表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

謝罪と説明と闇弁当

目を覚ましたのは夕方だった


薬品の匂いそれに混じって少し血の臭いもする・・・

嗅ぎなれた、それいでいてあまり好みでない匂いに包まれた身体を起こす


周囲の様子を確認しようと見回してみると

ベッド際の椅子に腰掛けているであろう人物がいた

白と赤の混成で眩い程に綺麗な魔力を持つ人

クラスメートにいたなコイツ

揺らぎもなく落ち着いていることが見て取れる

こちらへの悪感情や蔑視はない強いて言うなら何か探りを入れたがってるような感じだ


「あ、目が覚めたんだね神至くん。それはそうといくらなんでもあの発言はないんじゃないプゴ?」

少し野太い・・・というか太めな感じの声

体型は分からんが恰幅のいい男と見た

「ああ、あれはダメなやつだったのか。それより君は?」

「自己紹介してなかったね僕はフィークス。フィークス・オーク・ノープ・ホープだプゴ」

語尾が気になるな・・・まあなるほどだいたいの察しは付いた魔人(モンス)なのだろう

「よろしくフィークスくん、ところでここは?」

「僕の質問に答えてもらってないのだけど・・・まぁいいや。ここは医務室プゴ。あとくん付けはいらないプゴそもそも僕を名前で呼ぶ人あんまりいないプゴ」

「そうかならよろしくフィークス」


「うん、それより君殴られて吹っ飛んだプゴ覚えてるプゴ?」

「覚えてる、悪い事をしたようだし謝らないと」

「悪い事だったって自覚はあるプゴね」

「言い訳になるけど編入前に教えてもらった常識がおかしかったらしい」

殴り飛ばされた状況とそう教えてきたやつの性格を考えると嘘だったと考えるのが正しいと思っただけ


「一体どんな常識を教えられたらあんな発言になるプゴ?」

「呪われてる相手に対してはブサイクだねって言うように教わったんだけど」

「それはその常識を教えた人の悪意を感じるプゴ」


魔力の質があまりにも人のそれでない事、呪われているからこその発言だったのだが

『呪われている人にはブサイクだねって言うんだよ』というあの常識は間違いと言うよりも嘘だったのだろう・・・ムカついてきたな


「まぁいいやボクは寮に戻るプゴ、君も気をつけて帰るプゴ」

それだけ言うと彼は立ち去って行った

おおかた俺をここまで運んできてくれたのだろうが、起きるまで待っててくれるとは親切だな

それとも何か別の目的があったのかは分からないが


とりあえずジジイのところ行って寮の場所でも聞いてくるか


─────


「・・・で?なんだこれは」

「なんだと言われてもこれがお前さんの寮じゃよ」

フィークスと別れた後ジジイもとい学園長のところに行き諸々の説明というか話をした。一通りは担任から聞いていたのだろう学長室に入った瞬間爆笑された。顔の傷はもう治ってるはずなんだがまぁいい


