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身内と話と秘密の事

私たち訓練組は、神至くんとルルイアスさんの大暴れを目の当たりにし。制止するために外部講師2人が飛び出した事で、一時中断せざるを得ない状況になり。様子を伺いながら話し合っていた


「やばかったわねアレ。何なのよアイツら」

「本当にね、すごいなぁ神至くんは」

「それを言うならクルトのやつも凄かったぜ、神至のヤツ結構本気でやってたんじゃないか?」

「プゴォ耳が壊れるかと思ったプゴ」


各々が好き勝手に感想を言い合う。私たち以外も同じように話をしているみたいで、どのグループも集まっていた


初めて見る戦闘で楽しそうにしていた彼の姿に、私たちとの訓練や今までの戦いでは、本当に手を抜いていたのだと思い知らされる

隔絶した力の差を感じて何故か心が少し痛んだ


耳を劈く様な金属音はまだ少し頭の中に残って反響している様な感じまでする


一体どれ程の実力を持っているのか、私の中で彼に対する興味がまた1つ増えてしまった


そんな事を考えていると姉とオルフィリアさんが歩きながらこちらに向かって来ていた


「ほらほら、ひよっ子達。お喋りはそこまでにして続き始めるわよ」


2人とは別にアンリ教官は正座している2人の前でガミガミと何か話しているのが見える。何を話しているかまで聞き取る事はできないけど。あの様子を見るに2人が怒られているのは間違いない


それを見てさっきの模擬戦で少しは彼の心も楽にはなったのかな。とまた神至くんの事を考え始めてしまう


ここ最近、あの発作が起こった日から、日に日に目元のクマが大きくなっていくので心配でたまらない

笑顔で話はしてくれるが、いつもより元気がなくて、無理をしている事など誰が見ても一目瞭然なのだ


私にも何か出来ることがあればいいのに、と考えてはいるものの。女である私に出来ることなどない事も分かっている


無理に関わり、彼が辛い思いをするのは嫌だ、でも何かしたい。そう考えるのも何回目なのだろうか。同じ事を考えるばかりで訓練になど全然身が入っていなかった


いつもと同じ事を延々と考えていると、急に鼻をつままれる


「むきゅっ」

「那美、何ボーッとしてるの。続き、するわよ」

「ああ、うん。ごめんお姉ちゃん」


しょうがないな〜といった顔で私の顔を見つめてくる


「何か考え事でもしてたの?お姉ちゃんの声を無視するなんて。いけない子だな〜」

「うん、ちょっとだけ」


他のみんなに話す時よりもワントーン高い声で優しく声をかけてくる。そこは別にみんなと一緒でいいのにと思うものの。姉がシスコンであるのは昔からの事なので何を言っても聞く事は無いか


「好きな男でも出来たのかしら」

「えっ!?やわ。そん、な、こと、はないよ?」

「あらヤダ、分かりやすい」


不意を付かれて声がうわずって、変な回答になってしまった


「誰よ誰よ〜、ゲロっちまいなさいよ。そいつシバキ倒すから」

「もう!ちょっと、お姉ちゃん!」

「アハハハ、ソレで?冗談はさておき、どうしたの?」


今のシバキ倒す発言は本気で言ってた様に感じたんだけど・・・まぁいいや


「神至くんの力になってあげられないかなって、ずっと考えてるの」

「へぇ、那美がアイツにねぇ・・・ちょっと待ってなさい」


少し含みのある言い方をしたかと思えば1度離れてオルフィリアさんの元へ向かった


そのまま何か話していたかと思うと今度はグループメンバーの3人の元へ移動し話しかける。そちらの方にも何か説明する様にした後、3人がチラッとこちらを見てきた、かと思えば全員がオルフィリアさんの元へ向かって歩き出した


