授業と学食と兄の過去
休み明け最初の登校
周囲の雰囲気が気だるげで少しどんよりとした雰囲気がある中、こちらに気づいた人達の雰囲気が一気に変わり、それと同時に視線が周囲から痛いほど刺さる
おおよそ試合の影響でこちらに対する認識が変わったのだろうあれだけ侮蔑の視線を向けていた人達の視線が好奇の目や羨望に近い目を投げてくる
一部はまだこちらに侮蔑の視線を向けてくる者もいるが以前より断然少なくなった
噂というものは本当に凄い速さで回るものだとある種の感心すら覚える
とはいえどちらも気分の良いものではない、足早に学園の門を抜けるとその視線はさらに加速した
あれだけの人に見られていたのだ、こうなるのも当然と言える
こちらに話しかけるか否かと押し問答のような事をしている人たちもいる
コレはコレで面倒だなぁと内心ため息をつきながらまっすぐに教室へ向かう
─Eクラス─
クラスに入るとすぐに囲まれた
「すごい流血してたけどもう大丈夫なの?」
「君の魔眼呪いも見えるんだって!?僕も呪われてたりするのかな!」
「すごい試合だったね!今日の実技は僕を担当してよ!」
「ずるいぞ、俺らが先だ!」
と他にもあるが聖徳太子でもないとこの人数は捌けないだろう
俺がクラスメイトに質問攻めされていると後頭部に衝撃が走った
「そんなところで何をやっている、邪魔だ。全員早く席に着け」
アンリが教室に来たようだった
叩かんでも良くないか?と思ったもののクラスメイト達が一斉に散って行ったので助かったと言えば助かったな
「助かった、あの数同時には捌けんから」
「そうか、とりあえず座れ」
「はい」
いつにも増して仏頂面で少し怒ってるんじゃないかと思う、また何かあったのだろうか
とはいえこれ以上殴られたくはないので大人しく席に着く
珍しく満遍なく座っているようなのでとりあえず近場に座る
先客は桃色の長い髪を先端で纏めた兎耳を持った女の子とその隣にいる茶髪でボブカットの狐耳を持った女の子だ
とりあえず近かったのでボブカットの子の隣に座る、身長は那美さんに近いが少し高いくらいだろうか
「よろしくね〜神至くん、私迦倉 稲見どうしてここに座ったの?」
隣に座った事を特に嫌悪するような感じは無く、ただ気になったと言う風に質問をしてきた
「近かったからね、早く座らないとアンリにドヤされそうで」
「なるほどね〜、君は獣人とか気にしないんだ〜」
「その辺気にする必要ある?」
「おっと、珍しい反応だ〜、私そう言うの嫌いじゃないよ〜」
間延びした話し方になんだか少しほっこりする、彼女の雰囲気による物もあるのだろうが先程の質問攻めと比較すると落ち着いていられる
どこか嬉しそうにヒョコヒョコと動く耳を尻目に前を向く
あまり話しすぎるとアンリに何言われるか分からないので会話もそこそこに教壇の方へ耳を傾ける
「本日門音と水門は午前は休みだ、午後から合流する予定だ、色々あるが各々特に気にするな、私からは以上だ、勉学に励め」
それだけ言ってホームルームは終わった
何かあったのだろうか、少し気にかかるもののコレから授業だしそちらに集中した方がいいだろう
───
魔法基礎学
今日から始まる科目で魔法への理解を深める為の内容
今回は無詠唱魔法についての練習が主たる内容だ
魔法基礎学の要点と言うより一般常識的内容だが
魔術はマナやオドを操作するもの
魔法は属性を付与し操作するもの
魔導は誰もが道具として魔法を使えるようにするもの
というのが一般常識とされる
魔法属性については
基本属性の火、水、風、土、雷
火は風に強く、水は火に強く、風は土に強く、土は雷に強く、雷は水に強いとされている
相性の相互性はこのような形になっている
ただ効率は悪いものの魔法の強さは込められる魔力の量と質によるため、一般的にこの属性はあの属性に強いとされていてもそこがひっくり返る事も多々ある
魔法について基本的な事をもうひとつ