それよりもだ何をどうしたらこんな豪邸が寮になる

大通りに面した門の前に立ちそう思う

門の先には少しばかりの庭園が広がり小さな噴水もある周囲を覆うように植林されたであろう木々で見切れてはいるものの数人でお茶会が開けそうなガゼボも見えている

「明らかに寮じゃなくて貴族の邸宅かなにかだろうこれは」

「まぁあの額の融資じゃ、お主のいる環境にほぼ全て使い切ったんじゃよ。クラスもランクに似合わずかなりしっかりしておったじゃろ」

「最下級のクラスであの豪勢さはそういう事か」

確かに融資は出したけどそれは編入する前の仕事での稼ぎ。それも半分程度だいくらなんでもこれはやり過ぎではなかろうか

「お主の国の連中はこの寮になっておる、今日はもう寝てるじゃろうて明日にでも顔みておくんじゃな」

「そうする、荷解きもしないとだしな」


その後ジジイと別れた俺は自室に行き荷解きをして眠りについた


─翌日─


あの邸宅の様な寮から暫く歩き学園が見えた頃


・・・なんとなくの想像はしていたが中々に辛いな

昨日俺が言い放った『ブサイクだね』という発言は一晩で学園中に広まったらしい

周りからの視線に侮蔑や嫌悪を含んだ視線を感じる


「やっちまったなぁ・・・」


そう独り言をこぼすの仕方ないと思いたい

何はともあれ謝罪はするべきだろう

しかしなんと言って謝るべきか


俺の教えてもらった常識が間違ってたんだごめんね

と言ったところでまた殴り飛ばされるのがオチだろう

実際クラス連中のほとんどが呪い持ちなのは昨日挨拶の時に確認した、その中でもアレは特出していたからこそ出てしまった発言なのだが

全体的に本来の実力を発揮できていないが故にあのクラスに落ちたのは容易に想像が着く

アレに関しては謝罪もしつつ、罪滅ぼしに呪いを解呪してやりたいところ


「はぁ」

どうしたもんかと止まぬため息と共に教室への道を進む

すると後ろから声をかけられた


「アンタ昨日の今日で登校できるんだな」

「きみは?」

振り返りながらそう言葉を返す

そこにいるのは緑の魔力を纏う人物少しざわつきのある魔力だ怯えに近い揺らぎをしてる

量自体は少ないものの色の濃さから質は相当の物なのが伺える

恐らく獣人だろう、見えているシルエットの頭部から狼の様な耳が見える

それから心臓に近い部分に黒いモヤの様な揺らぎも見えるこれが呪いだ


「俺はディル、ディル・フェリンだ同じクラスなんだが・・・挨拶直後にあれじゃあ分かんないか」

「なるほど、昨日自己紹介した通り俺は神至 力人よろしくディルくん」

「あぁ、アンタは・・・いや、なんで昨日はあんな事言ったんだ?」

なにか言いかけて途中でやめた。大体の予想は出来るが本人が聞きたくなるまでは考えるのはよそう

「実は俺の目、魔眼でね相手の魔力量や質、呪いの有無がわかるんだよ」

話しながら教室への向けて歩き始める

周囲からの視線が先程より酷いものになったのは気のせいだろうか?

「それとあの発言に何か関係があるのか?」

「呪いの有無が分かるって言っただろ?あれ呪いそのものの強さも分かるんだ」

「へぇ、でもそれだとまだ分からないな」

「つまりだ、俺はこの魔眼を展開してる間は人の姿が見えない。魔力の揺らぎが人の形になってはいるけど顔やら正確な格好とかは分からないのさ」

「なるほど容姿を貶した訳では無いのか」

「そういう事」

「とはいえあの発言は流石にないんじゃないか?相手女の子だぞ一応」

「見た目わからないから仮に男でも普通に言ったと思うな」


とはいえ初対面の男からいきなりあんな事を言われたらショックだろうしかも女の子だったとは

久しぶりの申し訳なさを心に抱えつつ頭の中はどうやって謝罪するかを考えるばかりだった


─Eクラス─


教室に入ると一斉に視線がこちらに向いた

外の人達よりも実際に見ていた人がいるからだろうか思っていたよりも敵意ある視線は少ない

一部を除いて


視線は気にしていないように装い教室に入る

そのまま人の形を留めていない彼女の元へ進む

やっぱり顔が()()()()()