「お待たせしたわね、これでゆっくり話せるわ」

「何してたの?お姉ちゃん」

「オル婆に3人の面倒もお願いしてきたのよ。あなたとゆっくり話す為にね」

「いいの?実技はまだ終わってないのに」


そう問いかけるとこちらを安心させるように優しい顔で口を開いた


「構わないわよ、焦らなくてもあなたもこのクラスも確実に神名解放まで至れる。それに、偶にはゆっくり姉妹水入らずで話したいじゃない」

「お姉ちゃんがいいなら構わないけど」


私が納得したと見るや否や目を輝かせながら顔を近づけてくる


「それじゃあ早速本題ね。那美、あなた力人に惚れたの?」

「!!!???!?」


あまりに唐突で何を言ったか自分でも分からなくなってしまう。さっきの話とぜんぜん関係ないじゃんなんでそうなるの!?事実だけど


「そう、その反応を見れば。まぁ、分かるわね」

「どうして分かったの?」


バクバクと鳴る心臓を押さえつけながら務めて冷静に口を動かす


「そりゃだって顔が恋する乙女だもの。お姉ちゃんの目は誤魔化せないぞ〜」


すごく楽しそうに話す姉の顔は、まるで願いの叶った子供の様な純粋に嬉しそうであった


「どう、かな?」

「どうって?付き合えるかどうかの話?」

「うん」

「今はまだ無理でしょうね、アイツ発作起こしてるんでしょ?」

「どうして知ってるの?」

「アンちゃんから教えて貰ったのよ。まぁアイツも自分で連絡してきたけどね」

「そうなんだ」


分かりきっているはずの答えなのに、どうしてか心が沈んでしまう


彼の今の状況を考えれば簡単に分かる、分かっていたことだ。落ち込む必要はない・・・はずなのに胸が締め付けれた様に苦しくなる


「それで?アイツのどこが良かったのよ。秘密は多いし、やる事成すこと規格外の事ばっかりだし」

「・・・私を助けてくれたの」

「それだけ?」

「周りの人みたいに、容姿を悪く言ったりはしなかったし、門音の人間じゃなくて那美個人を見てくれるの」

「それでそれで?」

「とっても優しくて、暖かくて。一緒にいるととても気分が良くなるの」

「ベタ惚れじゃねーかちくしょう!」

「わわ、お姉ちゃん声が大きい!」


つい思ってる事を全て話してしまった。姉には今までも沢山相談はしてきたけど、こう言った事は初めてで、どこまで話していいのかよく分からない


「まぁでもよく見てるわね、あなたに好きな人が出来た事はお姉ちゃんとっても嬉しいわ。でもその上で厳しい事を言うのであれば、やめておきなさい」

「──っ、どうして?」


先程までの嬉しそうな表情とは違い。真剣で真っ直ぐな瞳でこちらを見てくる


「1つはあなたのため、もう1つはアイツのためね」

「聞いてもいい?」

「もちろん。あなたのためというのはアイツが持ってる秘密に関係するから。後で説明するからそっちは少し待ちなさい。で、アイツのためって言うのはあなたの予言の事。まだ誰にも話してないんじゃないの?」

「うん」


彼の秘密に関係する事と言うのは気になったけど、それよりも後者の私の問題について言ってくるとは思っていなかった


私の様子を見て、姉が少し窘める様に口を動かす


「仮に恋人関係になれたとして。また大切にした人間を、手から零れ落とすような事になれば、今のアイツは本当に壊れかねないわ。それが避けようのない事であってもね」

「───っ」


それは考えていなかった


仮に、仮にだ。私が彼と上手くいったとして、その先は?


コレは私の妄想で、実際にどうなるか何て分かりもしないけど。彼はきっと私を大切にしてくれると思う。話を聞いた例の人ですら彼なりに大切にしていたつもりらしい


そうなったとして先の短い私は、必ず彼を残してしまう。そうなれば優しい彼はどう思うか、どう感じるか。そんな事深く考えずとも想像ができる


彼が心にまた傷を残してしまうと、そんな事私にだって分かることだ。そうなるのであれば私は


「諦めた方がいいよね・・・」


考えた事がそのまま口に出る

姉は少し悲しそうな顔をするが、すぐに笑顔に戻る


「別に諦めろって言いたいわけじゃないのよ。むしろ全部話してアイツに何とかしてもらいなさい。きっとアイツなら何とかしてくれるから」

「でもさっき、やめておけって・・・」


少し怯えるように、声が震える。自分の気持ちを押さえると決めたばかりでこんな話をされたら、悲しくもなる


「さっきも言ったけど、今のアイツとあなたならって話よ。アイツの問題が全部解決したのなら。予言のことも、家の事も、全部ひっくるめてアイツに丸投げすればいいわ。その上でアイツが抱えてる物を全部一緒に抱える覚悟を持ちなさい。それが出来るなら私はいいと思うわよ。非常識な事以外、アイツ普通に良い奴だし」


