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試験と蹂躙の第一グループ

デートから数日経ち試験の日となった

今日は午前中の通常の授業はなく1日実技棟で対戦クラス毎に試合が行われる

今は試合前で各クラス毎にウォーミングアップ中だ


グループの仕上がりもいい感じだろう

俺たち第一グループは個々の実力の高さを活かし各個撃破する作戦

第二グループはクルトやウェルズさんを中心に広範囲の殲滅を得意とするメンバーを軸に打ち漏らした相手を他の3人で叩く作戦だ

第三グループは月夜野さんが作戦指示を出しながら迦倉さんの射線を作る作戦を立てている

・・・迦倉さんの武器変わったから惨状になりそうで今から第三グループの試合が少し怖く感じる


「神至、ちょっといいか?」

「なんかあったのか?」

軽く体を解していたところに少し不機嫌そうなアンリに呼び止められる

「Bクラスからの要求が届いた。この内容にEクラス全員が従う事らしいぞ」

アンリが持っていた端末を受け取り内容を確認する


その内容は以下の通りだ

1、Eクラスは敗北した場合全員がこの要求を絶対遵守するものとする

2、毎朝誰よりも早く登校しBクラスの教室の清掃を行なう事

3、Eクラスの人員は担任のアンリも含めBクラスの要求全てに応じる事

4、月末の試験に置いて肉盾となりBクラスの役に立つ事

とまぁ他にもあるがこれはなんとも───


「直接的な表現がないだけでほぼ奴隷契約だな」

「そうだな」

端末を握る手に力が入る


「コレ他のみんなには」

「まだ見せてない」

「じゃあ各グループのリーダーに伝えてくれ、そこからみんなにも教えるようにしよう」

「あぁそのつもりだ」

「こっちからの要求は?」

「もう渡してある、アレで良かったんだな?」

「助かる」


こっちからの要求も複数をまとめて1つの要求としてまとめてある、本来ならクラスみんなで決めることなんだけど今回はアンリと2人で勝手に決めさせてもらった


実際これがまかり通るなら実質要求は一つだけとか言うルールはあってないような物だ

ジジイは容認してるようだから俺から言う事は無いが、少し頭の回るクラスならこの程度の事普通にやってくるだろう


「しかしいいのか?例の3人と黒井の4人を学園から排除するだけで」

「大丈夫だろ後のことはゲンコツババアなり、暗部のみんなに任せてあるし」

「お前がそう言うなら大丈夫なんだろうが」

何か気になる事でもあるのか納得しきってはいない様子。ひとまず学園から消えてもらえば後のことはどうとでもなる、それ程気にしていても仕方ないだろう


ひとまずアンリと分かれ第一グループのメンバーと合流し先程の要求の内容を伝える

「随分な要求だな」

「かなり酷いこと書いてあるプゴ」

「私たち七門にも同じこと要求するつもりなのねアイツら」

「負けられないね」

要求を確認してみんなのやる気がより高まったように感じるその調子なら負ける事はまずないだろう


「もうすぐ試合だ、気張っていくぞ」

「おう」

「プゴ!」

「任せなさい」

「うん!」


これは余談だが休み明けにクラスのみんなと話して俺は矯正された口調を辞めることにした

ディルとフィークス、深於さんだけだとなんか変な感じだったのとみんなこっちの方がしっくりくるとの事だった。女性に対するさん付けだけは辞められなかったので随分と突っ込まれてしまった

コレばかりはどうにもならないのだ




ノーデンス智識学園月末試験

1試合目


各クラスの第一グループがそれぞれの対戦クラスと向き合っている

実技棟は学年毎に分かれている。そのため今回は観客席にいるのは、手の空いている教官と用務員の人たちと試合に出ないグループの生徒がいる。あとはどこからか湧いて出た冒険者や貴族の集まりだけだ


