失踪と挑発と捜索と
神至くんが暴走という名の発作を起こしてから3日
私たちEクラス全体の雰囲気が落ち込んでいた
理由は2つある
1つはアレだけの出来事にも関わらず、教官と講師からの一切の説明がされなかったから
月夜野さんを筆頭に、何人か尋ねてはいるみたいだけど
何も教えてくれないと悔しそうに話しているのを聞いた
私達4人にも何度も質問に来てくれているのだけど
あの後、医務室で学園長から結界の中での事全てに緘口令を敷かれ、何も答える事が出来ていない
申し訳ないと思うのと同時に、学園長室で話を聞いた迂闊に話す事が出来ないと言っていた理由が、今ならよく分かる
確かに彼の力は危険だ、けれどそれは力その物が、と言うよりも彼の精神状態があまりにも不安定だから
そこを突いて来るような悪い人から、彼を守るためにだから迂闊に人に話す事が出来ないのだとあの日私は理解した
少し前に彼なら大丈夫だと安易に考えていた過去の自分を恥じる
力には責任が伴う。故にその在り方を違えてはならない
コレは七門全ての家に通じる戒律
力を持つものはそれを正しい事に使うべし、という掟の様なもの
ずっと分かっていたのに、性格だけで大丈夫と判断した私は愚かだったのだろう
そしてもう1つの理由は、あの日以降彼が一度も学園に来ていないという事
最後に見た、歩き去る彼の姿にみんな思う事があったのだろう
そのまま消えてしまうような、もう二度と会えない気がして
だからあの時、声が出た
止まってくれる事はなかったけど、やっぱりもう一度ちゃんと会って話をしたいと思っている
その気持ちはきっとみんなも同じはずだ
だからみんな教官や講師に尋ねて、あの日の事や彼の居場所について聞いて回っているのだろう
時間になりいつものように、アンリ教官が教室に入ってくる
足取りは少しおぼつかない様な感じがする
あの日大量に血を吐いたアンリ教官はまだ体調が戻っていない
体もまだ少しすぼんでいて、血色もいつもより少し青白い感じになっている
「ホームルームだ。席には・・・着いてるか」
アンリ教官の確認が終わるのと同時に月夜野さんが発言する
「教官、彼は───」
「諦めろ月夜野、今日も来ていない。それに一昨日話しただろう。寮にすら帰ってきていないし、連絡もつかないんだ」
そう話す教官の声は、酷く疲れていていつものような覇気がなかった
「ですが!」
「聞き分けろ、いいな?」
「はい・・・」
尚も諦めない月夜野さんに、短くけど確かな声で窘める
心配なのはお前だけではないと言い含めるような、そんな声に月夜野さんも引き下がる
「今日もいつも通りだ、ホームルームでは特に連絡事項はない・・・が、神至の事は私達も探している。おそらくだが今日中には居場所はわかるだろう。何かあれば連絡はしてやる。だからお前たちは勉学に励め、以上だ」
昨日までと違い、私たちに情報を少しだけ開示した後教室を出ていく
その後ろ姿はどこか元気がなくて、疲れが見て取れる教官も探し歩いているのだろうと何となく察しがつく
教官が居なくなった後も教室は静かなまま
各々が先程の言葉を咀嚼しているんだと思う、朝来た時よりも重苦しかった雰囲気が、少し晴れた様な気がして、みんなの気持ちが現れているように思えた
─3限・魔法技術─
魔法技術はクラス全員が揃って受ける授業
私生活に於いて、色んなところに使われている魔導具や化学技術について勉強するもの
例を挙げるとすれば蛇口型の魔導具
これは極小の魔石に火属性と水属性を付与しているもの。大気中のマナから魔力を集めて貯めて、手をかざすとお湯や水が出ると言った機能を持っている
要はその原理や内部構造について勉強する生活に即した内容になっている
その担当教官はSクラスの担任でもある天言 探と言う人
神至くんがいなくなってから、この授業だけ少し様子がおかしくなった
具体的に言えば教官から私たちへの当たりが強くなったように感じる
「もう3日も経ちますのに、まだ気持ちが沈んでいるのですか?いい加減いなくなった者に気を配る必要はないのではありませんかね?」
こちらを煽るような発言に、やる気のない態度
それを表すかのように前面の巨大モニターは黒く、何も表示していない
「あの、いい加減普通に授業をして頂けませんか?」
月夜野さんの発言、クラスのまとめ役みたいな形でいつも矢面に立ってくれる
その言葉が出てくるのも仕方ないと思う
この授業だけが、唯一あの日以降教官が何も行わないのだから