「でも。予言の事なんてどうにか出来るとは思えないよ」

「フフッそれは多分大丈夫よ。予言が変わった前例あるからね」

「え?」


今の私はきっととても間抜けた顔をしているだろう、予言の内容が変わるなんて事今まで聞いた事もない

でも、もしそんな事が可能であるのなら───


「うん!頑張る!」

「うんうん、いい笑顔ね。それじゃー聞きたいことも聞けたし。私とマンツーマンで神名解放の訓練しましょうか」

「・・・へ?」

「何驚いてるの、力人射止めるんでしょう?さっきは姉としてお話したけど。ここからはアイツの仲間として話させてもらうわ。生半可な実力の人間にアイツを任せる訳にはいかないのよ」


笑顔で話しているのに何故か恐ろしい程に圧を感じる


「可愛い妹の為だものお姉ちゃん頑張っちゃうから、だからね那美───」


言葉を続けながらにじり寄って来る姉に、怖気を感じて後ずさるも肩を掴まれ、逃げられない


「───死ぬほどきついけど、死なないでね?」


その日私は地獄を見た

アンリ教官の訓練が可愛く思える程に



───



実技が終わり、軋む身体を何とか動かして更衣室に入る

隣を歩く深於ちゃんが、終始心配そうに着いてきてくれているおかげで、何とか気合いで踏ん張っているけども、1人だったら絶対に途中で倒れてる


「那美、本当に大丈夫?」

「あはは・・・何とかね」

汗と土で汚れた運動着を脱ぐが上手くいかない。いつもならまだ余裕が残っているのに、今日は本当に出し切った感じで手早く着替える余裕もなかった


・・・それにしたってどうしてこの服、こんなにぴっちりしてるの!