外部の人間までいるなんてこの試験、月一のお祭りみたいなものなんだろうな


「やあ神至くん、要求は見たかな」

「ん?あぁ目は通したぞ」

「君のせいであんな要求になったんだ、少しは責任を感じたらどうだい?」

嘘だな例え俺が負けることを選んでもあの要求を出して来ただろうに


「ほざけ、どの道出してきただろうが」

「さぁ?どうかなぁ?そもそも──」

聞き流しながらBクラス第一グループの面々を見る

通常の武器に加え全員が鎧などの防具を装備している

装備も自由なのか次回からはこちらもちゃんと用意しないとかな


こちらはいつも運動着に各々が少し防具をつけているだけ、かっちりと着込んでいる者は誰もいなかった

「おいおい無視とはいただけないね」

うるさいなコイツ

さっきから俺に声をかけてきているのはこの間絡んできたやつのひとりだ

名前は・・・忘れたから失禁気絶1号とでもしておこう


「今回キミ基本属性の魔法も禁じられているんだろう?なら僕たちにも勝機はあるね」

「考えが浅いなそのくらい制限しないと戦いにならないとも言えるぞ?」

「チッ減らず口を。でも良かったじゃないか魔法が使えなかったから負けましたって言い訳ができて」

その言葉を聞いてこちらのグループのみんなが笑う


「何がおかしい!」

「いや、神至の言う通りだと思ってな」

「プゴォあの時の試合見てたら魔法なくても余裕なのは誰が見ても分かるプゴ」

「ヒトモドキ風情が!」

「あら私たちがいること忘れないで欲しいわね」

「私たちの友達に酷いこと言うのはやめて欲しいな」

「クソが目に物見せてやる」

悪態を着きながら失禁気絶1号は自分のグループの方に戻って行った


「なんだったのかしらアレ?」

「酷いこと言うよね」

「さぁ?無駄に絡んで煽ってきただけなんじゃね?」

「あいつらこそ全身武装状態で負けたら言い訳できないのにな」

「試験にあそこまでの装備はいらないプゴ」

作戦会議・・・ではなくEクラスの愚痴大会をしている間に試合開始時間になってしまった


「各員位置につけ」

試合エリアにの大きさは50×50メートルくらいの正方形で遮蔽物がないまっさらなステージだ

今回は前衛4人後衛1人の布陣で開始する

向こうはV字型の陣形で失禁気絶1号は1番後ろにいた

あれだけ煽っておいて自分は後ろで腕組かよ


審判を担当してくれるのは社会学のアルケー教官だ、一応公平性を期すために担任以外が審判をする事になっている

アルケー教官は公平で等しく誰にでも冷たい性格で黒井とは真逆の人だ、元軍人らしく体格もかなり良い少し手合わせ願いたいくらいだ


「試合開始前にルールの確認だ。Eクラス神至は武器は学園支給の木剣を使用すること、次に基本属性の魔法使用を禁ずる異論は無いな」

「はい問題ありません」

「ならばよし、次は全体でのルールだ。ダメージ軽減の結界を張ったこのステージで戦い。相手を場外に叩き出すか気絶させる、あるいは参ったと言わせ全員を倒したチームの勝利とするいいな?」