そして月夜野さんの言葉に対する返答は
「あなた方に時間を使う必要はありません。どうせ今月末の試験で2人を除いて全員にいなくなってもらいますから」
と言うものだった
その発言に驚き困惑したように反応するクラスメイト、かく言う私もかなり驚いた
「どういう意味でしょうか」
問い質すためだろうか月夜野さんが言葉を投げかける
「あら?担任から何も聞かせて貰ってないのですね、可哀想に。今回の試験に於いて我々Sクラスは七門2名と私たちのクラスから2名のトレードそしてEクラスの生徒は全員退学してもらいます」
「なんだって!?」
声を大きく上げたのはディルくんだ
その反応は当然のものだろう、私もコレには納得が行かない
「何故でしょうか」
内心驚いているはずなのに、極めて冷静に質問をする月夜野さん
その声は静かな怒りを纏っているように感じる
「理由は単純です、能力の劣る者を面倒見るほど私は暇ではありませんし。何よりクラスが1つ増えた事で我々教官側の負担も増えているのです。なのであなた方には消えていただきます」
教官とは思えぬ発言に全員が硬直し、その気持ちを露わにする
怒り、困惑、疑問と反応は様々だけどそのどれもが納得いかないという感じ
今までも、確かに扱いが酷いと感じる事はあったけど。ここまで酷い事は言われた事はない
この学園が実力を重視している事は周知の事実である。けれどコレでは一方的な通告でしかないと思えない
「文句でもありそうな雰囲気ですね。実力が足りていないのですから、この要求は当然とも思えますが?」
その言葉に全員が静かになる
確かに今学期が始まった時の私たちは最下クラスとして扱われていた
けれど今は違う
神至くんのおかげで呪いを解かれ、私と同じ様に本来の力を出せるようになった人達が多くいる
それ以外にも環境が整った事で、みんなが実技も勉強を頑張ってこの1ヶ月ちょっとでかなり進歩している
そうでなくても、先月の実技試験に於いて私達はBクラスを倒して、Sクラスより成績上は優秀だと他の教官達からも認められている
にも関わらずこの発言はあまりに理不尽であると、私は思った
加えて
「そもそも、あの様なわけの分からない生き物をこの学園に置いておくこと自体が間違いだったのです。あのような者のために用意されたクラスなど。ソレがいなくなった今、必要ありません。だからEクラスには消えていただきます」
彼を人間として見ていない、そのあまりの物言いに腹が立ち、言い返そうと腰を浮かすが
それよりも早く刺すように言葉を投げつける声が聞こえた
「はっきり言ったらどうだ?自慢の生徒が神至に負けて悔しいから、お前たちに八つ当たりしますって」
「なんですって?」
意外な事にその言葉を投げつけたのは不知火くんだった
「そうだろ?陽門のヤツが神至に負けて、先月の実技試験ではSクラスはEクラスに成績で負けている。その腹いせと考えるのが妥当だろ」
腕を組み、睨みつけるように細めた目で、挑発する様な言い方をしてる
体格も大きいしその見た目も相まってかなり威圧的に見える
その様相から誰が見ても、明らかに怒っているのだと分かる
「私がそんな事のために、あなた達に心を割いているとでも?」
「違うのか?自分の受け持つ生徒とクラス成績が、神至と俺たちに負けてプライドが傷ついたんじゃないのか?今まで大人しかったのは神至がいたからなんだろ?アイツがいたから怖かったんだろ?そうじゃ無ければ授業を放棄するなんて今まで一度もなかったんだからな」
「妄想も大概にしなさい!東雲の子飼い風情が!」
不知火くんの言葉に怒りを露わにする天言教官
その態度がどうしても図星を突かれたように見えて、少し冷ややかな視線を向けてしまう
それに対して不知火くんは態度を崩すこと無く堂々としたま言葉を返す
「怒るってことはそういう事なんだろうな。いい歳したオバサンが、いち生徒に図星突かれてキレるなんて情けないとは思わないのか」
「黙りなさい!そこまで言うのなら相手してあげましょう。どうせエキシビションで試合はするのです、その相手があなたであっても構いません」
また知らない情報が唐突に示され少し驚いてしまう
今回もまたエキシビションマッチがあるなんて聞いていない、アンリ教官からの通達はいつも通りで連絡事項はないと言っていた
もしかしてEクラスの担任だから情報の共有もちゃんとされていないのだろうか
私が憶測で物を考える内に2人の生徒が手を挙げる