そこに居るのは分かっている。でも人間として認識できない、それほどまでにおぞましく揺らめいている呪いの塊

間違いなくこのクラスの中で最も重い呪いをかけられている。どうしてそんな事になったのかは知る由もないが、それよりも謝らなければと思うのだ

大事な約束を破ってしまったことを辛く思うように


隣に座っている青い魔力を持つ人物からの敵意が殺意に近しいものに変わったのを肌で感じる

それを意に返すことなく真っ直ぐ近づき言葉を発する

「昨日は申し訳なかった。こちらの常識がおかしかった故の発言だ。本当に申し訳ない」


伝えるべき言葉をハッキリと口にする

そして深々とお辞儀をする


怒っているだろうし許される事もないだろうそれでも謝罪はしなければならない。そう養父に習った

そこを疎かにしてしまえば俺は人ですら無くなってしまう


「どうしてあんな事を言ったの?」

その声はか細く少し震えている

怖いのだろう怒りを感じる声ではなかった

唐突にあんな事を言った男だ怖く思うのも当然。何を言い出すのかも分からないやつに掛ける言葉がコレなのは彼女の優しさ故なのだろう


「実は──」

あまりの常識不足を説明しようと口を開くと後ろからとてつもない怒気と呆れを含んだしかし静かに窘める声がした

「おい、いつまでそんなところにいるもうホームルームの時間だ後にしろ」

担任のアンリだ

コイツを怒らせるのは少し勘弁願いたいので言いかけてた言葉を止める

「了解、詳しい話はまた後でさせて欲しい」

「うん」


一度彼女と別れ上の段の空いている席に座った他は誰もいないと言うよりも一緒に座りたくは無いだろう

俺が席に着いた事でアンリが口を開いた

「そこの大バカのせいで昨日できなかった話を今、掻い摘んで説明する覚えておけ」


アンリの話を要約するとこうなる

1、お前たちは最下級のクラスであることを自覚しろ

2、最下級の割に設備が良いのは融資した人間がいること

3、余りにも成績が悪ければ教室は没収。青空教室とは名ばかりの野ざらしになる事

4、今日より授業が始まる事

5、実技系は特別指導員が着くこと

大まかにはこんな感じだった

「大体の説明は以上だ。それから昨日問題を起こした生徒が2名いる。各々噂で聞いているだろうがどちらもこのクラスからだ」


なるほど始業早々に問題を起こした奴がいるのか中々にはっちゃける者もいるようだ

「とぼけた顔してるが神至、フェリンお前らの事だ自覚しろよ」


どうやら1人は俺の事らしい

まぁ登校時の視線を考えれば妥当なところだと思うがディルの方は一体何をやらかしたのか


「ついでにもう1つ神至についてだが昨日の発言を聞いての通り常識という物がかなり欠けているお前ら教えてやってくれ以上、後は授業の準備をしておけ」

そう言うとアンリは教室から出ていったクラス内に微妙な空気が流れているのを感じる

どうしたものかと思っていると隣に2人座ってきた

ディルとフィークスだ


「アンリ先生にあんなに気にかけられるとは神至お前何者なんだ?」

「プゴゴ、常識云々は昨日の話で聞いてたプゴだから僕のわかる範囲で教えるプゴ」

2人とも教室内の空気を察してなのか態々席を移動してきてくれたようだ

「アンリとは編入前からの知り合いだよ、それと真っ当な常識を教えてくれると助かる」


こうしてこの日から3人で授業を受けるようになった

授業と言っても内容は至って普通の高校と同じらしいただ午前は座学午後は実技系と別れていて学年が上がるに連れ実技の時間が増えるようだ。

座学の内訳は語学、数学、魔法基礎学、歴史、科学といった基本学問に家庭学や魔法技術といった私生活に置ける一般教養

それに加え選択学科として各々自由に選べるらしい

実技は主に魔法実習に戦闘訓練の2つ大体は併合になっていてやりたいものに取り組むと言った全体的に自由度の高い内容になってるとの事


実際に授業を受けてみると至って静かだった

机に設置された魔導モニターに教科書の内容が表示され手元のタブレットにノートのように書き記す

分からないところがあれば挙手して質問したりするなど、この辺りは俺が一般教養を仲間から教えて貰った時と変わらなかった


─昼休み─


一通りの座学が終わり内容についても事前に教わった通りだった為、特に不明点などはなかった

ただ名門とされるだけはある。仲間に教えて貰った時よりも話が分かりやすく説明もするすると頭に入ってきた


4時限分座り通しだったため固まった身体を少し伸ばす凝り固まった身体を解した後ディルとフィークスとこの後の事を話していた。

「飯行くか」

「そうプゴね、学食と売店どっち行くプゴ?」

「二択なのか」

「ああ、学園内の勝手が分からないんだったな。この学園は大食堂で学食食べるか、購買で買ってきて適当な場所で食べるか、人によっては弁当作って持ってきてるやつもいるぞ」