『はい!』

全員が一斉に返事をする

それを聞き満足そうに頷いた後言葉を発する

「ではこれよりBクラス対Eクラス第一グループの試合を開始する。各員全霊を持って試合に当たれ」


構えを取り攻撃を準備する者

腕を組み余裕をひけらかす者

いつも通りの落ち着いた雰囲気の者

試合に臨む者を応援する人々

そのそれぞれが試合開始の合図を待つ


実技棟全体が静まり返った瞬間


「はじめ!」

各ステージ一斉に号令が掛かる


最初に動き出したのは深於さんとフィークスだった

ウォーターボールを展開しながら走る深於さん

続けて後ろからフィークスが後を追うように盾を前に構えながら走る

今回は槍を使う気は無さそうだな


向こうも動き出したな

2人が走り出したのを見て慌てたように2人が迂回しながらこちらに向かってくる

他の2人が深於さんとフィークスに向かって突っ込んでいく

失禁気絶1号は腕を組んだまま余裕そうな表情でこちらを見ている


「ディル、那美さん回ってきた2人を頼む」

「了解」

「任せて!」

指示を聞いてディルが駆け出す、那美さんは弓を番えて矢を放つダークボールも展開して追撃体制もバッチリだ


先に飛び出た深於さんはもう接敵して殴打を始めている・・・あっちには目を向けないようにしよう。うん


俺もそろそろ動くか

すこし伸びをして体をリラックスさせる

───よし


学園支給の木剣を逆手に持ち替え失禁気絶1号に向け投げつける

武器を捨てると思わなかったのか、それともこの距離で届くと思わなかったのか飛んできた木剣に驚き腰を抜かしていた

から振った木剣はそのまま壁まで飛んでいき轟音と共に突き刺さる


「────!───!」

青い顔をして何か叫んでいるようだがこの距離だと周りの歓声もあって若干聞き取れないな

さて基本属性は禁じられたけど概念属性の使用までは禁じられてないからな

俺の得意で行かせてもらおう


重力操作魔法『タクト』

任意の場所の重力を操作する魔法

正式な名称では無いがタクトという名前を付けた理由はある


右手を伸ばし人差し指を1号に向けそしてそのまま人差し指をクイッと上に向ける

するとどうだろう1号が打ち上げられたホームランボールの様な速さで上空に()()()


その光景に全員の足が一瞬止まり視線が上空に集まる


「────!」

1号は叫びながら上空でジタバタしている

Eクラスのメンバーは誰がやったのかすぐにわかったのだろう一瞬だけこちらを見たとおもうと直ぐに目の前の相手に向き直り攻撃を再開する


事前に言ってなかったけどいい判断だね


そこそこの高さまで落としたあとその場に留める

1度手を開き握りしめる動きをした後に伸ばしていた腕を思い切り引きつけ1号をこちらに向かって落とす


「───あぁぁぁ!」

情けない声を上げながらこちらに落ちてきた1号の顔面に向かって拳を振り抜く

兜ごと顔面に思い切り拳がめり込みそのまま地面に向かって叩きつける


金属のひしゃげる音を隠すように爆音と共に地面が割れる

「この程度か?」


装備の性能がそれなりに高いのだろう、まだ気絶はしていないようだ、まぁ顔は歪んだけども


少し後ろに下がり様子を見る

しばらくの間地面にめり込んでいたが産まれたての子鹿の様に震えながら立ち上がる

その震えは怒りかはたまた恐怖からなのかは俺には分からないがこちらを見る目に光はまだある

「来いよ、目に物見せるんだろ?」

「ギザまぁ!じんばん(審判)いびぼがぼ(いいのかよ)まぼうづがっだど(魔法使ったぞ)


随分と喋りにくそうだな

兜がひしゃげて上手く言葉が発せないのだろう

それでも何となく言っていることは分かる

アルケー教官も確認の為かこちらに近づいてきて質問をしてくる


「神至、今のは風属性の魔法か?」

「いいえ概念属性の重力魔法です、試してみますか?」

「いや大丈夫だ禁止されているのは基本属性の魔法だけだからな続けろ」

アルケー教官はそれだけ言うと場外まで戻って行った


「ひぁ?」

「大丈夫だってさそれで?来ないのか?」

「プザケルナ、ごどじでやる!」

背中に担いでいた両手剣を抜きこちらに向けてくる

ディルの大剣程の大きさはない人の足ほどの長さと木剣2本分くらいの幅で少し大きめの剣と言ったところだ


「上等だ受けて立つ」

左半身を前に拳を構え迎え撃つ体制を整える

まだ終わらせはしない陽門の時と違って今回は徹底的に潰すつもりだ簡単に終われると思うなよ


───


他のメンバーの方も順調に戦いを進めている


深於は先行して攻撃に出ているにも関わらず息を切らす様子はなく、鬼神の如き勢いで相手に連打を叩き込み続けておよそメリケンサックと盾がぶつかっているとは思えない程恐ろしい音が鳴り響いている