「私も参加してもいいでしょうか」
「は~い私もエキシビション参加したいで〜す」
月夜野さんと迦倉さんだ
「ええ、いいでしょう。何人生徒が増えようと私は構いませんよ」
2人とも声はいつもと変わらないような感じであるものの、身を包む雰囲気が怒気を纏っている
それはきっと理不尽な発言に対する物とクラスメイトを貶す言葉に対する怒りなのだろう
「他はいないか?」
不知火くんのその言葉に応えたのはディルくんだった
「3人で十分だろ、大勢で戦ってこっちが勝ったとしても。数のせいで負けました〜なんて言われても癪だしな」
その言葉に少し笑う不知火くん
背中を押されると思ってはいなかったのかもしれない
「確かに言えてるな、じゃあこの3人で相手してやるよ天言教官。逃げるなよ」
「───っ!いいでしょうあなたたち3人が負けた時は別で要求を出しますから覚悟しなさい!」
明確な宣戦布告に顔を赤くしながら吠える天言教官
「なら、俺たちが勝ったらあんたが学園から去るんだな」
「いいでしょう。まぁ私がEクラス如きに負けることはありませんがね」
Eクラス3名と天言教官が試合をする事が決まり、怒ったままの教官は吐き捨てるように言葉を残すとそのまま教室を出ていってしまった
まだ授業中だと言うのに・・・そもそも授業の体を成していなかったため、あまり関係はない気もするけど
売り言葉に買い言葉なのかもしれない
でもこれで私たちEクラスはSクラスとの全面戦争に入ることが確定した
その事実が私たちの闘志に薪を焚べ、沈んでいた雰囲気を吹き飛ばしていく様にも思えた
「那美は参加しなくても良かったの?」
「どうして?」
「だってあなた神至のこと言われた時すごい怒ってたじゃない」
「そう、かな?」
「ええ、随分とアイツの事気に入ったのね。妬けちゃうわぁ」
よく見ているな、と素直にそう思う
もしかしたら私が思っているよりも、私の彼に対する想いは分かりやすいのかもしれない
「それは・・・そのぉ」
「分かってるわよ、まずアイツには帰ってきて貰わないとだものね」
「うん、まずはそこからだね」
私と深於ちゃんが話す中
クラスメイトたちは不知火くんの周りに集まり話をしていた
もう授業なんて無いような状態だったので、出歩いていたとしても咎める者はいない
「ナイスだったぜ不知火。やるなお前」
「ヌイヌイ頑張ろうね!私も頑張るよ〜!」
「よろしくお願いします不知火くん」
「お、おう・・・」
こんな風に囲まれるなんて思ってもいなかったので、少し照れ臭くなりながらも返事をする
初めは碌に授業もせず傲慢な態度を取っていた天言に対する不満から出た言葉だった
けれどこの間の一件で神至が想像に大変な思いをしているのだと分かった
今までずっとなんか気だるげだなと思っていた態度も色んな物を抱えているからなんだと察しがついた
あの時の叫ぶ神至の声がまだ耳に残っている
心を裂くようなそんな悲しい声がまだ消えてくれない
あの時俺は見るだけだった
講師の人達が結界を張るその外側を傍観するだけ
その時ようやく俺は後悔した、自分の発言を
面倒臭いヤツと言ったこと、それ自体は事実だったのかもしれない
けれど俺が言った事はアイツの心を傷をつけたのではないか、そんな風に考えることがある
さっきの天言の言葉と自分が口にした言葉
それが重なったように思えて。つい、挑発するように言葉を投げつけてしまった
「雷、大丈夫そう?」
隣に座るアリサが少し心配そうにこちらを見る
俺が挑発してる時は何故か誇らしげな顔してたのに、今はそうではなくなっている
「教官に対しての事か?やり過ぎた感は否めないけど、俺は後悔してないぞ」
「そう、ならいい」
それじゃないみたいな顔をしながらモニターに目を落とすアリサ
昔馴染みだし主従という関係もあるそれ故にアリサは俺の事をよく知っている、だから俺が内に抱えた感情くらい気が付いているんだろう
敵わないなと思いながら、まだ集まってくるクラスメイト達に相槌を返す
抱えた罪悪感と少しの誇らしさを胸にこの授業は終わりを迎えた
─実技棟─
「これより実技を始める・・・がその前に不知火、月夜野、迦倉前に出ろ」
「「「はい」」」
午後となり実技の時間が始まるとアンリ教官が3人を呼び出し前に並ばせる
ムッとした顔とちょっと怒ってるような雰囲気に
あの話、伝わってるんだろうなぁと内心少し怯えていると
3人の頭に手刀が振り下ろされるのが見えた
ポコン、ポコン、ズゴッ!