動かす度に軋む身体を無理やり動かし何とか服を脱ぐ、その勢いで揺れる双丘を見つめる者が1人、2人、3人・・・


「呪いが解けてから思ってはいたけどやっぱり那美のそれは凶器ね」

「ナミナミ、ズルい!」

「う、羨ましい限りです」

「へっ!?何が!?」

「那美さんデカイもんね」


全員の視線がある一点に集中している事に気が付き慌てて胸を隠すように腕を締める


「それは多分、逆効果」


アリサの言葉の通り腕を締めたことで持ち上げられ堂々と見せつけるような姿になってしまう


「そ、そんなんじゃないよ!」

「ええい、羨ましい!こねくり回してくれる!」

「ひゃああ!深於ちゃんやめてぇ!」


実技の時よりも俊敏な動きで那美の背後に周りみ、その大きな双丘を無遠慮に揉み回す


「なんという感触、コレはいいわぁ〜」

「ミオミオいいな〜次は私!」

「やめて〜」


軋む身体のせいで上手く抵抗できない中、大きくため息を吐く者が1人


「何やってるんですか皆さん、ホームルームがまだ残ってるんですから早く着替えてください」

「そうね、アンリ教官にとやかく言われたくないもの急ぎましょ」


ため息を吐きつつ注意する輝夜、それに同意するようにテキパキと着替えるリン

それを宣戦布告と受け取ったのか稲見が一言


「コレが持つ者の余裕・・・」

「稲見も変なこと言ってないで早く着替えなさい」

「隙あり!」


言うが早いか、稲見は輝夜の後ろから抱きつき、深於のように胸元まで手を回し揉みしだく


「ちょっ!コラ!何やってるの稲見!」

「ウリウリ〜!持たざる者の一撃を喰らえ〜!」


それを少し呆れたように見ながら着替える4人


「実技が終わったっていうのにみんな元気すぎじゃないかしら」

「同意、あの二人は元気過ぎる」

「わ、私もちょっとそう思います」

「でもなんかこう言うの楽しくない?」

「でも巻き込まれないうちに退散するのがいい」

「それもそっか」


巻き込まれないようそそくさと着替えた面々は、残された4人を放って先に出ていってしまった


しばらくそのままの状態が続き、着替え終わる頃にはホームルームの時間真近になっていた




「ギリギリセーフかしら」

「もう、げん、かい」

「すみません、遅れました!」

「かぐや〜ごめんて〜耳摘まないで〜」


帰りホームルーム直前になり何とか教室まで辿り着くとアンリ教官はもう既に教卓に立っていた

話し出そうとするところだったのか、こちらをしょうがない物でも見るような目でこちらを一瞥すると一言だけ発する


「・・・ホームルームはこれからだ席に着け」

「「「「はい」」」」


うーん、怒ってるよね


空いてる席に急いで座るとアンリ教官が口を開く


「そこの4人、話は何となくだが聞いている。ハメを外すのは構わないが時間は守れ。それではホームルームを始める」


一言注意を受けただけで特にお咎めはなしとなり少しホッとした




特殊な連絡事項も特になく、いつも通りにホームルームは終わりになったけど、帰り支度を終えた所でアンリ教官に呼び止められる


「門音、少し残れ。黄泉が話をしたいそうだ」


なんだろう?実技の時間にも少し話をしたんだけど

正直もうヘトヘトで、すぐにでも帰ってシャワーを浴びたいくらいなんだけど。アンリ教官に呼び止められてしまっては行く他ない


「分かりました。深於ちゃん先帰ってて」

「ええ、分かったわ」


特に深追いされる事もなく深於ちゃんと分かれ、アンリ教官に着いていく


「あの、話って何か聞いてますか?」

「さぁな、私には分からん。ただお前を呼べと言われただけだ」

「そうですか・・・」


素っ気ない態度に少し寂しく感じたが、アンリ教官っていつもこんな感じだよねと納得すると特に気になる事もなくなってしまった


そのまま無言の時間が続き、アンリ教官について行くと不意に言葉が投げかけられる


「まぁ、なんだ。爺と私も含めての話らしいからな、神至の事なんだろう。門音、アイツと何かあったのか?」

「え、いや、特には無いですけど」

「そうか、呪いの件で何かあったのかと思ったんだが、そういう訳では無いのか」

「はぁ・・・」


私にはなんの事だか全然分からず検討もつかなかったけど。それはアンリ教官も同じみたいだった


それからは特に話すことも無くついて行き、学園長室の前で立ち止まる

「ここだ中に入れ」

「分かりました」


正直初めて入る部屋に少し緊張するけど、意を決して扉を叩く


「2-E、門音です」

「入ってよいぞ」


扉の向こうから少しくぐもった声で学園長からの返事が返って来たので扉を開き、中に入る


「アンちゃんもちゃんといるわね」

「呼んだのはお前だろうに」

「えへへ、そうだった。那美、こっちおいで」