魔法に込められる魔力量が増えれば増える程魔法は大きくなり、質が高くなればなるほど密度が高くなりより物質的な硬さが上がる
次に代表的な物は基本属性に入らない特殊属性の光と闇。それぞれが相反する関係上にある為お互いに強く弱いという性質があり、この関係性から同じ密度で練られた魔法であればお互いを打ち消し合う関係にある
つまりあの試合で俺が基礎魔法のボール系で陽門のランス系を相殺出来たのは同等の魔力量と質で魔法をぶつけていたからという事になる
そして概念属性の重力、時、空間
これらは説明が難しいので簡潔にだが、お互いが相互に干渉し合う為一概にこれといった相性が存在しない。そもそも攻撃に転じるような運用が恐ろしく難しいのだ
概念属性を行使出来る者は魔法を使う人間の中でもかなりの上級者であり、イメージが難しいだけあって使用者が圧倒的に少ない事からそういう扱いになっている
番外として錬金術や付与魔法、回復魔法に精霊魔法などが存在する。錬金術や精霊魔法の様に特殊な才能を必要とする物もあれば、回復魔法や付与魔法の様にイメージさえ出来れば、誰でも使用できる物の2種類存在する。番外の魔法はかなり種類が多い為いちいち説明ができないという少々面倒な扱いとなっている
これは魔法について詳しい仲間から聞いた話だが
火は物質の温度を司り
水は物質の形状を司り
風は物質の流れを司り
土は物質の密度を司り
雷は物質のエネルギーを司る
光は世と心を陽らし
闇は世と心を陰る
重力は時と空間を歪め
時は重力と空間を歪め
空間は時と重力を歪める
魔法についてはこの認識と理解を持っているか否かでその質が変化すると言っても過言では無いらしい、それはイメージに直結するから
例えば無詠唱で魔法を行使するにはその魔法のイメージしなくてはならないため
属性が司る物を明確に想像、構築しなければならない、それ故に無詠唱は一般的ではないとされている
こう説明されると何だか難しく感じるが無詠唱だけであれば実際にはそれほど難しいものでは無い
火であればその形をイメージし、さらにその温度や範囲まで決める。そのイメージを魔力で構築してあげれば魔法として成立する、威力を上げたければそこに流し込む魔力量と密度を調整するだけなので無詠唱が難しいと言うのは俺には少し分からなかった
実際に授業を受け、話を聴いていてもそれほど難しい内容ではない、要約してしまえばそれぞれの属性の在り方を深く理解しイメージする事で無詠唱で行使できると言った感じだ
何人か前に出て無詠唱魔法の練習をしているが今のところ上手くいっている生徒はいない
一応成績にも関わるので全員が何かしらは無詠唱で魔法を行使出来るように練習中と言ったところだった
「無詠唱って難しいよね〜、私まだ一度も上手くいかないんだよ、何かコツとかあるの〜?神至くん」
「そうだなぁイメージを作ってそれを魔力で形にするって事くらしいか言えないけどほら」
そう言って人差し指を立てる
火をイメージし指先に小さな炎を起こす
マッチの様な、吹けば消えてしまいそうな小さい火が灯る
「ずいぶんと簡単にやってくれるな〜」
「神至くんは無詠唱をどこまで扱えるのですか?」
魔法基礎学担当の黒井教官からの質問だ
人差し指を立てていた手を握り火を消し、質問に回答する
「覚えている魔法ならほぼ全て無詠唱で使えます」
「それは素晴らしい、では実技で担当させて頂いた時にでも拝見させて貰いましょう」
それだけ言うと他の生徒の元へ向かっていった
黒いローブを着てザ・魔法使いと言った風貌の人だ
Eクラスの面々にも対等に話す稀有な教官
いつもフードを深く被っているため顔はよく見えないが丸い眼鏡をかけいつもニコニコしているイメージがある人だ
「神至くんホントすごいんだね〜、私も出来るようになるかな〜?」
「コツさえ掴めばすぐに出来るようになると思うよ」
一瞬魔眼に切り替え迦倉さんを見る
呪いの核は見えるもののそれほど大きな呪いという感じはない、これであれば問題なく魔法を扱う事ができるだろう
