から視線を戻し他のメンバーの方へ向かう
「それじゃ、みんなあっちと合流して魔法の連絡始めようか」
「そうするか」
「やってやるわ、魔力の使える私の力見せてあげる」
「俺魔法苦手なんだよなぁ」
移動しながらクルトとレヒトさんにひと声掛けて別グループに合流する
他のメンバーを合流させた後アンリと少し話す
「なんだ、ルルイアスのやつも解呪したのか」
「事故だ事故、するつもりはなかったけど姿だけ元に戻っちまった」
「そうか、やつも変わったな、随分と落ち着いたみたいじゃないか」
「俺も驚いてるよ」
元の状況を知っている故の発言だろう、それでも何となくだが俺よりも驚きは少ない様だった
クルトの話題もそこそこにアンリとこの後6限についての内容を詰めていると遅れていたふたりがやってきた
「すみません、予定より遅くなりました」
「ごめんなさい、思ったより時間がかかってしまって」
「大丈夫だ問題ない、事情も理由も把握している、大変だっただろう」
「おかげさまで何とかなりました」
魔法練習組の方を見ていたがアンリと2人の会話を聞いて俺もそちらの方を向く
ひとりは深於さんだが隣にいる美人は誰だ?
那美さんの声はしたが当の本人は見当たらず代わりに見た事のない美人が隣に立っている
腰まで伸びた黒い髪をひとつにまとめ、前髪は眉より少し下の辺りで綺麗に切りそろえられている
目鼻立ちはかなり整っていて血色も良い、髪と同色の真っ黒な瞳はこちらの視線を吸い込む様な不思議な感覚を覚える
身長は那美さんと同じくらいだが、スタイルはモデルかと思うほど出るとこは出て引っ込んでいる
パッと見の印象だけでも綺麗という他なかった
「何ボケっとしてるのよ、数日寝込んでて私たちの顔忘れちゃったの?」
「いやごめん、深於さんは分かる、隣の美人さんはどちら様?」
「私はオマケか!」
「お前がストレートに容姿を褒めるとは珍しいな」
つい、と言ったところだ普段人の容姿など気にも留めないので本当に綺麗だと思ったから口をついて出てきてしまったのだろう
少し呆けている俺にその美人から声をかけられた
「あの、門音 那美です。呪いちゃんと解けましたありがとう神至くん」
そう言った彼女はとても良い笑顔で笑っていた
前の鬱屈とした雰囲気は全くなくむしろハツラツとした元気さを感じる程だ
「あぁ、そっか完全に呪いが解かれて元の容姿に戻ったんだね。おめでとう、それからとっても綺麗だね那美さん」
俺の言葉を聞いてか那美さんの顔が真っ赤になり少し俯いてしまった
はて?何もおかしな事は言ってないと思うんだが
「相変わらず非常識ね、でも那美を褒めたのは偉いわ」
「これもダメなのかい?あとなんで上から目線なのさ」
「人前でそんなストレートに容姿を褒めるのはダメよせめて2人の時にしなさいナンパじゃないんだから、あと上から目線なのは私が那美の幼なじみだからよ」
「なるほど?」
前半は納得したが後半は理由になっていないのでは?と思う、しかし人前で容姿を褒めるのはよろしくないのか、黄泉から「女の子の容姿を褒めるのは最低限の常識だから覚えておきなさい」と言われたのはなんだったのか。先程深於さんに言われたようにタイミングの問題なのか?よく分からないな
それはともかく那美さんの呪いがしっかり解けた事にどこか安堵する自分がいた、他のみんなの時は特に何も思わなかったのに何故だろう
少し考え事に耽っていると5限の終わりを告げる予鈴が鳴った