教官と少し言葉を交わした後、自分の座っている3人掛けのソファーの空いているところをポンポンと叩きながら私を呼ぶ


素直に横に座るといきなり抱き着いてくる

・・・いつもの事だけど、今はなんだか恥ずかしいな


「あの、話ってなんの事?」

「門音お前それでいいのか・・・」

「はい、いつもの事なので」

「黄泉お前なぁ」


酷く呆れた声で話すアンリ教官


「いいじゃない、今は仲良い人しかいないんだし。私が那美のこと大好きなの知ってるでしょ」


その返事になんとも言えない表情のアンリ教官が私の隣に座り、学園長が向かい合うように座る


「それで?黄泉よ、なんの話がしたいんじゃ?このメンツならある程度察しは着くんじゃが」

「力人の過去についてよ」

「フム、やはりか。してその理由は?」

「この子アイツ好きなんだって、だからアイツが話す前に全部教えといて、それでなお好きならくっつけちゃおうと思って」

「お姉ちゃん!?」

「「ハァ・・・」」


学園長とアンリ教官が同時に大きなため息を吐く

2人とも額を押さえたり、こめかみをグリグリしながら少し考えているようで、しばらくしてアンリ教官が先に口を開いた


「黄泉、それはいくらなんでもお節介が過ぎるぞ」

「えーなんでよ、いいじゃない」

「こんなにアホじゃったかのぉ・・・」


2人とも頭が痛そうにしながら言葉を発する

当の私は姉の急な発言にあたふたする他なかった


「門音の・・・いや那美と呼ばせてもらおうかの、先程の黄泉の発言は事実かのぉ?」

「はいぃ・・・」

「うむ、分かった。すまないの変な事を聴いてしまって」

「お前はいい加減その体勢を戻せ」


学園長が私に謝罪をする中。ゴンッ!と鈍い音を響かせながら姉の頭が叩かれる。うんコレは痛そう。アンリ教官は怒らせないようにしなきゃ


「あたぁ、酷いじゃない」

「酷いのはお前だろうが」


私を挟んで言い合う2人にあまり目を向けないようにしながら、学園長が声をかけてくる


「それで力人の話じゃったかの?」


その言葉を聞いて佇まいを正す黄泉と嘆息しながら足と腕を組みリラックスした格好を取るアンリ


「ええ、話しておいて損は無いと思うわ。さっきの話もそうだけど、それ以前に学生の中にも何人かはアイツについて詳しく知っている人間が必要よ」


先程までの気の抜けた話し方ではなく、ただ必要であると思っていることを真っ直ぐに伝えるように言葉を発する。なんだか神至くんが話してるみたい


「それについては私も賛成だな、私も常にアイツと一緒にいる訳じゃない。できるだけ近いところにいる奴らの協力も必要だとは思っていたところだ」


そう言いながらこちらをチラリと見てくる


「それもそうじゃの、本来なら本人の口から話すべき事ではあるんじゃが。あやつの抱える物を共有する人間がいるのはこちらとしてもありがたいか」


「でしょ?だからその1人目を那美にしたいの」

「しかし下手に話すのもどうしたものか。危険を伴う物もある」

「そうなんですか?」


少し話しにくそうな顔をする学園長だがそのまま言葉を続けてくれる


「うむ、学生として見るには、あまりに大きく多い物を抱え過ぎておる。他の学生が何も抱えてないと言う訳じゃないんじゃがの」


「理の力はその最たる例ね」

「なんだ、ソレはもう知っているのか」

「ええ、半分事故みたいなものだったけどね。それに態々期限まで設けて神名解放をクラス全員に習得させようなんて無茶な事し始めたのもその為なんでしょう?」


「そうじゃ、やつはどうしたって問題を引き寄せる。それが意図したものであっても、そうでなくてもの。問題はそれに巻き込まれる生徒の方じゃ」

「なるほど自衛のために最(・)低(・)で(・)も(・)神名解放が必要ということか」

「その通りじゃよ」


大人たちの話に私は全くついていけていないが、何となく話の輪郭が見えてくる


「つまり、神至くんがいる事で何か大きな問題が起こる可能性があるって事ですか?」

「そうよ。と言っても可能性の話だけどね」


確かに4月だけでもかなり注目を集めるような事をしていた。それがどう関係してくるかは分からないけど今後更に何かがあるのかもしれない


「あの、聞いておきたいです。私はもっと彼の事を知りたいので」


真っ直ぐに学園長を見据える。私の目に映るその顔は、どこか嬉しそうで、でも困った様な不思議な顔をしていた


少し考えるようにして立派な髭をさすった後、根負けしたかの様に口を開く


「まぁ、良いかの。あやつ個人の問題のみ話す分には良かろうて、それ以外は流石にワシでも面倒見きれん」

「ええ、それでいいと思うわ。全部と言わなくてもアイツの抱えてる物くらいなら話してもいいと思う。那美の神名解放は責任もって私が面倒見るし。ついでに他の子達も覚醒まで持っていくわ」