見た感じ呪いの種類は反転の呪い、何に対しての反転なのかは分からないがこれといった問題はなさそうだ
「あの神至さん、私にも無詠唱のコツを教えて貰ってもいいでしょうか」
一度魔眼を閉じて声のした方を向く
迦倉さんを挟んで隣にいる兎耳の女の子からで、声の感じから月夜野さんだと分かる
ただこの間の実技の時と比べて少し雰囲気が柔くなった様に感じた、声に若干の申し訳なさを含んでいるように感じるのは気のせいだろうか
「いいよ、何が聞きたい?」
「神至さんの無詠唱で魔法を使う時のイメージを教えて欲しいです」
「なるほど、月夜野さんは通常の詠唱魔法は出来るよね、それを頭の中でイメージするのがいちばん早いと思うけど、今はどんなイメージでやってるんだい?」
「私は土属性が得意なので岩をイメージしているのですが中々上手くいかなくて」
「その岩の大きさとか重さとかイメージしたことはあるかな?」
「そこまではイメージしたことは無かったですね」
そういうと目を閉じ掌を上にして何かを受け取るような姿勢になる
直感的に分かる、コレは上手く行きそうだ
少しずつではあるが月夜野さんの掌から少し浮くように小さな石が形作られた
「っ!出来ました!ありがとうございます神至さん」
「お〜、ツキツキやるね〜」
「うん、いい感じに無詠唱で魔法操作出来てるね、あとはもっと大きくしたり、敵に向かって飛ばしたり出来るようになれば完璧だね」
初めて上手くいったようでかなり喜んでいる、周りの生徒たちもできると思っていなかったのかこぞって月夜野さんの周りに集まっていた
「コレは私も負けていられないね〜」
どこか嬉しそうに呟く迦倉さん、ふたりは仲が良いのだろう俺もそういう友達が欲しいなと思っていると
「神至くんずるいプゴ僕にも教えて欲しいプゴ」
「同感だな俺にも頼む」
フィークスとディルがやってきた
「OK、とりあえずふたりは魔術操作から始めようか」
「酷いプゴ!?初歩も初歩だプゴ!」
「分かっちゃいるけど中々上手くできないんだよなぁ」
フィークスはおそらく必要無いだろうがディルはまずそこからだなとひとりで納得していると予鈴がなった
「今日のところはここまでにしましょう、皆さん神至くんから実技の際に必要なことなど教わっておくと今後とても役に立つと思いますよ、それでは」
フードで表情は見えないものの、とてもにこやかにそしてしれっとこちらに仕事を投げて黒井教官はいなくなった
他の生徒が一斉に寄ってくるかと思ったがそんな感じはなかった事を少し不思議に思う
俺が少し考えているとフィークスから声がかかる
「神至くん今日はここだったプゴか」
「まぁあの位置から近かったからね」
「質問攻めにあって奥まで来る時間なかっただろうしな」
「そんなところ、じゃあ俺はディルとフィークスが座ってるところにでも移動しようかな」
「え〜、リキリキ行っちゃうの〜?」
「り、リキリキ?」
一瞬誰の事だか分からず動揺してしまった、がすぐに迦倉さんが説明してくれた
「神至くんの事だよ〜。渾名、つけられたことないの〜?」
「あぁ俺の事か。渾名では初めて呼ばれたよ。だいたい名前か苗字で呼ばれるからね」
「そっか〜初めて奪ってやったぜ〜」
随分と距離を詰めるのが早い子だなと思ったがそういう性格なのだろう
本人はのほほんとしながら話している為他人との距離をあまり気にしないのかなと思う
しかしその言い方は何か誤解を招くのではないだろうか
「プゴゴ、神至くん気に入られたプゴね」
「確かにな、まぁ何となく分かるが」
2人は何故か納得しているようだったが予鈴がなる前に移動しておきたかったので話題を変える
「まぁでも移動はしようかな、ディルに聞きたい事もあったし」
「そうなのか?なら俺が移動するぞ」
「いいの?俺はどっちでも構わないけど」
「私はもう少しリキリキとお話したいな〜」
「神至さんはしばらくお休みだったので授業について行けるか心配ですし残ったらどうです?」