「ほらさっさとやり返して見せなさい!」

「うぅ・・・」


その華奢な体のどこにそんな力があるのかと問いたくなるほどの高速の連打。タンクとして盾を構えていたはずの獣人の子もその打撃の速さに攻撃に転じる事ができていなかった

あるいは人間に対する恐怖からなのかそれは本人にしか知る由はない


「あんたなんで攻撃して来ないのよ」

拳の雨を1度止め少し不思議そうに声をかける深於

その声色は責めているのではなく純粋に不思議に思っての事だった


「だって君は人間でしかも水門の人で、怖くって」

「はぁ?馬鹿じゃないの?そんなの関係ないわよ試験は試験だし、学内では全員が平等よ。まぁ変な奴もいるけども」

先程の見た事もない魔法を使った男に対する感想であろう少し呆れ混じりに話す


「でも僕たち亜人種は奴隷なんだってクラスの人たちが・・・」

「あんたも色々ありそうね」

怯えの混ざった視線と声色で話す獣人の男の子に深於は少し頭を捻る


「あのどうして攻撃してこないの?」

「だってあんた防御しかしてこないじゃない、無抵抗で防戦一方の相手に拳を叩き込むほど私は鬼じゃないわよ」

「でもさっきまでは鬼神みたいな───」

「何か言ったかしら?」

「いえ、なんでもありません!」


笑っているはずなのに目が笑っていない上に背後に鬼が見える、これ以上言ったら殺られる。そう思えるほどに怒りが具現化して見えた

「やる気がないなら棄権なさい」

「でも・・・」

「まだやるなら相手するわよ?」

固く握りしめた拳とその手に光るメリケンサックを顔の高さまで上げて見せる

その立ち振る舞いに勝てないと判断したのか両手から盾と剣が落ちる


「参りました」

「よろしい、他が終わるまでBクラスのこと教えなさい」

「ほかの人の応援に向かわなくていいの?」

「大丈夫よ、あんたらBクラスに負ける程ヤワじゃないもの」




深於の後追いで続いたフィークスは自身の体格と高重量の大盾を用いて相手を押さえ込みながらジリジリと場外に迫っている

「クソ!豚の癖にこの!この!」

相手は人間。魔族であるフィークスに膂力でかなうはずもなくその突進を正面から受けた事で武器が砕かれ素手で大盾を叩いていた。魔法を使い距離を取れば良いはずなのにそんな余裕は微塵も無い様子

「その程度の攻撃でこの盾は壊せないプゴ!」


相手の攻撃が意味をなさないのを完全に理解したフィークス。場外までの残り10メートル程の距離まで相手を追い詰めると構えていた大盾を足を使い下からすくい上げるように跳ね上げ、人ひとりを容易に打ち上げた

「これでお終いプゴ!」


1メートルほど浮いた相手が落下を始めるよりも早くその場で回転し、勢いを利用したシールドバッシュで相手を場外まで弾き飛ばす

蹴り上げられたサッカーボールの様に弧を描きながら人が宙を舞う


「コレのどこがEクラスなんだよ・・・」

その呟きは誰にも届くことは無く男とともに為す術なく場外の地面に向かって落下して行った




「避けてばっかじゃ勝てねぇぞ!オラァ!」

およそ大剣を振るっているとは思えない速さで動き回るディル

獣人の力を十全に活かし魔力にて身体能力を底上げしているからこその芸当だ

まだ剣と魔法の同時使用は出来ないものの自身を魔力で強化することは完全にできるまで成長していた


相手は短剣で間合いに入ろうにもデタラメな動きで近づくことも出来ていない。故に避けることに心血を注いでいる

しかし下手に距離を取りすぎると魔法で風の槍を飛ばしてくる始末

同じ獣人で女性にも関わらず手心など一切ない


しかしディルも一応は配慮している先程から振るっている大剣は全て刃の無い面でばかりの攻撃だ

そんな事し続けたら以下に業物の武器とは言え壊れてしまうだろう、傷つけないように体力を奪いつつ最後は場外に投げるつもりなのは対戦相手に伝わることは無い


「あなた少しは手心ってものないのかしら?」

「無いなそんなもん、俺はお前らを格上として見てるだからそんな相手に手ぇ抜いてる余裕なんかない!」


言い終わると同時に大剣を振り下ろし地面を砕く

どんどん周囲が崩れて足場が悪くなっているというのに当の本人は一切気にした様子をみせない

割れた地面から飛ぶように両者とも距離を取る


お互いの距離が大きく離れたことで魔法の撃ち合いに戦闘が移行する

「「ウインドランス!」」


お互いが同時に詠唱し魔法同士がぶつかり合う

ディルの方が少し弱かったのだろう対消滅したあと残った風がディルを襲う


破壊した周囲の地面が砂の礫の様になった事で大剣を使いそれらを防ぐ

「とった!」

コレを好機と見たのか身体能力に風の魔法を合わせ常人離れした速さでディルに近づき飛び上がった


しかし


「それは悪手だな」


彼女が近づこうとした時点で砂の礫など一切気にせず、防御体勢を解いて切り上げるように構えていた。飛び上がり短剣を突き立てる形をとった相手に向け大剣を振るい剣の腹を思い切り叩きつける