「へぇ、なら学食行ってみるかなちょっと気になる」

「いいプゴね、ボクもいつも学食で食べてるから色々紹介するプゴ」

そんな感じで学食の話を聞いているとこちらに2人やってきた

青い魔力の人と呪いで人の形をしていない子だ

「ねぇソイツ私たちが借りていってもいいかしら」

かなり棘のある話し方。隣の呪われてる子の友達なのだろう俺に対してかなり敵意を持っているのが傍から見ても分かるほどに怒りが満ちている


「あの、ホームルームの前の話の続きを聞きたくて・・・」

「分かった。悪い2人とも学食はまた明日以降で頼む」

「プゴ、そうだね彼女にしっかり説明してあげるプゴ」

「確かに説明くらいはした方が良いとは思うまた実技の時にな」

2人には昨日の発言の件を授業の合間の休み時間に説明していたのでこの反応は分かる、しかし少し逃げる様な物言いで足早に2人が去っていった

ただのクラスメイトなのに少し怯えすぎでは?と思ったものの相当怒った顔をしているのだろう

「それで?説明って何?」

青い魔力の子からの言葉2人が居なくなったからか先程よりも声に怒気が乗っている

「飯食いながらでもいいか?流石に腹減っててな」

「誰がアンタなんかと───「いいよ」えっ?那美?」

青い魔力の子の言葉を遮る様に那美と呼ばれた子が許可をくれた

「学食行ってみたいんだけど、いいかな?」

俺からあんな言葉を投げられたにも関わらず当の本人は嫌悪や憎悪を向けてくる様子がない、不思議な子だ


「私お弁当作って来たからそれでいいかな?」

「ゑっ!?」

「まじ?」

青い魔力の子の声が明らかに動揺と言うよりも少し怯えを含んでいた

対してこちらはなぜ俺にと言うシンプルに謎だったから口をついて出てしまった


「俺としては構わないけど」

「私普段お弁当だから、昨日の件話を聞きたいなと思って作ってきてたの」

「あー、えー、うん那美がいいならいいわ、私も作って来てるしそうしましょ」

何故だ先程まであれほど怒気を撒き散らしていたのにも関わらず今ではすっかり怯え気味だ。何だこの反応


「それで、どこで食べる?」

「ここでいいんじゃないかしら?那美はどう?」

「私もここで良いかな」

朝方謝罪した時に感じた怯えのようなものを今の彼女からは微塵も感じなかった

なにか心境の変化でもあったのだろうか


その後ふたりは何故か俺を挟んでふたりで座った

ディルとフィークスが居なくなったからそのまま座ったのだろうが

「これは両手に華と言うやつでは?」

「はあ?」「え・・・?」

別にふざけた訳では無いのだが

2人とも女性なのだから状況的には間違ってないと思うのだが、コレはそういう事を言う状況では無いらしい

「はいとりあえずこれどうぞ」

「ありがとう」

渡されたのは高そうな風呂敷に包まれた弁当箱だ

先程の発言については一切の言及はない


「ところで弁当を頂く前に2人の名前を教えてもらってもいいだろうか」

俺は全体の自己紹介をしていたがこのふたりの名前はまだ知らない名前くらいは知っておきたいと思った

「私は水門 深於好きに呼びなさい」

「門音 那美です」

「深於さんと那美さんね覚えたありがとう教えてくれて」

2人とも七門(ななかど)という大和の名家出身なのか魔力密度の高さも他と比べて高いのもの説明がつく

「それで?さっき2人が話してた説明って?」

「俺の目についてなんだけど──」

弁当を開けつつ俺の持つ魔眼に着いて説明をした

内容的にはディルとフィークスにしたものと同じ

『色別の魔眼』と言って魔力を色で認識できる物で対象は人間のみ魔力の量や質に応じて色の濃さや範囲が変わる。

呪われている人には黒いモヤの様なものが見える事、那美さんの場合それが大きすぎて人の形として認識出来ないこと。決して容姿を貶した訳では無いこと

そして改めて謝罪をした

発言については昔からの仲間に呪われている人にはブサイクって言うんだよと教わった事などを話した


「それについてアンタは何も思わなかったの?」

「まぁ、仲間の中では最も呪いに詳しいやつだったから」

「その人特有の言い方なのかな」

弁当を食べ進めながら話を続ける

しかし何故あんなにも怯えるような態度だったのだろうか?弁当の話を聞いてから深於さんの魔力の揺らぎが尋常じゃない

弁当の内容物を観ても見た目は学生が作ったとは思えぬほど綺麗に整っていた。味の方は少し不思議な味がするものの食えない感じではなかった


「・・・あの、神至くんそれ食べててなんともないんだね」

「本当にね、アンタ体に不調とか出ないの?」

「どういう事だ?見た目は良いけど味がなんか不思議な事か?」

俺の発言に2人がキョトンとした雰囲気を出した

毒でも入ってるんかこれ。まぁ何食っても問題ないけど


「私料理する時に、機嫌が悪いと一口で人を昏倒させるような劇物が出来るの」

「なるほど?」

昨日の機嫌が悪い状態で作ったのがこの弁当というわけか凄いもん食わせるな

神名(しんめい)由来の特殊な能力ね『黄泉竈食(ヨモツヘグイ)』って言うんだけど」

「そーなのか、特に影響ないぞ」

神名とは10歳になるとほぼ全ての人に与えられる神話系の名前の事。所謂神様の名前が授けられるって感じだ。他にも英雄とか魔物とか色々あるけどそれを聞くのは基本的にはご法度だ