子気味よく叩かれた頭、1人だけ音がおかしかったけどみんな黙って見ている。同じ轍は踏みたくないのだろう
脳天をかち割る様な音を響かせた不知火くんは頭を抑えながらその場に軽く丸まっていた
「痛ぇ・・・俺だけ威力がおかしくないですか?」
「挑発した本人だと聞いたからな、月夜野と迦倉は勝手をした罰だ」
先程の雰囲気はどこ吹く風と言ったように、呆れているものの何処か嬉しそうな声をしている
一応だろうか月夜野さんと迦倉さんが謝る
「すみませんでした」
「ごめんなさ~い」
「悪いと分かっているならいい。エキシビションに着いては全員知っているな?」
『はい!』
「実技の時に話すつもりでいたんだが、その前にあの年増がやってくれた様だな。元々神至に全投げするつもりだったがやる気がある奴が出るのがいいだろう。3人とも気張ってやれよ」
ああ、Eクラスの担任だから話が共有されていないのではなく
話す場をアンリ教官なりに考えてくれていたんだ
確かに実技に関わる内容だし、全員が集まるこのタイミングで話すのが適切とも言える
それにしたって神至くんに丸投げはどうなのだろうかと思う気持ちはなくも無い
不要な心配に少し申し訳なく思っていると
「「「はい!」」」
3人が大きく返事をしていた
「戻ってよし」
元気な返事に朝と雰囲気が少し変わったのに気が付いたのだろうか
どことなく教官の表情が和らいでいる気がする
3人が列に戻ってくるとアンリ教官が再び口を開く
「ここからは別の話になるがお前たちに朗報だ。神至の居場所が判明した」
「おお!どこすか!」
「落ち着けフェリン、これから説明する。場所は始まりの塔、この学園島にあるヤツだ皆知っているな?その50階層だ」
『50!?』
全員が声をあげるそれもそうだびっくりもする
50階層なんて到達するだけでもどれだけ大変なのか想像すらつかないのだから
「ああ、一般的な冒険者だと単騎では絶対に到達し得ない階層だ」
「あの、いいでしょうか」
「なんだ?月夜野」
恐る恐ると言った感じで手を挙げ発言する月夜野さん
「どうして居場所が分かったんですか?」
「それについても今から説明する。黄泉、その辺は任せていいか?」
「もちろんよ。冒険者クラブに入っている子たちは知ってるだろうけど。ハゲがいたでしょ?支部長の」
姉のその言葉に。ああ、あの人かとクラブの全員が誰のことなのか分かり頷く
「そいつにね、色々頼んで調べてもらってたのよ。でそいつが調査から帰ってきたのが昨日。それで帰ってきたハゲがなんて報告受けたと思う?」
クラス一同、説明が理解できていないのか首を傾げる
主語というより色々抜けていて私にもよく分からない
「ああ、調査に着いては説明いらなかったわね。あなたたちには関係ないことだし。それで受けた報告って言うのがね。仮面を着けた黒い鎧の男が塔の中で暴れてるって話なのよ」
「あの、いまいち話が読めないんですが・・・」
月夜野さんの言うことは最もだ。私にもよく分からない
調査というのが何についてなのかというのと。支部長がギルドに帰ってきて、受けた報告に何か繋がりでもあるのだろうか
「その、仮面の男。誰だか気になるんじゃない?」
「もしかして!」
「おっ、ディルくん分かったかな?」
「その仮面の男が神至って事ですね」
「ピンポーン、せいかーい。アイツね、元々塔に潜る時は仮面と鎧つけてたのよ身元を隠すためにね」
何故身元を隠す必要があるのか分からないけど
でもこれで
「神至くんのところに行ける」
手を握り小さくガッツポーズをしてしまう
しかし直後に見えた希望を打ち消すかのように現実を告げられる
「たーだ、今のあなた達だけだと50階層なんて到達するだけでも何日かかるか分からないし、そもそも到達する前に間違いなく死ぬわ。まぁ1部例外もいるけどね」
その発言に全員のテンションが一気に下がる
塔に入るということは本来、自殺行為にも等しい
それは一般的な感覚を持つものなら誰しもが共有する常識