「カハッ」

ミシミシと小さく音が鳴るのを気にもとめず場外の方に向かい大剣を振り抜く

結界の効果で精神力が尽きて気絶したのだろう

弾き飛ばされた彼女は場外までは届かなかったものの落下したその地点から動く事はなかった


「悪いな負ける訳にはいかないんだわ」




残る那美も一方的な試合展開となっていた

『ダークバインド』

闇属性の拘束魔法だ、闇色のチェーンで全身を縛り上げ動けなくなった所に黙々と矢を射続けている


「クソっ、動けない!卑怯だと思わないのか!」

鎧を装備しているはずなのにその接合部の隙間を的確に狙う射撃能力は圧倒的と言う他ない


相手の精神力を限界まで削るつもりなのだろうかただの一言も発さずに攻撃の手を止めない

展開しているダークボールも揺らぐこと無く空中待機したままだ


魔法を撃ち込まないのは相手を追い詰める為か、はたまたその気が無いのか。定かではないものの精神的にかなりのダメージを相手に植え付ける事だろう


もう既に無数の矢が体に刺さり相当のダメージが入っているはずなのに案山子となった相手も折れる気は無いようだ


「ふぅ」

矢を放つこと数分、矢筒から矢が無くなったことで那美の手が止まる

これ以上は弓による攻撃が出来ないからだ


「1つ聞いてもいいかな?」

ここに来て初めて相手に向かって声をかける


「なんだよ早くこの拘束を解きやがれ」

ジタバタと拘束された状態でもがくのだが、やはりその拘束は崩せない。Bクラスともあろうものが魔法を使おうとしないのだ。或いは拘束された状態では魔法を使う事すら叶わないのかもしれないが