みんなこの間の敵視が嘘のように優しくなっている
変化に驚いたもののコレはとても心地が良い
1人を除いてクラスメイト全員と仲良くしたい俺にとっては嬉しい誤算だ
「それならボクも移動するプゴ」
「いや、フィークスは戻れよ」
「なんでプゴ?いいじゃないプゴ、仲間はずれは酷いプゴ」
「いやさすがにお前入れて5人は狭いだろ」
「確かに〜フィーフィーは体おっきいからね〜」
「プゴ!?確かにボクは体が大きいけどそこまでじゃないプゴ」
「いやデカいぞ」
「おっきいねぇ〜」
「まぁ確かに」
「そうですね、フィークスくんは戻ってください」
誰も擁護する者はいなかった
「ピギィ!みんな酷いプゴ次の授業で不貞寝してやるプゴォ!」
そう言うとフィークスはのっしりと走って元の席に帰って行った
なんだか悪いことした気分になるな
「フィークスってあんなに面白い奴だったのか」
「去年とイメージ違うよね〜」
「そうなの?」
「去年のフィークスくんはもっと何かに追われるような焦りが見えてましたからね、今はなんだか落ち着いているように見えます」
席に戻ったフィークスを見てるとこちらに手を振ってきたので振り返す
割と気の良いやつだと思うんだが、去年とは雰囲気が違うようだ。機会があれば話を聞いてみたいな
「そういえば月夜野さん下の名前を教えてもらえるかな?まだ苗字しか聞いてなかったから」
「確かにそうでしたね、すみませんあの時は事情も知らず、あんな不躾な態度を取って」
「大丈夫気にしてないよ、悪いのは俺だしね」
「改めまして月夜野輝夜です。よろしくお願いします」
「うん、こちらこそよろしくね月夜野さん」
こうしてまた仲良くなれたと思う人が増えた
友達と言えるかは分からないが少なくとも俺はそう思っている事にしよう
─昼休み─
結局授業の合間にディルに質問は出来なかった為、フィークスがただ1人になるという可哀想な事になっただけだった
「神至くん聞きたいことは聞けたプゴ?」
「それが全く、授業中の内容の確認とか月夜野さんから教えて貰ってたら聞けなくなっちゃった」
「プゴ!?ボクはなんのためにハブられたプゴ!?」
「ハブっては無いぞ、席が小さいのが悪いだけだろ」
「それは確かにそうプゴね、それはともかく学食に行くプゴ!」
本人はあまり気にしていないようだった、いじられ役というのだろうか?冒険者の中にもいたしそういう役回りなのかなと何となく理解する
「そうだね、お腹も空いてきたし学食行ってみたかったら案内お願いするよ」
「2人はどうする?」
「私たちはいつも売店で済ませているので大丈夫ですよ」
「了解した、じゃあまた実技の時に」
「はい、そうしましょう」
「皆また後でね〜」
そこで一旦解散し学食組と売店組に別れることになった
─学食─
校舎一階の東にある大食堂ここが学食となる
休日でも解放されていて学園生であればいつでも食べに来ることが出来ると教えてもらった
外から見る分にはそこまで大きく見えないが中に入るとやはり空間魔法による拡張がされていて、中の構造としては500前後の席と外にテラス席が幾つかあると言った感じ
いち学園としてはかなり膨大な学食と言えるのだろう他を知らない為比較はできないのだが
食事の内容はファストフード店の様に電光掲示板が天井につられていて、各々食べたいものをそこから注文すると言った感じになっている
「広いね、実技棟の時も思ったけど至る所に空間魔法の拡張が入ってるのがすごいな」
「俺も去年思ったそれ、まぁとりあえず席の空きはあるみたいだし先に注文しようぜ」
「ボクが先に注文するから真似してみるといいよ」
「お願いしようかな」
そう返事をするとフィークスはいつもののっそりとした移動から想像できない俊敏さで列に並んで行った
語尾まで忘れてるし
「早くない?」
「だよな、食事の時だけあの速さで動くみたいだ、俺も一緒に学食来た時に初めて見て驚いたぞ」