冒険者とは命をかけて、そんな場所を探求する仕事
進んで行う者は命知らずか、先の無くなった浮浪者。あるいは塔の持つ魅力に魅了された者だけ
1、2階層であれば普通の大人は出入りする事は出来よう、でも5階層を超えた途端に魔物の集団化と強さが跳ね上がる
彼がいる50階層にもなるとエリア全体を占拠するほどの強力なボスがいることも割と常識である
つまり、私たちが追いつくことは不可能なのが目に見えていると言うこと
そんな私たちの心を見透かすように姉が言葉を続ける
「でもそれは、あなたたちだけならって話。全員は連れて行けないけど。数人なら私達も同行するって条件付きでなら連れて行ってあげる。どう?行きたい?」
「行きます!連れてってください!」
最も早く声を上げたのはディルくんだ
それにつられる様にして次々と声が上がる
当然私もだ
「行きたい、連れてって」
「うんうん、みんなやる気があって結構、本当なら全員連れ行って上げたいところなんだけど。全員はちょっとね」
少し申し訳なさそうに話す姉に続いて、アンリ教官が話し始める
「お前たちには悪いがメンバーは既に選考してある。その中で行きたい者だけ着いてこい」
アンリ教官から名前を呼ばれた面々が前に出ていく
クルトさん
フィークスくん
ディルくん
迦倉さん
宮本くん
月夜野さん
深於ちゃん
そして───
「最後に門音お前だ」
「私ですか?」
「そうだ、行けるか?」
「行きます!行かせてください!」
「よし、ならお前も前に出ろ」
「はい!」
私を含めて8人が神至くん捜索組のメンバーとなった
「人選に着いて文句がある者もいるだろう。なので選考理由だけ明示しておく。現状神名を完全に解放出来る者は少ない。今回はそれ以外の中で可能性が高い者を選ばせて貰った」
それは選ばれなかった人が暗に実力が足りていないと言っているのと同じだった
残った面々は悔しそうな顔をしていたり、少しホッとしたような顔をしていたりと様々だった
人の命が簡単に飛ぶような所に進んで行きたいと思う者は少ないと思う。だから後者反応も当然と言える
「ディル、俺行けないけどさ、必ず連れて帰ってきてくれよ。また神至と揃ってゲーセン行こうな!」
「もちろんだ、必ず連れて帰る」
男同士の友情と言うのだろう腕をぶつけながらディルくんと朱裂くんが約束を交わしていた
いいなぁ、なんだか格好いいや
「お前たち捜索組はこのまま塔に行ってもらう。本来学外の講習で塔行けるのは、3年からなんだが今回は特別に許可を貰った。気張っていけ」
『はい!』
「残った者は私と神名解放の訓練だ」
「えっ?アンリ教官行かないんですか?」
テルクスさんの疑問も最もだろう。てっきり私も着いて来てくれるものだと思っていた
「残念ながら、私はまだ本調子じゃないんでな、塔に行けるほどの余力がないんだ。その分お前たちの面倒はみっちり見てやる。感謝しろよ」
「うへぇ、また擬音祭りかぁ〜」
「テルクス、何か言ったか?」
「いえ、なんでもありません!」
そのやり取りにみんなで笑い合う
これから向かう塔の先、どんな物が待ち受けているかは分からないけど
きっとみんなで帰ってこれる。そう思うと心の中に僅かにあった不安が溶けていく様だった
ひとしきり話が終わった後、姉が転移陣を展開してその中に捜索組が入っていく
「じゃー捜索組のみんな、これから転移するけど。49階層まで飛ぶわ、そこから力人を探すわよ」
「なんで50階層じゃないんですか?」
ふと疑問に思った事を宮本くんが質問する
「なんでって50階層のフロアボス強すぎて倒せないからよ」
『え?』
姉のその言葉に全員が引き攣った様に顔が強張る
私もみんなと同じ顔をしてるだろう
「50階層はね、フロアそのものがボスエリアなのだからね。絶対に無理しないで私でも死ぬかもしれないから」
その一言で私たち捜索組も待機組も全員が地獄に突き落とされたように不安に包まれた