その時に予言なるものも授けられるらしいが俺はそもそも神名など持っていないから知らない


それから少しの間特に会話もなく食べ終えてしまった


2人から信じられない物を見るような目で見られていた事には気が付くことはなかった

「ご馳走様」

「本当に食べ切るなんてアンタ何者?」

「少し前まで冒険者(チャレンジャー)やってただけのただの編入生だよ」

冒険者と言われた事に少し驚いたのか少し違った形で魔力が揺らいだ

これは誰にも説明していないが魔力の揺らぎで感情をある程度読み取ることもできる。そこまでできる奴は聞いた事が無いから俺だけかもしれないが


「あの、説明の時にあったけど、どうして魔眼を展開したままなの?普通は一時的に使うだけでもかなりの負荷がかかるって聞くけど」

「あぁ、それはジジイとの契約だよ。編入する代わりに学生の中に呪われてる奴がいるから誰か1人解呪するまで魔眼展開したままにしろって言われてる」

反故にしようにも魔法契約も結んでるしね〜と続ける

「そうなんだ、あの・・・もし可能であれば私の呪いを解いて欲しいの」

少し間があったのは頼んで良いものか悩んでの事だろう。ある程度打ち解ける事が出来たとは思うが彼女が何を考えているかは分からない。呪いの揺らぎのせいで上手く感情が読み取れないから


「それはもちろん、罪滅ぼしって訳じゃないけどそれくらいはさせて欲しい」

「うん、お願いするね」

「本当に解呪なんて出来るの?」

「多分できると思う、ここまで酷い呪いは一度しか見た事ないけどある程度の当たりは付けられるからね。人生そのものを縛るような、死なずに苦しませる様な呪いだと思う。だから掛けた相手か楔として存在してる物をぶっ壊せば何とかなると思う」

その気になればそれ以外の方法でも解呪出来るがそっちはなるべく使わないようにしてる


「じゃあ、これから実技あるしその時試してみようか」

「でも呪いを掛けた相手なんて心当たりないよ?」


それもそうだ。分かるように呪いをかけるなんて三流も良いとこだ。でも名前を聞いて予想がついた

過去に一度解呪した事もある


「近くに那美を呪った相手がいるって事?」

「そういう事、実技の時に会えるんじゃないかな今日は学年全体で合同だし」

「誰がそんな事・・・」

「心当たりあるんじゃないかな」

少し目をこらすと呪いの揺らぎから糸の様な物が伸びているのが見える、繋がりが見えると言うことはそれなりに近くに呪った相手がいるって事だ。

呪った側はおそらく自覚もないだろう、だから気づかない呪われている側も自覚がない

と言うことは家同士の契約とか他人を媒介に呪いを掛けていることが想像できる

()()()()()か難儀なもんだね門音の家も


「もしかしてアレじゃないの?」

「でも陽君はそんな感じないよ?」

2人の中では思い当たる人物がいるようだ

こちらも予想は付いている。呪いを掛けたのは陽門(はるかど)の人間だろう

家同士の政略結婚で相手を縛るやり方だ


呪いの種類は束縛系。呪いの名前は婚縛の呪い

正式な婚姻までの期間相手を許嫁として縛る呪い

普通の許嫁とは違い魔術的に異性との交友関係を縛り相手の見た目すらも変える

俺には見えていないがそれなりに見すぼらしい見た目にされているのだろう

他者が忌避するようなそんな呪いだ。

ここまで深い呪いとなれば、異性どころか同性であっても忌避する者もいるだろう

それでもなお隣にいる深於さんは余程仲の良い友達である事も想像が付く

思えばディルとフィークスの2人が早々に立ち去ったのもコレの影響があったのかもしれない

俺が特に忌避感を覚えないのは呪いが直接見えている事とそもそも魔法を無効化する事ができるからだろう

呪いは闇魔法に分類される比較的簡単な物。周囲へ影響する程度の物なら意識しなくても無効化できる


呪いを掛けた相手について話している2人に一言断りを入れ一足先にその場をはなれて更衣室に向かう。願わくばこんな呪いは二度と見たくない呪われた対象も周りも不幸にするそんなのはまっぴらごめんだ

そのためにも俺は俺に出来る範囲の事をしようと心に決めた


那美に対して思った少しばかりの懐かしさには気付くことはなく

けれど確かに湧いて出た決心を胸に俺は見慣れぬ校舎で迷子になった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