「文句はない。神名解放の件は私の方はあまり人気が無いようだったからな」

「それはあなたが教えるの下手なだけじゃない。相変わらず擬音とジェスチャーだけで伝えてるの?」

「私なりに分かりやすく伝えてるつもりだが、どうも生徒側からするとそうでも無いらしい。実際どう思う門音」

「えっ、あの、その・・・」


アンリ教官からの質問に口を噤んでしまう

その様子をみて察しが着いたのだろう。残念そうな顔をした顔したかと思えば。そうかと寂しそうに呟いていた


「その件に着いては任せる。仔細については省くがあやつの問題は、ワシの方から説明するので良いかの?」


学園長もアンリ教官の事はやっぱり詳しく知っているのだろう。深く追求せずに話題を本筋に戻してくれる


「ええ、それで構わないわ。補足は私とアンちゃんで出来るもの」

「ウム、それでは始めようまずは───」


そうしてようやく彼の持つ秘密についての話が始まった


話のまとまりだけを掻い摘めば


理の力という人智を超えた力を持つ事

それについての問題

EXランク冒険者であること

冒険者時代のあれこれ

どうやって育ってきたか

それから彼の身体と記憶についての話


そして今問題となっている彼の発作


その本当の原因を知った




私は何も言えなかった。全て聞いた上であまりにも重すぎると、これだけの事を一人で抱えていいような物じゃ無いと思った


「あらかた話したがどうじゃろう。気持ちに変化はあるかの?」

「ありません」


学園長の問に即答する

私一人で支えられる様な内容じゃない事くらい分かる

けれど話を聞いた上で私の気持ちは揺らがなかった


「ヒュー、いいわねその感じ。流石私の妹ね」


わしゃわしゃと頭を撫で回される


「わわっ、やめてよお姉ちゃん」


しばらくして満足したのか解放され、また大人しく座り話し始める


「とりあえずこれで1人は協力者が増えたわね」

「そうじゃのぉ、あと何人かは欲しいところじゃが今はまだ良いじゃろうて」

「候補になりうる人間はいる、後でそいつらも連れてくればいいんじゃないか?」

「うむ、人選は任せるとしよう、ワシも最近忙しくて敵わんからな」


いつも暇そうにしてるのに・・・とは思ったものの口が裂けてもそんな事言えなかった


「そりゃあそうでしょうね、アンタがまともに管理しないからああ言った連中が好き勝手するのよ。もっと真面目にやりなさい学園長なんだから」

「ホッホッホ、返す言葉もないのぉ」


私にはなんの事だかさっぱりではあるが姉とアンリ教官は合点がいっている様でまた私だけが置いてけぼりになってしまっていた


そんな私を見かねてかアンリ教官が説明してくれる


「門音は知らなかったな、先の実技試験の時の要求は覚えているな?」

「はい」

「あの3人と担任だった黒井が学園で悪さをしていてな、その被害者を全員、神至が救出したんだ。まぁ、既に亡くなってる者もいたがな」


私の知らない情報が次から次に溢れてくる。彼は本当に何者なんだろうか


「でも、どうして学園長が忙しくなるんですか?」

「それはじゃの・・・」


言い淀む学園長を差し置いて姉が被せるように言葉を発する


「このバカがその後始末とか弁済してるのよ。元は学園の生徒だった子達だし、他にも絶対に協力者がいるはずだからソイツらの特定とかね」

「そうなんだ」


事件の詳細については説明をしてくれなかったけど、彼が裏で色々と動いていたことで救われた人達がいた事を教えてもらい。また1つ興味が増える


「まぁ、こっちの件は那美には関係ないでしょうし。気にしなくてもいいわ。ジジイが何とかしなきゃ行けないことだもの」


その言葉になんの反論も出来ないのか学園長がしゅんとするものの姉は止まらず言葉を続ける


「アイツに関してはあなたの思うように行動なさい。真摯に向き合えば、アイツは必ず応えてくれるから。あっ、でも今はダメよ発作起こして暴れたらとんでもない事になるんだから」


姉のその言葉を最後に私は、一人帰る事となった

教えられる事は教えたから、あとは好きなようにしなさいとの事で、結局のところ私任せだった


訓練でボロボロになった体を引きずるように帰り、シャワーを浴びながら3人との話を思い返す


理の力という秘密


人においそれと話すことのできない、異常な力


けれどそれは、彼が今の優しいままでいてくれるのなら、きっととても素晴らしい力だ

私は知っている、彼がとても綺麗で優しい魔力を纏っていたことを。だから大丈夫


冒険者だったこと


みんな知ってること。だけど番外のクラスである事は、私だけの秘密、彼が誰かに話せる時までは私の心に秘めておく事


身体と記憶の事


昔あった、とても有名な事件の被害で、とても人とは呼べない身体になってしまった事、その事で無意識に自分で記憶を封じる力を得ている事


今も彼は、思い出さないようにしているのかもしれない。私はそれを支えることが出来るのだろうか


発作を起こすきっかけとなった出来事、その真相


聞いた時は、驚いたし、怖くもあった

けれど私は理由があったと感じている


故意であっても、事故であっても、彼がした行いに変わりはない

どうあっても彼は彼だ、もし記憶を起こして思い出したとして私はどう向き合えば良いのだろうか


考える事を止めない、私の中で答えが出るまでは

この変わらなかった気持ちを胸に、助けて貰った恩に報いるために、彼に寄り添い力となりたい







たとえ彼が人(・)殺(・)し(・)であったとしても




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