ディルと話しながらフィークスの後ろに並ぶ
3人で話しながら順番を待っていたが、それほど待つ事なく順番は回って来た
「おばちゃんこんにちはプゴ、スペシャル盛り定食下さいプゴ」
「あら、フィーちゃんこんにちは、いつもいっぱい食べてくれてありがとうねぇ。はいスペシャル盛り定食」
「!?」
早い、注文を受けてから数秒と経たずにありえない量の揚げ物が積まれた定食が出てきた
ご飯は丼に山盛り、汁物も丼、揚げ物は大皿からこぼらるのではないかと言うくらいみっちり積み上げられていた
フィークスが受け取ったトレーが少し曲がっているくらいには重量がある
なんだあれはあんな料理見た事ないぞ
料理が出される早さにも驚いたがフィークスが頼んだ食事のサイズにも驚いた
「あー、驚くよなアレ」
「どっちに!?いや早さにも驚いたけど、あの量は何!?」
「学食のおばちゃん達めちゃくちゃ料理するの早いんだよ、俺も早すぎて最初は腰抜かすかと思ったよ。ちなみにあの料理に関しては俺も分からない、頼めば出てくると思うけどフィークス以外で頼んでるヤツ見た事ないぞ」
たち!?この食堂の運営してるおばちゃんたち全員がこの速さで料理を提供するのか?ソレはすごいな
しかしあの料理を頼むのはフィークスだけと言うとまたなんとも目立ちそうな・・・・いや、目立ってるな
少し周囲を見渡すと信じられない物を見るような目でフィークスを見ている人が何人もいる。当の本人は気にせず席に向かっているのがまたなんとも言えないのだが
あぁ気持ちは分かるなぁと思いつつ俺の順番が回ってきたので注文する
「日替わり定食でお願いします」
「あら、見ない顔だねぇ噂の編入生かい?はい、日替わり定食。今日の日替わりは生姜焼きだよ。それとえらい色々言われてるみたいだけど頑張りなね」
「あ、ありがとうごさいます」
話の途中で料理が出てきて少し引いてしまった
動きが全く見えなかったのだ
顔はこちらを向いていたのに気が付いたら料理が手元にある、時間系の魔法を使っているようにも見えない特殊な能力でも持ってるのではないかと思ってしまう
俺が捌けた事でディルが注文する
「おばちゃん俺も日替わりで」
「はいよ、日替わり定食ひとつね」
・・・やはり見えない、早すぎる料理の提供にドン引きしながらフィークスの待つ席に移動した
「やあ、先に食べてるプゴよ」
席に着きフィークスの方を見るとあのとんでもない量の食事をもう半分も食べきった様で飲み物を流し込んでいた
「早いなぁ」
「いつもの事だ気にしてたらキリがないぞ」
ディルの方はもう見慣れた光景のようだった
こちらも食べ進めながらディルに聞きたかったことを聞いてみる
「そういえばディル聞きたかった事なんだけど、女子寮に侵入したってホント?」
「ゲホッ!ゴホッ!聞きたかったことってそれか・・・」
タイミングが悪かったな質問に驚いたのかディルがむせ返る
「知ってるプゴ、初日の神至くんが壁にめり込んでたのふたりで運んだあとの話プゴ」
フィークスからの追い討ちディルが観念したかのように、重々しく口を開いた
「とある子を探してたんだ、ティリファ・フェリンって名前の女の子でな」
「聞いたことあるプゴ、確か今年の新入生首席の子だったプゴ?」
へぇティリファ首席だったのか初めて知ったな
「そうだ、実は俺の妹でな」
「プゴ!?そうだったプゴね、どうりで髪色とか耳とか似てたプゴね」
「数年前に村が奴隷商人に襲われて連れ去られたんだ、当時俺がいた村はかなり規模が小さくてな、珍しい髪色と獣人って事で高く売れると踏んだんだろう」
ディルが話してくれたのは村が襲われ女子供と一部の力のある獣人が攫われたという内容だった
当時はまだ子供で魔法も戦闘もろくに経験した事がなかったし、村の人たちも抵抗したものの一方的に蹂躙されたそうだ
ずっと悔しそうに拳を握りながら語っているディルを静かに見つめる、食事楽しむという雰囲気ではなくなってしまった
「そうだったプゴね」