「降参する気はあるかな?」

「無いな!もう矢がないんだろ?ならこの拘束を解いたら嬲り倒してやる!」

口だけ、威勢だけはいいがその拘束すら自力で解除できない相手に少し冷たい目を向ける那美


「そう、トラウマになったらごめんね」

そう呟くように言い終わると同時に天高く手をかざし無数のダークボールを展開する

その数20発、クラスの中で力人を除きいち早く無詠唱を習得した那美。まだ一度に展開できる魔法の数は力人に及ばない物の拘束された相手に対しては十分過ぎると言える


「コレでも神至くんの半分にも届かないかぁ、やっぱり凄いなぁ」

「まて、待て待て待て!なんだよそれどうなってんだよ!」

「ごめんね降参しないならこうするしか無いの。でも私たちが受けた数より少ないから許してね」


笑顔で謝罪しかざしていた手を拘束された男に向ける

展開されていたダークボールが全て同時に射出された


結果は言うまでも無いだろう

その全てを一身に受けた男は全身の防具まで破壊され尽くした上で拘束されたまま気絶していた


完全に意識を失ったのを確認した後、拘束を解き男に向き直る事もなく那美はその場を後にした




───



「ぐぞぉ!なぜだなぜあだらない!」

力人の方は余裕の表情で他のメンバーの様子を見つつ相手からの攻撃を避け続けていた


遊んでるうちにみんな先に倒しちゃったな

危なげなく自分にに向かってくる攻撃を避けながらそんな事を考えつつ、なんの強化もしていない拳だけで反撃をする


鎧の上から鳩尾に響く一撃が入り、1号が悶絶する


「ぐぉぉぉ!」

「そろそろ降参しないか?」

「誰がぼまえなんがに!」


潰すと決めたからには徹底して相手を折る

だがあまり悠長にしていると他のみんなを待たせてしまう・・・そろそろ終わりにするか


距離を取り相手の出方を伺う

「コレで終わりにじでやる!」

両手剣を高く掲げ火属性の魔法を纏わせる

どっかで見た光景だなぁ、アレは光属性だった気がするが


「いくらぼまえでもこれを喰らえばびどだまりもない!」

それはそうだと言っても素直に食らうわけが無いだろうが

相手が攻撃するよりも早くもう一度『タクト』を使い引き寄せる動作する


「ははっ何もおぎないな!ぐらぇぇぇ!」

俺の魔法が空振ったと思ったのだろう、嬉々としてこちらに向け走り出す1号


俺が先程『タクト』を掛けたのは木剣の方だ

壁に突き刺さっていた木剣が周囲の破片がこちらに向けて落ちる始めるのと同時にメリメリと音を立てながら抜け始め、そして───


「おでのがぢだぁぁぁ」

力人の眼前に迫った1号は勝利を確信し叫び、にやけながら突き抜ける様な暴風と共に両手剣を振り下ろす。振り下ろしたはずだった


しかし目の前には平然と片手を上げ立ったままの憎たらしい男がいた

「なでだ!なでぼまえはだっている」

「何故ってそりゃあお前が俺を切れなかったからだろう」


そんなはずはないと自分が振り下ろしたはずの剣を見る。そこにはあるはずの刃はなくただ自分が握っている柄しか残っていなかった

「ばがな!どうじで!」

視線を上げ相手を見るとそこには試合開始の時に投げたはずの木剣が握られている


「────」

「こういう事だ」

その一言を最後に腕が消えたと思うより早くこの男は意識を失った




「Bクラス対Eクラス。第一グループ勝者、Eクラス!」

俺が最後の1人を気絶させたことで試合は終了した

周囲の観客席。特にEクラスからの歓声が一際目立って聞こえる、逆にBクラスからブーイングが飛んでくるが、やはりコレは今までにない感覚で心地が良い


もう少し時間をかけて心を折りたかったが思ったよりも全員が苦戦する事なく勝ち切った事でそれは叶わなかった


ステージから降りて第一グループ皆でハイタッチをする

「第一グループ勝利!」

「やったな!俺たちの勝ちだ!」

「余裕だったプゴね」

「私達分散した方が良かったんじゃないかしら」

「まずは一勝だね」


「みんなお疲れ、どうだった?」

一応手応え位はあったと思うが実際に対戦してみての感想を聞いてみる


「ずっと神至が相手だったせいか大したことなかったな」

「ゴーレムの方が強かったプゴ」

「私は張り合い無かったわね」

「教えてもらった拘束してからの攻撃上手く決まったよ」


まぁ様子は見ていたから分かってはいたがあまり手応えを感じなかったようだ。今度の実技はもっとキツめにしていこうか


「悪い顔してるわよ神至」

「してるプゴ」

「また地獄みたいな訓練考えてないだろうな」

「あはは、みんな酷いよ神至くんだってそんな事考えてないよね」


那美さんの言葉に視線を逸らしつつ答える

「・・・カンガエテナイヨ」

「神至くん!?」

「嘘つけ考えてんじゃねぇか!」

「プゴォ!目を逸らなさないで欲しいプゴ」


2人につつかれながら観客席の方に移動を開始する

とりあえずは一勝だ、あと一勝で俺たちのクラスの勝ちは決まる。残りのみんなもこれまで頑張ってきたんだ結果もおのずと着いてくるだろう



客席に移動するまでの間それぞれの試合運びや様子を話し合っていると道を塞ぐように立っている集団がいた


「なんか用か?」

「今回も卑怯な手で勝ったのかい神至 力人」

現れたのはSクラスの七門の5人だ


「まだ顔面治ってなかったのかお前」

「お前のせいだろうが!」

言葉通り俺が以前なぐった顔はあのときよりはマシになったがまだパンパンに腫れている

イケメンが台無しだなぁ


「別に回復阻害なんてしてないぞ」

「だったらどうして僕がこんな顔のままなんだ!」

「知らねぇよ」

「チッ、まぁいい今用があるのはお前じゃない。那美、君のほうさ」


名指しされた事で那美さんが深於さんの後ろに隠れる

「なんの用なの那岐」

「深於には用はないんだけど。まぁいいさ噂通り綺麗になったんだね那美」

「うん、神至くんのおかげでね」

その言葉に陽門のやつの眉が少しピクリと動く

怒ってるな


「こんな奴なんでどうでもいいんだよ。那美、君がまた僕の婚約者になる事を許してあげるよ」

何言ってんだ?コイツ

俺が少し文句を言おうと前に出るよりも早く、ディルが出ていた

「お前自分がなに言ってんのか分かってんのか!」


事情は全て那美さんが話してくれている

試合前に俺たちに向かってなんて言ったのかも全てだ、それを知っているからの怒りだ

ディルは本当に優しい男だな

「獣風情がイキがるなよ、僕は那美と話してるんだ少し黙れ」


その言葉を聞いて5人の中でも一際体格のいい男がディルの前に立つ

背丈はほぼ同じ、見た目だけならあちらの方が大きく見えるくらいだ

「悪いな邪魔してやらんでくれ、ディル・フェリン」

「あんた・・・」

お互い少し話した後に黙って睨み合っている

いや、少し違うな。威圧じゃない力量を推し量ってるだけだな・・・少し不安だけどあっちはあのままでいいか


「あぁ、すまないね那美、それで返事は?」

「えっいや、その・・・」


那美さんを俺に預け今度は深於さんが前に出る

「あんたなんかに興味ないってさ、そもそも自分のことをコケにした男の所に戻る女がいるわけないじゃないあ」

「深於、黙りさないよ那岐くんは那美に話しかけてるんだから」

「あら?AAAの声なんて小さすぎてよく聞こえないわね」

「なんですって?燃やし尽くすわよ連打ゴリラ!」


「話が進まないにも程があるだろ、2人とも一旦落ち着いて戻りなさい」

「わかった・・・」

「あら?女の喧嘩に口を挟むの?神至、殴るわよ?」

ディルは少し名残惜しそうに、しかし大人しくこちらに戻ってきた

深於さんは俺に対して攻撃的すぎるだろ


「そろそろ次の試合が始まるからやめろって言っただけだ。応援、するんだろ?こんな生産性もクソもない話してる時間ないんだよ」

「それも確かにそうだ、それで那美返事がまだだと思うんだけど」


「てめぇもしつけぇな」

近くにいた那美さんを抱き寄せ、陽門に見せつけるように振る舞う


「かっ、かかか、神至くん!?」

「お前それ、何のつもりだ」

明らかに機嫌が悪くなりやつの魔力が少し漏れ出る


「何のつもりだ、だと?那美は俺がお前に勝って正式に貰い受けた女性だ。今更返せと言われて返すバカがどこにいる」

「那美お前はコイツの方がいいなんて言うのか、どこの馬の骨とも知らない、こんな───」

「もう喋らないで「はぁ?」私は貴方との婚約なんて嫌!それだけ、もう近寄らないで」

怯えだろう抱き留めている身体から震えが伝わってくる。にしてもこんなにも真っ直ぐ否定するとは、那美さんやっぱり強くなったな


那美さんの言葉に対してだろうか対してわなわなと震えている陽門。コイツは一体何がしたいんだ?


「那美ぃ!お前は俺に口ごっ───!!」

陽門が喋りながらこちらに、いや正確には那美さんに向けて手を伸ばして来たので『タクト』を使い地面に叩き落とした


「行くぞみんな」

俺の言葉にみんな大人しく着いてくる

ほかの七門の連中も付き合いで来ただけで別にこちらの邪魔をするつもりはないらしい

1人を除いて


「待ちなさいよ!アンタこんな事してタダで済むと思ってんの!?」

先程深於さんと煽り合いをしていた子が声を荒らげて俺に絡んでくる

俺としてはそろそろ限界だから口を開かないで欲しいんだが──


「私たちがその気になれば!───っ!!」

「お前らがなに?」

ずっと抑えていた怒気と殺気を全てぶつける

周りにいるみんなには気取られないように、殺気を向ける相手には注意を払う


殺気を向けられた5人全員がその場に縛り付けられた様に動きが無くなり、青い顔をする

こっちは朝からずっとイラついているんだこれ以上怒らせないでくれ


「じゃあなもう絡んで来んな」

それだけ言ってその場を後にした




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