「以降ティリファとは会ってなくてあの始業の日の挨拶ですぐに気付いた。俺の妹だって、それでいてもたっても居られなくてつい探しに行ったんだ」
「かなり辛い思いをしてきたんだね」
「あぁ、でも見つからなかった、どうしても会って一言謝りたくてな。不甲斐ない兄でごめんって」
「端末を使って連絡は───そうかアレ初期登録が同学年だけだから下級生の連絡先がないのか」
「あぁ、だから一度会って話をしたいんだが、アレだけの騒ぎを起こしたから会ってくれないんじゃないかと思うし、そもそも俺の事も覚えているかどうか・・・」
「その点は大丈夫だと思うけど」
「プゴ?どういう事プゴ?」
「ティリファは女子寮じゃなくて浮遊城郭都市リベリオンの専用寮にいるからだけど」
「!!本当か!?というか、どうしてティリファの事を?」
「だって俺寮一緒だし」
「プゴそういえば変なところのすごいところに運ばされたプゴね」
一度寮まで俺を運んでいるフィークスは覚えているようだった
「ティリファは元気なのか!?」
「うん、元気だよ大丈夫、ディルの事もちゃんと覚えてた、というか女子寮侵入の件はティリファから聞いた話だし」
「そうか、そうか・・・」
野性味のある顔が色々な表情に変化する悔しみ、焦燥、安堵、喜び、涙
嬉しそうな顔は笑った時のティリファにそっくりだ。兄妹ね、羨ましい事だ
「今日良かったらうちの寮に来る?ティリファに話したいこと沢山あるでしょ」
「あぁ、あぁ!ありがとう是非そうさせて欲しい」
心の底から嬉しそうに笑うディルを見てなんだかこちらも嬉しくなってしまう
そのまま談笑と行こうと思ったが不意に知らない声がかかる
「獣臭いないつまでいるんだ?」
「豚までいるぞこっちに臭いが移ったらどうするんだ」
「飯が不味くなる」
声の方を振り向くと見知らぬ男子生徒が3名こちらを見て笑っていた
「行こうぜ、悪いな巻き込んで」
「なんだアイツら」
「Bクラスの子達プゴ、ことある事にこちらをバカにしてくるプゴ」
いつもの事、慣れているそんな感じがした
ふたりが立ち上がり戻ろうとしているので俺も着いていく
「ねぇ君、つるむ相手は選んだ方がいいんじゃないかな、そんなヒトモドキより俺らの方がよっぽどいいと思うけどな」
「あ?」
「獣人に魔族だ巷じゃ亜人とか言われてるが人の形した何かに媚び売って楽しいのかい?」
「ディルこれ持っててくれる?」
「あぁ構わないが──っておい」
先ほどヒトモドキと言ったやつに近づく
「ほら、やっぱり僕ら──んぐぅ」
そこから先は言わせなかった
せっかくの料理を台無しにするのはしのびなかったので殴りつけることはしない、その代わりへし折らない程度に思い切り首を掴む
殺意をコイツらだけに集中し他の生徒へは影響を及ぼさない様配慮もする
少し顔を近づけ3人にのみ届く声量で言葉をぶつける
「お前ら、俺の友達に次同じ事言ってみろこの程度じゃ済まさないぞ」
それだけ言って首から手を離しディルの元へ戻る
周囲からの視線が痛いがどこか優しい視線も感じる
「ありがとう持っててくれて、行こうか」
「あ、あぁ」
少し引かれてしまっただろうか
でも後悔はない言われっぱなしは嫌いだ
言いたい事はハッキリと口にしなければ何も伝わらないから
その後、返却口へトレーを置き食堂を抜け廊下に出て更衣室へ向かう
食堂から離れたところで2人からの声がかかる
「ありがとう神至、俺らなんかのために」
「ボクからも感謝プゴ」
「やりたいようにしただけだよ」
2人からの感謝は素直に受け取れなかったが気持ちはちゃんと伝わった
あの感じからやはりまだ獣人や魔族と言った人種に対する差別は根深いのだろう
つい数年前まで奴隷制が横行していたのだ当然とも言える
とりあえずこの件はこれで終わりだ、いつまでも気分の悪いことを考えている必要はないだろう
そうして3人で移動しながら午後の実技について話をする
2人の気分の悪さを払拭するように、楽しくいられるように




